downloadGroupGroupnoun_press release_995423_000000 copyGroupnoun_Feed_96767_000000Group 19noun_pictures_1817522_000000Member company iconResource item iconStore item iconGroup 19Group 19noun_Photo_2085192_000000 Copynoun_presentation_2096081_000000Group 19Group Copy 7noun_webinar_692730_000000Path
メインコンテンツに移動

JEITA規格のSEMI規格への移行について

元東京大学特任研究員
SEMI Japan Regional Standard Committee Co-Chair & Silicon Wafer Committee Co-Chair
河合 直行

SEMIではシリコンウェーハに関するJEITA規格のSEMI規格への移行の作業を一昨年より進めています。その背景に関して本稿に於いて説明させて頂きます。

1958年にJEITAに「半導体用シリコン原料の国産化を促進し、かつ性能の向上を図るため、必要な共同研究および調査を実施する」ことを目的と してシリコン技術専門委員会(旧シリコン技術委員会)が設立され、そこに半導体デバイスメーカ、シリコンウェーハメーカを中心とするSiウェーハの専門家 が集まり米国のNBS(現NIST),SEMI ドイツの DINとの協力の上にシリコンポリクリスタルの規格、小口径のSiウェーハウェーハ規格をJEIDA規格として作成し、1980年代に入ってからは 200mmφウェーハ規格、さらにITRSに先導されたSiウェーハの大口径化(300mmφ)と半導体素子の微細化に対応したシリコン形状仕様等の JEITA(JEIDA)規格として作成して来ました。これらの規格は半導体産業のサプライチェーンの基礎としてB to Bの取引に於いて現在に到るまで活用され、そのうち幾つかはSEMIとの協力の上SEMI規格化することにより国際規格として発信され全世界で用いられて おります。

しかし、昨今の半導体デバイス業界の構造変化に伴い、日本の半導体デバイスメーカの多くはITRSに則った微細化を主導原理とした半導体デバイス開 発・製造から手を引く事となり、その結果50年の歴史を持つ半導体技術専門委員会を2014年3月に廃止、シリコンウェーハに関するJEITAシリコン ウェーハ材料規格は2016年3月に廃止し、JEITA規格はデバイスの製品仕様に密着した外部仕様、信頼性仕様等に関する規格のみをサポートする、との 決定がJEITAにおいてなされました。このためシリコンウェーハに関する既存のJEITA(JEIDA)規格およびその規格の基礎となる標準試料の維持 管理、さらにはJEITA規格を元として策定したJIS規格が継続できなくなる事となりました。この決定により規格にとって最重要課題である継続性が危機 に瀕する事となりました。実際JEITA規格は実際に国内の多くの企業に於いてB to B取引の購買仕様書等で引用されており、この廃止はシリコンウェーハのサプライチェーンに問題を生じさせる可能性があります。SEMI化が完了している JEITA規格に関しては大きな問題は無いのですが、まだSEMI規格化されていないJEITA規格にかんしては早急にSEMI規格化することによりその 内容を残して行く事が急務となりました。

このJEITA規格をSEMI規格化するに当たって、JEITAの事後処理を担当する時限委員会であるシリコン規格管理小委員会に於いて該当する JEITA(JEIDA)規格の洗い出し、実際のその規格の使用状況の確認、またその規格をSEMI規格化する必要性の確認を行いました。また当該委員会 とSEMIシリコンウェーハ委員会で協議を行い、JEITA規格のSEMI規格化に関して検討を行いました。SEMI規格化を行うに当たって該当する JEITA規格に対応する既存のSEMI規格の有無等によって手続きが異なります。対応する既存のSEMI規格が無い場合にはJEITA規格を新しい SEMI規格として作成する事になり、また対応する既存SEMI規格がすでに存在する場合には該当するJEITA規格とSEMI規格の内容の比較を行い JEITA規格との差分に関して改訂の価値のある内容に関して既存のSEMI規格の改訂を行う事になりました。また上記の作業はSEMI Regulationsに従っておこなう事が確認されました。これらの作業は旧JEITAシリコン規格管理小委員会の委員にSEMIメンバーとして登録し てもらい、対応するシリコンウェーハ委員会のタスクフォースと協力して行っています。JEITA規格のSEMI規格化に当たっては、当該規格の著作権の使 用に関してSEMIとJEITAの間で正式な合意を得ております。

 
JEITA (JEIDA) 規格SEMI
番号名称手続き/SNARF
EM-3503赤外吸収によるシリコン結晶中の置換型炭素原子濃度の標準測SEMI規格SEMI MF1391改訂
SNARF#5737
Revision of SEMI MF1391-1107, Test Method for Substitutional Atomic Carbon Content of Silicon by Infrared Absorption
EM-3506短波長励起マイクロ波光導電減衰法によるシリコンエピタキシャルウェーハ(P/P+、n/n+)のエピ層の再結合ライフタイム測定方法新規SEMI規格
SNARF New Standard
Test Method for Recombination Life time of the Epilayer of the Silicon epitaxial Wafer(p/p+, N/n+) by the Short Waf\velength Excitation Microwave Photoconductive Decay Method
EM-3508熱処理CZシリコンウェーハの内部微小欠陥密度及び無欠陥層幅の計測方法新規SEMI規格
SNARF#5770 New Standard  
Test Method for Bulk Micro Defect Density and Denuded Zone Width in Annealed Silicon Wafers
EM-3509表面光起電力法によるシリコンウェーハの少数キャリア拡散長測定のための試料の前処理法新規SEMI規格
SNARF#5774 New Standard 審議中
Guide for Sample Preparation for Minority Carrier Diffusion Length Measurement in Silicon Wafers by Surface Photovoltage Method
EM-3511表面光起電力法を利用したp型シリコンウェーハ中のFe濃度測定法SEMI規格SEMI MF391改訂
SANRF#5772 Revision of MF391-0310
Test Methods for Minority Carrier Diffusion Length in Extrinsic Semiconductors by Measurement of Steady-state Surface photovoltage
EM-3512シリコン結晶中の窒素濃度測定法新規SEMI規格(FTIR法)
SNARF#5769 New Standard:
Test Method for Nitrogen Content in Silicon by Infrared Absorption
新規SEMI規格(放射化分析法)
SNARF未提出
EM3604厚膜SOIウェーハ標準仕様SEMI規格SEMI MF1535改訂---完了
SNARF5736 Line Item Revision to M41-1213 
Specification of Silicon-on-Insulator (SOI) for Power Device/ICs
JEIDA53シリコンウェーハの反射マイクロ波光導電減衰法による再結合ライフタイム測定方法SEMI規格SEMI MF1535改訂
SNARF5313 Revision to SEMI MF1535 
Testmethod for Carrier Recombination Lifetime in Electronic Grade Silicon Wafers by Non-Contact Measurement of Photoconductivity Decay by Microwave Reflectance

上の表に示す様に現在8件のJEITA(JEIDA)規格のSEMI規格化を行っており、新規SEMI規格の作成が5件、既存SEMI規格の改定が4件となりました。(1つのJEITA規格は分割して2つのSEMI規格化を予定)

前述した通りJEITAの半導体技術専門委員会の廃止により、JEITA(JEIDA)規格の廃止以外にも以下の問題を生じました。JEITAの策 定したJIS規格に関してはJEITAが国内審議団体としての業務を行って来ましたがその機能が継続できなくなると該当するJIS規格は自動的に廃止と なってしまいます。JIS規格の廃止は半導体ウェーハのサプライチェーンの大きな影響を及ぼす可能性があるため、JEITAよりシリコンウェーハ製造会社 を擁する業界団体であるJSNMに対しJIS規格の国内審議団体としての機能をJEITAよりJSNMに引き継ぐ事を要請しました。JSNMにおいては半 導体部会にシリコン規格検討会を設立してJEITAと慎重に協議を行った結果、JIS規格に関しては新金属協会が国内審議団体としてJEITAの地位の継 承を行うこと了承し、関係官庁の承認を得ました。これでJIS規格に関してJSNMのもとに今後も改訂審議等継続が可能となり継続が可能となりました。ま たJEITA規格を作成するにあたり使用した標準試料の保管に関しても産業技術総合研究所(AIST)に委託する方向で検討が進んでいます。

しかし、JEITAシリコン技術専門委員会の廃止の最大の問題はJEITAシリコン技術専門委員会の担って来た、半導体デバイスメーカを中心として シリコンウェーハメーカ、製造装置メーカ、 測定装置メーカ、大学・研究所の関係者が一同に会して、半導体材料・デバイスプロセスに関する規格作成の一連 の作業(図1)を行う場が失われてしまった事です。図1のstep 1?5に示される“技術課題掬い上げ?標準化”のプロセスではJEITA半導体ウェーハのサプライチェーンに所属する立場の異なった専門家がそのサプライ チェーンの問題点に関して将来を見据えた広い立場から議論を行って来ました。サプライチェーンのB to Bの相手方との材料の標準化、規格化といった非競争領域における協力関係は不可欠であり、このJEITAシリコン技術専門委員会の機能を如何に残すかが課 題でした。JIS規格の国内審議団体の継承に関する議論においてJEITAとJSNMの間で“JIETAとJSNMは、JSNM参加のシリコン基板メーカ の活動に関しJEITA傘下の半導体デバイスメーカが協力し、半導体測定装置メーカ、半導体素子製造装置メーカ・大学/研究機関等の参加を仰いで、将来の 半導体産業の発展に貢献できる調査・研究・規格作成を目指すこととした。”との覚書を作成するに至りました。これによりJSNMでのSiウェーハメーカの 議論にユーザであるデバイスメーカの専門家の参画を仰ぐことが可能となりました。JSNMにおいてはこのフレームワークを具現化すべく半導体デバイスメー カ他の協力を仰ぎSiウェーハサプライチェーンの技術的課題の掬い上げから技術開発、文書化、規格化を行って行く場を作る方向で議論が始まりました。この 場においてかつてJEITAのシリコン技術専門委員会に於いて行っていた時と同様に議論の結果を新金協規格としての規格化が期待されています。SEMIと してはJEITAの時と同様にJSNMと協力して、この新金協規格の国際化を目指したSEMI規格化を行う方向が考えられます。

現在の国内におけるシリコンデバイスメーカの動向を眺めてみると、デバイス各社が競ってMOS構造を用いたDRAMやSOC-ICを製造するという 時代は去り、それぞれの会社がファイル用記憶素子、撮像素子あるいは高信頼性マイコンといった特徴ある製品に特化する傾向があります。このため各分野にお けるプレイヤーの数は少なくなり、従来の様にウェーハの大口径化、加工の微細化といったITRSに主導され各社が同じ方向を向かっていた時代からすると非 競争領域における規格化のテーマ選定が難しくなっています。しかし、今まで規格化をあまり考えて来なかった、あるいは従来のMOSデバイス用ウェーハを対 象とした規格を転用する事で満足してきた分野、例えばPower半導体デバイスの世界でも、高性能化にともない、Power半導体デバイス用の結晶に関す る規格化の要求が各社から聞かれるようになりました。Powerデバイスは現在多品種少量生産であり、国内にその生産に携わっている会社が多くあります。 また今後その市場規模はかつてのDRAM並に伸びることが期待されています。このPowerデバイス用シリコンウェーハの規格化をDriving Forceとしてシリコンウェーハメーカとデバイスメーカ、その他の専門家の議論の場を構成することが模索されています。この様な場が出来れば、単にパ ワー半導体用ウェーハにとどまらずMOS用のウェーハに関しても新たな問題が生じた時にはその場を活用して対策を考える事が出来ます。パワー半導体デバイ スは、省エネ用のインバータ素子・自動車用の電源回路用素子等に用いられ、高電圧化、高周波化、インテリジェント化等多岐にわたった開発の方向性が示され ており、その市場も拡大が想定されますが、MOSデバイスの時代の指導法則となったMooreの法則、あるいはそれを実現するためのITRSのロードマッ プに対応するものは未だ提案されておりません。その為JSNMの場に集まった専門家が議論して行く事が今後半導体の産業を進展させる一助になるとおもわれ ます。

半導体デバイスプロセスの開始材料であるシリコンウェーハに関しては技術の極限的ともいえる仕様の制御が行われており、このサプライチェーンを効率 的に稼働させB to Bの取引を確実に実行するためには国際間の合意に基づいた材料規格および半導体材料の特性測定法の規格化が必須です。この半導体産業に於けるde facto規格であるSEMI規格を策定するために国内では従来半導体デバイスメーカを擁するJEITAのシリコン技術専門委員会がSEMIと協力して国 内発の規格を世界に発信して来ました。しかしJEITAは既存のシリコンウェーハ関係JEITA材料規格をSEMIに移管し、また新規規格作成に関する機 能を全面的にJSNMに委ねる方向となりました。JSNMに於いてはJEITAの支援を仰ぎながらウェーハメーカ、デバイスメーカ、測定装置メーカ、大 学・研究所等の半導体産業のステークホールダーの専門家を集めて、シリコンウェーハの問題点の掘り掬い上げから規格化を行い、シリコンのウェーハのサプラ イチェーンの確立、ひいては半導体産業の進展に寄与することになりました。SEMI Silicon Wafer CommitteeはJSNMと協力しJSNM規格のSEMI規格化を行って行きたいと考えています。

 

 


JEITA (Japan Electronics and Information Technology Industries Association 電子情報技術産業協会:, 旧JEIDA: Japan electronic Industry Development Association日本電子工業振興協会)

JSNM (Japan Society of Newer Metals新金属協会)

ITRS (International Technology Roadmap for Semiconductors国際半導体技術ロードマップ)