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2022-06-05

半導体不足改善に向けた装置用半導体供給確保の必要性

世界的な半導体の需給不均衡は、自動車や医療等のエッセンシャル分野を含むあらゆる業界に影響を及ぼしました。世界中の政府が、トータルで数千億ドルにのぼる断固とした刺激策を打ち出して半導体の生産能力を拡大し、サプライチェーンの強化と増加する需要への対応をはかっています。この半導体生産能力拡大策の実効性は、新しい半導体製造装置の製造と設置にかかっています。一言でいえば、半導体製造装置を増やせなければ、生産能力も増えないのです。

半導体不足により、ウェーハファブ装置など複雑な半導体製造装置の納期が長期化しています。装置メーカー各社の情報では、2020年には3~6カ月だった装置の納期が、2021年の第1四半期には平均10カ月となり、2021年7月には平均で14カ月まで伸びているのです。装置によっては納期が2年を超えているものもあります。

このホワイトペーパーの目的は、半導体製造装置の生産に必要な半導体デバイスの供給を確保することにより、半導体製造装置の納期は大幅に短縮され、半導体デバイスメーカーが計画通りに生産能力を拡大できるようなるという認識を高めることにあります。

 

半導体増産のあらゆる方策は半導体製造装置に依存

半導体製造装置の納期の長期化によって、半導体ファブに拡張の余地が十分にあっても生産能力の増強が阻まれ、その結果、半導体デバイスメーカーと、材料・装置のサプライヤーからパッケージやテストのサービスプロバイダーにいたるサプライチェーン全体による半導体不足軽減に向けた努力の足枷となる恐れがあります。SEMI World Fab Forecastの2021年末のレポートによると、2020年から2024年の間に新規ファブ計画および大型のファブ拡張計画が86存在します(図1参照)。これは、200mmファブの生産能力の20%増加、300mmファブの生産能力の44%増加に相当します。装置納期の長期化は生産能力の拡張計画の遅延につながり、半導体不足の長期化を招く可能性があります。
 

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図1:2020年~2024年に生産開始予定の新規300mmおよび200mm工場計画

 

半導体製造装置の生産は比較的少量の半導体デバイスに依存しており、これらは多くの場合、半導体製造装置メーカーとそのコンポーネントサプライヤーにより購入され組み込まれます。半導体製造装置メーカー各社の情報によると、装置メーカーならびにそのサプライヤーが使用する半導体デバイスは、半導体世界市場の1%にも満たない量です。しかしながら、半導体製造装置に使用される半導体デバイスは、増加する半導体需要に対応して生産能力を拡大するために欠かせないものであり、それゆえ、生産能力拡大と製造サプライチェーン強化に向けたあらゆる投資や政策の成否を左右します。半導体製造装置の生産を増やす上での火急の課題は、半導体デバイスの適切かつ遅延のない供給の確保です。半導体生産能力の増強を求める業界および政府の関係者には、半導体製造装置およびそのサプライヤーに対し、新規ファブに設置する装置に使用する半導体デバイスの供給を確保していただく必要があります。

 

半導体製造装置の乗数効果

重要なのは、半導体製造装置を生産するために必要な半導体デバイスはごく少量であっても、装置が生産する半導体デバイスは大量であり、SEMIによる半導体製造装置メーカーの調査によると、1000倍以上の乗数効果があるということです。半導体製造装置メーカーが必要とする半導体デバイスは製造する装置ごとに、FPGA、パワーデバイス、ADコンバーター、パワーアンプ、メモリーなど多岐にわたります。乗数効果はすべての装置に当てはまり、次のような例があげられます。 

  • FPGAテスト装置の生産には一般的に約80個のFPGAが必要です。しかし、1台のテスト装置は年間32万個のFPGAをテストしますので、その乗数効果は約4千倍となります。
  • プロセス装置の生産には約100個のFPGAが必要で、1台の装置は1時間あたり120枚以上のウェーハを処理します。ウェーハは製造工程の中で同じ装置によって複数回処理されますが、ほとんどの装置が年間に処理するデバイスの個数は200万個以上であり、その乗数効果は約2万倍です。
  • 光学検査装置の生産には約100個の高性能計算サーバーチップが必要です。その乗数効果は3万倍あるいはそれ以上です。
  • MCUテスト装置の生産には一般的に約100個のFPGAが必要ですが、各装置は年間1000万個近いMCUをテストすることができます。その乗数効果は約10万倍です。

米国商務省はMCUについて最も不足が著しい半導体デバイスであると言及しています(商務省ブログ)。MCUは自動車など多くの重要な産業で利用されています。MCUテスト装置の10万倍の乗数効果を例にとり、1台の自動車の製造に約100個のMCUが必要であると仮定すると、100個のFPGAを搭載するMCUテスト装置は10万台の自動車の製造に必要なMCUを生み出すことになります(図2参照)。
 

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図2:半導体製造装置の自動車業界への乗数効果の例(出典:SEMIの調査に基づく)

 

上述のMCUテスト装置の例は、半導体製造装置メーカーとそのサプライヤーに対する必要な半導体デバイスの供給確保の大きな乗数効果を示しています。生産能力の拡充を計画し目標とする半導体産業は、多くの半導体製造装置を必要とし、自動車などの川下産業は、半導体製造装置がもたらす半導体生産能力拡大に依存しています。何十億個もの半導体デバイスとそれを使用する川下の無数の製品は、元をたどれば半導体製造装置が使用する少量の半導体デバイスに依存しています。すべての半導体サプライチェーン関係者が、半導体製造装置用の半導体デバイスの適切な供給を確保する活動を支援することで、半導体の生産能力は拡充し、将来の需要に対応とサプライチェーン強化が進み、半導体不足の再発を防ぐことにつながるのです。

 

結論

半導体デバイスメーカーは、自動車や医療といったエッセンシャル産業に公平にデバイスを配分するという困難な問題に直面しています。しかし、半導体製造装置メーカーが直面する半導体不足への認識を高めることが必要です。半導体製造装置の製造に使用される半導体デバイスが少量であり、必要不可欠な半導体製造装置の優先順位をあげても、半導体デバイスメーカーは分配戦略を変更する必要がありませんから、半導体製造装置メーカー、半導体デバイスメーカー、川下の最終製品メーカー、そして最終的には消費者を含めた、全員の利益となるのです。

半導体製造装置がなければ、半導体ファブの生産能力を増やして、無数の川下産業の需要に対応することは不可能です。半導体製造装置への半導体デバイス供給の優先順位を上げる効果は計り知れません。これにより装置の納期が短縮し、半導体の生産能力を劇的に引き上げることが可能となり、半導体不足を緩和し、投資利益率も改善するからです。