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MEMSおよびセンサーの未来:人間の知覚を超える

 

2018年11月16日

図1

2017年はMEMSおよびセンサービジネスにとって素晴らしい1年となりました。この上昇トレンドは今後も継続が見込まれています。センサーおよびアクチュエータ市場は、2023年には1,000億ドルを超え、合計1,850億個に達すると、予測しています。光学センサーの中でも特にCMOS画像センサーは、市場価値のほぼ40%と、圧倒的なシェアを誇っています。また、MEMSも成長にとって重要な役割を果たすことになります。2018年~2023年の間にMEMS市場は価格で17.5%成長、個数で26.7%成長し、消費者市場全体に占めるシェアは50%(1)になると予想されています。

 

図1

 

センサーの進化

当初、センサーは衝撃や圧力などの物理的なセンシングアプリケーションとして開発され、その後、加速や回転センサーが開発されました。研究開発への積極的な投資により、MEMSは物理的なセンシングから光管理(マイクロミラーなど)や非冷却赤外線検出(マイクロボロメータなど)に至るまで急拡大しました。光の検出から音の検出へとなり、MEMSのマイクロフォンは、MEMS開発の次の波となりました。MEMSおよびセンサーは、人間の知覚を超え、超音波、赤外線、およびハイパースペクトル検出に入り、新しくてエキサイティングな進化段階に入ろうとしています。

センサーは私たちをサポートし、ある意味、物理的または感情的な知覚の限界を補うことができます。高性能のMEMSのマイクロフォンはすでに聴覚障害者の力になっています。アリゾナ州立大学の研究者は、将来、重い難聴者の聴覚の回復につながる可能性のある圧電MEMSセンサーを搭載した人工内耳を開発しています。

 

図2

 

視覚障害者は、スタンフォード大学がシリコン網膜インプラントを共同研究していると聞いて励まされるかもしれません。Pixium Vision社は、2017年にシリコン網膜インプラントのヒトの臨床試験を開始しました。

将来の世代では、感情や共感を感知するセンサーが使われることになります。これは想像やSFではありません。現実を拡張して、このようなセンシング技術のアプリケーションが広がり、おそらく、自閉症の人が他人の感情を理解できるようサポートすることさえ可能になります。

MEMS業界に長年の関わりを通して、私はMEMSの進化には3つの代表的な時代があると考えています。

  1. 「検出の時代」は、衝撃を検出するシンプルなセンサーを利用していた最初期の時代です。
  2. 「測定の時代」は、センサーは検出だけでなく、測定も可能になりました(回転など)。
  3. 「全般認識の時代」は、環境をマッピングするセンサーの利用がますます増えます。自動運転車でのLidarを使用した3Dイメージングの作成、環境センサーを使用した空気の品質監視、加速度計や超音波を利用したジェスチャの認識、指紋センサーや表情認識センサーを利用したバイメトリクス認証を実装などです。これはセンサーフュージョンの複数のパラメータと人工知能とを一緒に利用することで実現可能です。

このような着実な進歩には、数々の技術的ブレークスルーが関わっており、これらには新たなセンサーの設計、新しい処理や素材、新しい統合アプローチ、新しいパッケージング、センサーフュージョン、および新しい検出方式などが含まれます。

 

全般認識のセンシング

現在は全般知覚認識の時代です。全般認識とは、人間の知覚能力の拡張(赤外線イメージングを加えた可視化など)、または人間の知覚能力を超越したもの(自動運転車のLidarなどの非常に優れた環境認識機能を持つマシンなど)として考えることができます。マーベル映画の世界の中のプロフェッサーXを思い浮かべると、将来、人間の知覚の進化の可能性を想像できます。

 

図3

 

一部の企業はゼロの状態から全般認識を構想しました。たとえば、Movea社(現在TDK InvenSenseの一部)は慣性MEMSを使用して開発を開始しました。別の会社では、自動運転車用のLidarなどの光センサーや暗視センサーを組み合わせて全般認識を実装しました。3つ目は、空気の品質をチェックする環境センサー(ガス、微粒子、気圧、温度)のグループです。このグループに最近登場したパーティクル(微粒子)センサーは、空気の品質を検出し、特にウェアラブルデバイスで重要な役割を果たす可能性があります。

大気汚染は、空気の品質悪化を示す多くの証拠を受けて、社会的な懸念が世界的に高まる中、社会における大きな課題となっています。研究では、微粒子に安全なレベルは存在しないことが明らかになっています。大気中から吸い込むPM10やPM2.5の微粒子の濃度の上昇により、肺がんの発症率が大幅に増加しています。パーティクルセンサーとウェアラブル機器のマッピングアプリケーションを組み合わせることで、都市エリアで汚染度が最も高い場所を特定できます。

 

人工知能の必要性

全般認識を実現するには、人工知能(AI)も必要になりますが、その前に解決すべき課題があります。たとえば、行動を追跡するには、AIデータを正確にリアルタイムに分類する必要があります。しかしながら、AI処理をメインプロセッサに任せると、膨大なCPUリソースを消費し、利用可能な処理能力が低下します。同様に、デバイス上にすべてのAIデータを保管すると、ストレージコストの上昇につながります。AIとMEMSを融合するには、次のように行う必要があります。

  1. 分類エンジンの実行を処理する機能を、より強力な外部プロセッサに分離する。
  2. 正確な動作認識に必要な機能のみ実装して、ストレージと処理の要求を削減する。
  3. 複数のセンサー(センサーフュージョン)からのデータを統合できる低電力のMEMSセンサーを実装し、前処理により常時実行できるようにする。
  4. ユーザーの動作の正確な識別が可能で、システムに対応するデータを使ったモデルを保持する

AIとソフトウェアをモバイルや自動車アプリケーションに追加する方法は2つあります。1つ目は、集中型アプローチで、センサーデータは、ソフトウェアを内蔵した補助パワーユニット(APU)で処理します。2つ目は、分散型アプローチで、センサーはソフトウェアやAIと同様に同じパッケージに集中配置されます(例、CMOS画像センサーのDSPなど)。どちらのアプローチの場合でも、MEMSおよびセンサーメーカーはAIの理解が必要になりますが、センサーレベルでは大きな利益は得られる可能性はあまりありません。

 

拡張型の世界に向かう

私たちは長年のセンサー開発により、大きな進歩を実現してきました。現在、センサーは視覚、聴覚、触覚、嗅覚に加え、感情/共感、美的感覚に至るまで、人間の知覚の大部分を模倣または拡張できるまでに至りました。私たちが認識すべき注意点として、これらの開発の恩恵を受けるのは人間だけではありません。また、知覚が向上することで、ロボットが私たちの日常生活をサポートできるようにもなります(スマート交通、医療ケアの向上、コンテキストアウェアネス環境など)。私たちは、スマートセンサーの開発とAIとを組み合わせることで、日常生活における人、場所、物事の体験のさらなる向上につなげる必要があります。

 

著者について

エリック・ムニエ博士は、約20年に及ぶMEMS、センサー、フォトニクスアプリケーション、市場、技術分析の経験を持ち、現在および将来のトレンドについて深く掘り下げた業界の知見を提供しています。博士は、Yole Développement社(Yole)のフォトニクスおよびセンシング&ディスプレイ事業部で、テクノロジーと市場、MEMSとフォトニクス分野の主任アナリストとして、日々MEMSおよびフォトニクス開発業務に携わっています。同氏は、市場やテクノロジーに関する幅広いレポートに関わっている他、複数の個別コンサルティングプロジェクトにも携わっており、分野は、ビジネス戦略、投資先の識別または買収対象、デューデリジェンス(売り手側/買い手側)、市場および技術分析、コストモデル、技術スカウトなどに及びます。

ムニエ氏は以前、CEA Leti社(フランス)の研究開発およびマーケティング部門に所属していました。同氏は数多くの国際的なカンファレンスに登壇しており、100以上の論文を執筆または共同執筆しています。ムニエ氏はグルノーブル理工学大学(フランス)で半導体エンジニアリングの学位および光エレクトロニクスの博士号を取得しています。

ムニエ氏は、2018年9月20日にフランスのグルノーブルで開催されるSEMI-MSIG欧州MEMSおよびセンサーサミットメインスピーカーです。