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2015年11月

半導体業界のネオン不足が継続

Linx Consulting マイク・コルベット、マーク・サースク、アンディ・トゥアン

 

半導体産業では、DUVリソグラフィーシステムの導入以降、ネオンを大量に使用しています。その使用は248nmで始まり、193nm(ドライおよび液浸)で拡大しました。そしてこのネオンの需給バランスが急激に崩れ、価格が高騰しているのです。多くのデバイスメーカーが、ウェーハファブの稼働を支えるための必要量を確保すべく、ネオンを争奪している状況です。中には、ネオンをスポット市場から調達し、それを精製混合して自社内で使用しているユーザーもいます。

この問題を解決するには、ネオンの生産能力が拡大するか、リサイクルの仕組みができるか、レーザーのネオン使用効率が高まることが必要で、それまで今後数年間は供給不足が継続すると見られています。供給不足の解消には、おそらく、上述の3つの要素全ての組み合わせが必要でしょうが、その結果、ネオン価格が下がるのが何時になるかは、見通しがつけられません。

このような状況はどのように発生し、どのようにすれば緩和できるのでしょうか?

 

背景

ネオンは半導体デバイスメーカーが使用するエキシマレーザーガスの主成分です。エキシマレーザーは、混合ガスを使用してレーザー光を発生させる装置で、最先端の半導体リソグラフィプロセスで広く利用されています。「エキシマ」とは、希ガス/ハロゲン化分子をさしています。使用する混合ガスによって4種類の波長を発生します。

  • ArF (193 nm)の成分: Argon, F2, Ne, Xe
  • F2 (157 nm) の成分: F2 with He, or F2 with Ne
  • KrF (248 nm) の成分: Krypton, F2, Ne
  • XeF (351 nm) の成分: Xenon, F2, Ne

 

最先端の半導体リソグラフィプロセスでは、KrF(248nm)とArF(193nm)のレーザー光だけが使用されます。安全性の確保、再現性の向上、レーザー性能の保障のために、混合済みのガスを使用することが、レーザー業界では標準となっています。
半導体リソグラフィは、世界のネオンの70%前後を消費します。Linx Consultingは、レーザーガスの使用量は、今後5年間、年平均17.2%の成長を続け、2倍以上になると予測しています。この主要因となるのが、次の図に示すように、マルチパターニングの増加です。

LINX-Consulting-Electronic-Specialty-Gas-Report-2015

出典: Linx Consulting, Electronic Specialty Gas Report, 2015

 

リソ用ガスの価格水準は、ネオンの不足によって、ここ数年で50%以上上昇しています。ネオン不足は深刻で、ネオンの増産がされるまでは、今後もさらなる価格の上昇が続くでしょう。複数のガス会社が、希ガスの生産能力拡大に設備投資をすることを決めたので、市場の状況は正常化するでしょうが、それまで少なくとも2年はかかる見込みです。

 

ネオン生産状況

希ガス(ネオン、キセノン、クリプトン)は、製鋼所や化学設備に設置された大規模な酸素プラントで、空気から抽出して生産するのが一般的です。大規模酸素プラントは規模からいっても希ガス回収の第一候補となりますが、どんな空気分離装置でも希ガスを回収できるわけではありません。酸素の生産の流れの中から希ガスを回収するカラムが備わっているのは限られたプラントだけなのです。 この希ガス回収能力は、多くの場合、二次的機能と考えられ、この抽出機能を追加する判断は、酸素プラントの資金調達と建設の時点でされたのです。

販売されているネオンのほとんどは、ロシアおよびウクライナの酸素プラントで生産されたものです。こうした大規模酸素プラントは、製鉄の集中化が普通だったソ連時代のものが大半です。このようなプラントは西側にはあまり見られません。ソビエトは、宇宙産業用途に必要な希ガスが西側からは入手できなかったため、その回収システムを酸素プラントに追加したのです。

同様の状況は中国にも存在します。国営の大規模製鋼所のいくつかで希ガスを生産しているのです。現在、こうした古い酸素プラントは、民営化がされるものもあり、閉鎖されたり希ガス回収能力のない新プラントに建て替えられたりするものもあります。希ガスの強い需要があるにもかかわらず新プラントに希ガス回収能力が投資されないのは、投資利益率が思わしくないためです。全体として予測されるのは、現状のプラントの希ガス生産能力が今後減少するということです。

さらに、ロシアとウクライナの政情不安が、希ガスのサプライチェーンを妨げとなり、需給バランスの不均衡に拍車をかけています。また、古い酸素プラントの閉鎖による影響は、クリプトンやキセノンに比べてネオンにとってより深刻です。ネオンは東欧地域がおよそ2/3を供給していますが、クリプトンやキセノンはそれが1/3にすぎないためです。今のところ、クリプトンとキセノンの供給はずっと安定しており、キセノン価格は2007-2008年の30ドル/リットルから2014年には11ドル/リットルへと下落しています。

 

ネオンの消費削減活動

ネオンの消費削減にむけた開発が進んでおり、最近では、露光装置/レーザー光源メーカーによるエキシマレーザーガスの使用最適化によって、ユーザーのガス消費量を節減が図られています。最適化はシステムのソフトウェアアップデートによって行われ、ネオン使用効率が最大40%向上します。さらに、ネオンの回収とリサイクルは技術的な課題が少なく、比較的容易であり、複数のサプライヤがその計画を提案しています。しかし、こうした計画には設備投資が必要となります。

上記の2つの消費節減活動の与える影響は慎重に調べなければなりません。なぜなら、これによって、ネオン生産拡大のための設備投資を、保留したりキャンセルしたりする結果となり、現在のネオン不足の悪化や延長を招きかねないからです。

 

今後の展望

希ガス市場は、過去10年間は非常に不安定でした。大規模酸素プラントに希ガス回収能力を追加するには何百万ドルもの投資が必要であり、最も投資効率がよいのは、最初の建設に実施することです。長期的な希ガス市場の見通しは、需要サイクルがほとんど解明できていないため不透明です。現在のネオン不足問題は、3~4年前、バルクネオンがずっと安価で、再投資による生産能力拡大の正当化が困難だったときに始まったのです。

希ガスの生産能力を大型空気分離装置に追加するには、少なくても2年かかります。これが、設計、設置、生産開始までに必要な期間です。また、年間3千万~5千万リットルの希ガスを生産にむけた工事のために、日産1千トンの酸素プラントを停止することは、論理的にも経済的にも困難といえます。この状況に輪をかけるのが、半導体メーカーとの希ガス供給の長期契約が存在しないという現実です。そのため、計画の投資リスクは、契約価格もないままガス会社に全て押し付けられることになります。

予想されるのは、ネオンの供給問題は1年から2年は続くということです。契約価格の決定、リサイクル、消費削減が状況を緩和するでしょうが、当面ユーザーは信頼できるサプライヤを確保するために注意深く計画をする必要があるでしょう。

Linx Consultingの経営陣は、SEMIのChemical and Gases Manufacturers Group(CGMG)に積極的に参加をしています。これは、半導体材料サプライチェーンのトレンドや課題を検討するSEMI会員のフォーラムです。

Linx Consultingは、電子材料のコンサルティング会社のリーダーとして、世界中の半導体やエレクトロニクス業界に、独自の情報を、薄膜プロセスと機能材料について提供しています。

(初出 SEMI Global Update 9月号)

 

日本でもCGMGの活動がスタート

SEMI CGMGの日本チャプターが今年活動を開始しました。次回の会合は、SEMICON Japanの会期中12月16日に予定されています。

活動内容や参加のお問い合わせは、SEMIジャパン スタンダード&EHS部(jstandards@semi.org)まで。

 


 

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