センサーが3兆ドルのファッション産業を変え、パワードクロージング革命を起こす
キャロル・サバス 2018年9月25日
SF小説で昔から語られてきたことが、今まさに現実のものとなりつつあります。センサー、フレキシブルエレクトロニクス、プリンテッドバッテリーによって、ファッションに革命が起きようとしているのです。人々がファッションを通じて自分の社会的イメージを表現するという革命です。業界経験が長い私は、工業デザインではなくファッションこそが、フォームファクター(形状規格)デザインを成功させると信じていますし、IBM Watsonが製品のクールさ、シックさ、気持ちよさの指標を定量化してくれる日も遠くはないでしょう。
世界のアパレル市場は、3兆ドルの規模であり、世界のGDPの2%を占める位置づけとなっています。中でも、プレミアムとラグジュアリーのセグメントは好調です。McKinsey Global Fashion Index*では、2016年から2018年にかけて、業界の売上成長率が1.5%から3.5%~4.5%と3倍近く上昇すると予測しています。
*McKinsey Global Fashion Index – グローバルのファッション業界の売上・営業利益・経常利益のindex指標。関係企業500社をマッキンゼーが調査
ファッションは、社会的アイデンティティを表すツールですが、中には、ソーシャルメディアや音楽、テレビ、スポーツ、ゲームといった大衆文化の領域のものだと、未だに考えている人もいます。
これこそが、「ウェアラブル」の第一世代が、成功するために欠いていた鍵だったのではないでしょうか。どれもがファッション市場をターゲットにしていたにも関わらず、高額商品市場を魅惑することができませんでした。今回のCESで明らかだったのは、現在はヘルス市場にマーケティングの矛先を転じ、市場との関係性を強め、人気を得ようとしていることでした。
しかし、ファッション業界もスマート時代に入ろうとしており、各ブランドはエレクトロニクスを理解し取り入れることに前向きにならざるをえなくなっています。ラグジュアリーブランドのほとんどがです。
ヨーロッパとアメリカでは、ある種の技術の通り道が開通しています。しかし、もっともクリエイティブで模倣されるファッション業界の才能であるインディーズブランドはどうでしょう。彼らが50万ドル~100万ドルの値札のついたプロトタイプを手に、シリコンバレーのデザイナーやインテグレーターと仕事をすることなど、考えたこともないでしょう。
だからこそ私は、エレクトロニクスの発展とその意味することを、こうしたブランドに心を躍らせて伝えているのです。私は自分でデータを集めようと、さまざまな技術産業イベントに参加しています。それにはモンタレーで開催されるFLEXも含まれます。わたしがわくわくするのは次のようなものです。
ミックスドリアリティ(MR)ゴーグル:
サンローランやディオールが、ODGやOstendo Tehcnologiesの技術を得られれば、1~2年で私の鼻の上にかけるシックなアクセサリーにまで小型化できるでしょう。
ワイヤレスイヤホン:
ファッション業界の友人たちは、AppleのAirpodの間抜けなデザインに困っていますが、カルティエ・スマート・ジュエリーの手にかかれば、シックな金のイヤリングとワイヤレスイヤホンのハイブリッドができるでしょう。
LEDドレス:
レディー・ガガの発光するドレスのような見せ方ではなく、デザイナーはドレスの内側に、まるでお肌の基礎化粧品のように忍ばせるでしょう。
バイタルチェック・ユニフォーム:
ナイキがつくるNBAのユニフォームは、バクテリアと運動の力で繊維から汗を回収します。こうして得られた選手のバイオメトリックデータは、コーチや医師にとって健康予防に活用できる有効な材料になります。
クローゼット管理タグ:
NFCのタグを付けることで、自宅のクローゼットにおいてあるコートの洗濯のタイミングを忘れないようにすることができます。
ポケット充電:
ポケットに誘導給電の基板を印刷あるいは織込み、刺繍することで、電子機器をポケットに入れておくだけで充電できます。
さて、これらの技術トレンドのうち、あなたがスタートできるのはどれでしょう?