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2019年2月12日

日本のAI開発を牽引する、注目のベンチャー企業6社

 

12月12日~14日に東京ビッグサイト(東京国際展示場)で開催された「SEMICON Japan」の初日に行われたキーノート講演では、日本が世界に誇れる「時代の寵児」が2名が
テクノロジーの未来を語りました。1人は、先端技術によるメディアアートで世界を驚かせ続けているライゾマティクスの石橋素氏、もう1人は、世界の製造業に革命を起こしつつあるプリファードネットワークスの西川徹氏です。

ここではプリファードネットワークスに注目しましょう。同社が革命を起こしつつある道具は、「人工知能(AI:Atrificial Intelligence)」です。具体的には「深層学習」あるいは「ディープラーニング」と呼ばれる技術を使います。

これらの関係を簡単に説明すると、「人工知能」とは、人間の知的活動を機械にさせようという試みや、そうした機能を備えた機械を意味します。機械といっても実際にはすべて、コンピュータです。そして人間の知的活動を機械、すなわちコンピュータに学習させようという試みが「機械学習(ML:Machine Laerning)」です。「マシンラーニング」とも呼ばれています。「機械学習」には様々な手法があります。「深層学習(DL:Deep Learning)」あるいは「ディープラーニング」は、「機械学習」の分野における学習手法の1つです。

 

人工知能(AI)と機械学習(ML)、深層学習(DL)の関係

「人工知能>機械学習>深層学習」の関係にある

 

「ディープラーニング」は近年になってにわかに注目されるようになりました。その大きな理由は、「ディープラーニング」によって画像の認識という知的活動を学習させた結果が、人間を超える認識精度を持つようになったことです。今からおよそ3年前の2015年のことでした。もちろん特定の条件の下におけるテストの結果ですが、それでもこのことは非常に大きな驚きをもって迎えられました。

人工知能の研究開発全体からみると、機械学習や深層学習といった分野は狭く、研究者もわずかでした。しかし深層学習を含めた機械学習が新たな可能性を具体的に示してみせたことで、現在は「人工知能のブーム」が世界中で巻き起こっています。それは日本でも例外ではありません。そこでここでは、プリファードネットワークスを始めとする、世界的に注目すべき日本の人工知能(AI)ベンチャー企業を6社ほど順次、紹介していくことにします。

 

世界最先端の技術を有する「プリファードネットワークス(Preferred Networks, Inc.)」

日本の人工知能や機械学習、深層学習の世界ではたぶん、最も良く知られている日本企業が「プリファードネットワークス」です。その母体である「プリファードインフラストラクチャー(Preferred Infrastructure)」(https://preferred.jp/)は2006年3月に設立されました。設立したのは先に述べた西川氏と、岡野原大輔氏です。当初は検索エンジンの開発をしていましたが、機械学習の分野へと舵を切ります。そして2014年10月に子会社であるプリファードネットワークスを設立し、この会社をベースに機械学習技術の事業化に取り組みます。

プリファードネットワークス(PFN)が世界で最も優れた機械学習技術を有する企業の1つであることを見せつけたのが、深層学習のフレームワークである「Chainer(チェイナー)」を開発し、2015年6月に無償で提供(オープンソースとして公開)を始めたことです。

深層学習のフレームワークを提供している企業は2015年6月の当時、ほとんどありませんでした。検索エンジンの世界最大手であるGoogleが開発した「TensorFlow」は、世界的に良く知られている深層学習フレームワークです。「TensorFlow」のベータ版が公開されたのは2015年11月のことです。PFNの「Chainer」は、「TensorFlow」よりも早いタイミングで公開されていることが分かります。

 

 Preferred Networks(プリファードネットワークス) 

企業名:株式会社Preferred Networks(プリファードネットワークス、PFN)
設立年月:2014年3月26日
資本金:不明。トヨタ自動車(累計約115億円とされる)、ファナック、日立製作所、三井物産、博報堂DYホールディングス、みずほ銀行などが出資
共同創業者:代表取締役社長 最高経営責任者 西川徹、代表取締役副社長 岡野原大輔
所在地:東京都千代田区大手町1-6-1大手町ビル
ホームページ:https://www.preferred-networks.jp/ja/
英文ホームページ:https://www.preferred-networks.jp/en/

主な事業活動:深層学習フレームワーク「Chainer(チェイナー)」の開発と改良(2018年10月にバージョン5をリリース)、自動運転技術の研究開発(トヨタ自動車と共同研究)、ロボットや工作機械などへの応用を目指した物体認識・制御・異常検知技術などの開発(ファナックとの共同研究、日立製作所との共同研究、血液によるガンの早期診断技術の開発(国立がんセンターなどとの共同研究)
技術開発における特長:ネットワークに接続された端末で学習と推論の両方を実行する、分散協調型の深層学習システムを開発している

 

100社を超える顧客を獲得した「ABEJA(アベジャ)」

深層学習(ディープラーニング)を得意とするベンチャー企業で、PFNよりも早く設立され、ビジネスで豊富な実績を有しているのが「ABEJA(アベジャ)」です。「ABEJA(アベジャ)」の設立は2012年9月のこと。深層学習を専門とする日本で初めてのベンチャー企業だと言われています。

ABEJAのコア技術は、自社開発のAIプラットフォーム「ABEJA Platform」です。このプラットフォームを元に各種のソリューションを100社を超える顧客企業に提供しています。さらに、小売・流通業界や製造業界、インフラ業界向けには業界に特化したパッケージサービス「ABEJA Insight」を開発しており、このサービスは100社を超える導入実績を有しています。

 

ABEJA(アベジャ)

会社名:株式会社 ABEJA (ABEJA, Inc.)
設立年月:2012年9月10日
資本金:53億9997万4043円(資本準備金含む)
代表者:代表取締役社長 岡田 陽介
従業員数:52名
所在地:東京都港区白金1-17-3 NBFプラチナタワー10F
ホームページ:https://abejainc.com/ja/
英文ホームページ:https://abejainc.com/en/

事業内容:ディープラーニングを活用したAIの社会実装事業。様々な大量データの取得、蓄積、学習、デプロイ、運用(推論・再学習)を行うPaaS(Platform as a Service)技術「ABEJA Platform」を開発した。既に100社を超える企業に導入の実績がある。また、小売・流通業界、製造業界、インフラ業界向けには業界に特化したSaaS(Software as service)「ABEJA Insight」を約100社・520店舗以上に提供した実績(2018年8月末時点)を有する

 

東証一部に上場したAIベンチャー「ブレインパッド(BrainPad Inc.)」

上記の2社はいずれも2010年代に入ってから設立された若い企業でした。次にご紹介するのは、日本AIベンチャーではたぶん初めて、東京証券取引所市場第一部に上場を果たしたデータ分析サービス企業「ブレインパッド(BrainPad Inc.)」です。

ブレインパッドが設立されたのは2004年3月とかなり早く、今から15年近く前のことになります。「ビッグデータ」という用語が存在しない時代です。その時点で、代表者の草野隆史氏は、近い将来には「膨大なデータを分析する能力が日本の企業にとって競争力を左右する時代」が来ると感じ、データ分析を専門とする企業「ブレインパッド」を立ち上げました。草野氏の先見性は、同社のビジネスが成長し、日本の企業にとって重要なものになったことで証明されたと言えます。

 

ブレインパッド

会社名:株式会社ブレインパッド(BrainPad Inc.)
設立年月:2004年3月18日
上場年月:2011年9月 東証マザーズ、2013年7月 東証第一部
資本金:3億3200万円(2018年6月30日現在)
代表者:代表取締役会長  草野 隆史、代表取締役社長     佐藤 清之輔
従業員数:263名(連結、2018年6月30日現在)
所在地: 東京都港区白金台3-2-10 白金台ビル
ホームページ:http://www.brainpad.co.jp/
英文ホームページ:https://www.brainpad.co.jp/english/

事業内容:データ解析による経営支援サービス(アナリティクス事業 /ソリューション事業 /マーケティングプラットフォーム事業)

 

低消費の組み込み型深層学習を実現する「リープマインド(LeapMind Inc.)」

深層学習(ディープラーニング)はすでにご説明したように、画像認識や音声認識などでは絶大な威力を発揮しつつあります。ただし学習の実行には、かなり大掛かりなコンピューティング・リソースが必要です。一般的に使われているのは、高性能なグラフィックスボード(GPUボード)を数多く搭載したコンピュータであり、導入コストが高価である、消費電力が非常に大きい、といった課題を抱えています。このような課題は、ネットワークに接続された端末(デバイス)のように、限られたコンピューティング・リソースと低消費電力が要求される条件下では深層学習技術の導入を難しくします。

そこで小型で消費電力の低いFPGAを深層学習の実行環境とすることで、少ないコンピューティング・リソースと低い消費電力でも深層学習技術を導入することを目指しているのが、「リープマインド(LeapMind Inc.)」です。

リープマインドは2018年4月に、深層学習のモデル構築を支援するツール「DeLTA-Lite(デルタライト)」の提供を開始しました。このツールを使うと、モデル設計やハードウェア、ソフトウェアなどに関する高度な専門知識がなくとも、深層学習のモデルを設計できるようになります。また同年10月には、FPGA上で深層学習モデルを動かすためのソフトウェアスタック「Blueoil(ブルーオイル)」を開発し、一般公開を始めています。

 

リープマインド

会社名:LeapMind株式会社(LeapMind Inc.)
設立年月:2012年12月
資本金:7億8198万4235円
代表者:代表取締役CEO 松田 総一
従業員数:73名
所在地:東京都渋谷区円山町28-1 渋谷道玄坂スカイビル 5F
ホームページ:https://leapmind.io/
英文ホームページ:https://leapmind.io/en/

事業内容:低消費電力FPGAを利用した組み込み型ディープラーニングデバイスの開発支援サービス
最近の話題:低消費電力FPGA上でディープラーニングを実現するソフトウェアスタック「Blueoil(ブルーオイル)」を、10月19日よりオープンソースソフトウェアとして一般公開(2018年10月)

 

少量のデータで機械学習を可能にする「ハカルス(Hacarus Inc.)」

深層学習(ディープラーニング)の課題はほかにもあります。例えば、学習に大量のデータを必要とすることです。ビジネスの現場では、大量の学習データを用意できるとは限りません。深層学習ではまた、機械が何をどのように判断したのかはブラックボックスであり、人間には分かりません。

そこで少量の学習データからでも特徴を抽出でき、人工知能の判断経緯を人間が把握できるモデル化手法として、「スパース・モデリング(sparse modeling)」が注目を集めています。このスパース・モデリング技術と機械学習技術を組み合わせた独自の人工知能「HACARUS-X」を開発している企業が「ハカルス(Hacarus Inc.)」です。

ハカルスが開発している人工知能「HACARUS-X」は、FPGAのような低消費電力かつ小型のデバイスで動作することを特長としています。そこでハカルスは、半導体商社のPALTEKと共同で、XilinxのFPGA「Zynq UltraScale+ MPSoC」に「HACARUS-X」のアルゴリズムを実装する開発環境を構築中です。両社は、ボックスコンピュータに「HACARUS-X」のアルゴリズムを実装する開発環境も開発しています。

 

ハカルス

企業名:株式会社ハカルス(Hacarus Inc.)
設立年月:2014年1月14日
資本金:3億1,946万円(資本準備金含む)
代表者:代表取締役CEO 藤原健真
所在地:京都府京都市中京区町頭町112番地
ホームページ:https://hacarus.com/ja/
英文ホームページ:https://hacarus.com/

事業内容:少量のデータからでも特徴の抽出が可能なスパース・モデリング(sparse modeling)と機械学習を組み合わせた、独自の人工知能「HACARUS-X」の開発
最近の話題:半導体商社のPALTEKと、 「HACARUS-X」 を搭載するFPGA製品およびボックスコンピュータ製品の共同開発で提携(2018年9月)

 

画像診断の作業負担を大幅に軽減する「エルピクセル(LPixel, Inc.)」

最後にご紹介するのは、独自のアルゴリズムと機械学習技術によって画像の解析システムを開発している企業「エルピクセル(LPixel, Inc.)」です。人工知能を活用した医療画像診断支援技術や人工知能を活用したクラウド型画像解析プラットフォーム、研究論文の画像不正を検出するシステムなどを開発した実績があります。

エルピクセルは、医療や生物学などのライフサイエンス分野に関する専門知識と画像処理技術の両方を備えていることを特長としています。医療や生物などの研究現場では、大量の画像データをチェックすることがしばしば、起こります。このチェック作業には膨大な時間がかかるため、研究者の限られた時間を奪っています。この作業負担を軽減するためにエルピクセルが開発したのが、上記の画像診断支援技術や画像解析プラットフォームなどです。これらの製品を活用することによって研究者は、本来の創造的な活動に費やす時間を増やすことができます。

 

エルピクセル

企業名:エルピクセル株式会社 (LPixel, Inc.)
設立年月:2014年3月
資本金: 約8億1100万円(準備金を含む)
代表者: 社長 島原 佑基
所在地: 東京都千代田区大手町 1-6-1 大手町ビル 6F TechLab
ホームページ:https://lpixel.net/
英文ホームページ:https://lpixel.net/en/

事業内容:独自のアルゴリズムと機械学習技術による、医療画像診断支援ソフトウェアの開発、研究不正検出用画像解析技術の開発、など
最近の話題:富士フイルムがエルピクセルに出資、内視鏡システムを支援する人工知能(AI)システムを開発へ(2018年10月)

 

日本の人工知能(AI)ベンチャーで注目すべき企業は、まだまだ数多くあります。「SEMICON Japan」に関心のお持ちの方が、魅力的なAIベンチャーが日本には数多く存在することを知って頂ければ、これにまさる喜びはありません。