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予見できないものへの期待
― FLEX Japan/MEMS & Sensor Forum Japan 2018から学んだ5つのこと

 

SEMI FHE/MEMS/Sensors担当マーケティングシニアディレクタ ハイジ・ホフマン 2018年5月22日

写真:FHE

台紙からはがして簡単に貼りつけられるのは、バンドエイドばかりではなくなりました。IoTとフレキシブル・ハイブリッド・エレクトロニクス(FHE)が、ハードウェアのビジネスモデルを確実に変えようとしています。フレキシブル・ディスプレイが、あらゆる表面に命を吹き込むことになるのです。

 

 

写真:FHE

 

これは、FLEX Japan/MEMS & Sensors Forum Japanで提示された、FHE、エレクトロニクス・テキスタイル、IoT、MEMS、センサー産業の未来を示す洞察のひとつです。4月に開催されたこのイベントはSEMI、FLEX Tech、MEMS & Sensors Industry Groupが主催し、200名を超える関係者が、プロセス、製品、アプリケーションの開発について、見解や知識を共有しました。講演や議論の中から、次の5つの学びがもたらされました。

 

1. FEHでは予見できないものに期待せよ

フレキシブル・ハイブリッド・エレクトロニクス(FHE)によって、製品の大きさと重量は減少を続け、新たな市場やコンセプトを誕生させています。NextFlexのウィルフリード・ベア氏は「FHEはプリンテッド・エレクトロニクス(PE)にICを組み合わせることで、PEの構造を超える性能を実現します。台紙からはがして貼りつけるエレクトロニクス製品は、FHEの能力によって実現した予見できなかった市場の一例です」と述べました。応用の可能性のひとつとして、大面積の安全センサーをビルの壁面に貼りつけ、構造上の危険をモニターし警告することが考えられます。

もうひとつ驚かされたのは、本来フレキシブル・ディスプレイとして開発された有機EL技術の新たな応用です。Cambridge Display Technology(CDT)は、バイオメディカルや農業モニタリング等の市場に向けて、革新的な医療診断ツールを考案しました。このツールは大気中で製造可能なOLED部品を、アルミ箔で封止したシンプルなOLED構造で使用します。

 

2. IoTとFEHは必ずやハードウェアのビジネスモデルを変える

製品を開発し、製造し、お客をみつけて販売する ― これがFHEの新製品の多くがたどる標準的なビジネスモデルです。Gemaltoのジャム・カーン氏は、FHEやIoTデバイスの開発者に、この順序をひっくり返してはどうかと呼びかけました。FHE製品の開発段階で、その製品が明らかにするデータの制御および採掘がもたらすアフターマーケットの収益構築を検討するのです。データハーベスティングの可能性という点で、IoTはこの戦略にとってベストなエマージングテクノロジーだと言えるでしょう。

「経験経済」では、一人の人に接続可能な200ものアイテムを創造可能で、これらはセンサーが生み出す大量のデータの収集と分析から得られる大きな収益の源泉となります。重要なのは、データがすぐに使用可能になっていることです。つまり、ハードウェアサプライヤは開発の重点を、ソフトウェアにまで広げなければなりません。VTTのハリ・コポラ氏は「カリフォルニア州の投資家が最近実施した調査によると、2025年までに世界のビジネスの収益の60%がデータから得られるようになります」と述べ、ハードウェア生産者に、ビジネスモデルを見直して、ソフトウェアを活用した継続的価値を生み出すようにすべきだと提言しました。「FHEによって、非デジタル産業にもデジタル化の道が開け、そのための完全なソリューションを必要とするようになったのです」と彼は語りました。

図1

ハードウェアプロバイダーのひとつの例が、Xenomaです。同社は筋肉の動きや心拍数などの生体データを計測するエレクトロニクス・シャツを販売しています。Xenomaの網盛一郎氏は、同社のオープンソース・ソフトウェア開発キットをひとつの条件で無償提供すると言います。開発者は収集されるデータをXenomaと共有するという条件です。より多くのデータを集めることができれば、それだけXenomaの長期的な人体ヘルスに対する能力を高め、重病の軽減にむけた長期的ビジョンを達成できるという発想です。

 

3. ロールtoロールとシートtoシートの製造技術はその中間で出会う

フレキシブル・エレクトロニクス、プリンテッド・エレクトロニクスの大きなアドバンテージは、エレクトロニクスが、ディスプレイやシリコンウェーハのように一度に1シートずつプロセスするのではなく、新聞のように、ロールtoロールのプロセスによって大気下(あるいはそれに近い環境)で製造可能になるという見込みです。しかし、インクとインターコネクトの開発と共に、ディスクリートおよび薄化したダイと移動するフレキシブル基板の位置合わせが進展すると、研究開発や試作は、実験や少量生産の材料コストが抑制できるシート式システムで大半が行われるようになりました。プリンテッド・エレクトロニクスの研究開発が、ロールtoロールのシンプルなプリンテッドコンポーネントと、シートtoシートのフレキシブル・ハイブリッド・エレクトロニクスの2つの陣営に分かれるようになったのです。それでも前進が止まることはありません。

VTTのハリ・コポラ氏は、フィンランドにあるVTTの試作ラインの新しいロールtoロール検査・テスト機能を強調しました。ロールtoロールプロセスは、生物学、化学、光学、オプトエレクトロニクス、先進的検査・テスト機能をひとつにして前進しますが、これはまさにFHEの学際的な性質を物語るものです。薄化したベアダイの正確で高速なピック&プレースがシートtoシート製造プロセスの領域ですが、精度とスピードの向上が求められます。

図2

もうひとつのビジネスモデルを転換する新しい製造コンセプトが、ミニマルファブです。少量生産にフォーカスした装置とプロセスのコンセプトで、クリーンルームは不要です。比較的低コストでの導入が可能で、このアプローチによってエレクトロニクスを手ごろな金額でどこでも生産できるようになります。

 

4. IoTの電源が大きな課題

エッジデバイスが他からの介入なしに長期間機能することが求められますが、ここで難題となるのが、どのようにデバイスに電力を供給するかという点です。住之江織物の杉野和義氏が発表したように、有機太陽電池をテキスタイルにして光からエネルギーを収穫するのも一つのソリューションでしょう。

アルバックのIoT電源に対する回答は、環境にやさしく、安全でフレキシブルかつ半導体プロセスで製造される厚さ0.1mm以下のエッジデバイス用マイクロ電池です。マイクロ電池には、長寿命、連続出力、高エネルギー密度、低自己放電(10年以上)、量産性が必須だと、アルバックの佐々木俊介氏は述べました。同社のマイクロ電池はシリコン、ガラス、ステンレス鋼の上に、ドライ・薄膜・真空プロセスで製造されます。

 

5. フレキシブル・ディスプレイが表面に命を吹き込む

フレキシブル・ディスプレイは、その耐久性、低製造コスト、プログラマリビリティを活用して、あらゆるものの表面を、さまざまなメッセージを表示するディスプレイに変換し、生活を健全、シンプル、安全にすることができます。

その一例が、FlexEnableの有機薄膜トランジスタ(OTFT)です。このデバイスが実現できたのは、プラスチック上への有機薄膜形成、膜材料の透明度向上といった技術進歩に加え、製造プロセスの改善を続けてきたからです。こうした技術進歩によって、薄膜トランジスタのスイッチング時間が短縮し、色の再現や動画表示の性能が向上しましたが、従来からの柔軟性、低消費電力、表示能力は犠牲になっていません。FlexEnableのサイモン・ジョーンズ氏は、自動車の、運転中にブラインドとなる部分にディスプレイを巻き付け、あるいはサイドミラーをインパネのモニターで置き換えて、そこに外部カメラの映像を表示し、安全性を高めながら空気抵抗を減らして燃費を下げる例を挙げました。

E Inkの反射技術を使ったフレキシブル製品は、豊富な色彩を備えたものが市場に投入されようとしています。同社のマイケル・マクレアリー氏は、サンディエゴ国際空港の駐車場の外壁など、革新的なプロジェクトに向けたパネルの仕様が、E Inkのデザイナーによって検討されているところだと述べました。空港利用者に使われるパネルは、耐候性に優れ、プログラム可能で、電源内蔵式になります。

 

図3

 

初出 SEMI Blog (http://blog.semi.org/blogs) 2018年5月7日