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皮膚感覚の生体適合性デバイス「電子皮膚」が市場に登場

 

 

マリア・ベトラーノ 2020年3月13日

 左の写真:ロレアルグループのLa Roche-PosayによるMy Skin Track pH – 肌のpHレベルを簡単に測定する最初のウェアラブルセンサーとコンパニオンアプリ -

バイオ集積エレクトロニクスセンターのJohn A. Rogers教授の研究室およびSimpson Querrey Instituteでの20年に及ぶマイクロ流体とソフトマテリアルの研究

 

ノースウェスタン大学のバイオ集積エレクトロニクスセンターのディレクターとして、John A. Rogers教授は、コンフォーマルエレクトロニクス、ナノフォトニック構造、マイクロ流体デバイスやMEMSに使えるソフト材料について研究しています。カリフォルニア州モントレーで開催されたFLEXおよびMEMS&Sensors Technical Congress 2019( 2月18日 - 21日)の基調講演で、Rogers教授は皮膚のような性質を持つ新しいタイプの生体適合性デバイスとマイクロ流体システムの例を発表しました。

今回の基調講演にあたって、SEMIではRogers教授にこれらの研究に関するインタビューを行いました。内容は ロレアル(L'Oréal)によって既に商品化されたものです。

 

SEMI皮膚インターフェース電子デバイスとマイクロ流体デバイスの背後にある概念は何ですか?

ROGERS:生物学的システムは機械的に柔らかく、(複雑で)経時的変化に対応する3D曲線形状をしています。一方、現代のエレクトロニクス技術やマイクロ流体技術では、硬くて曲げられない、単純で静的な2D構造です。マイクロシステム技術によって、物理的性質におけるこの重大なミスマッチを排除することは、大きなビジネス機会創出につながります。これは、診断や治療、外科的手術のために人体に直接装着できるデバイスを実現するものです。なお、ここでいうマイクロシステム技術とは、電子工学、オプトエレクトロニクス、マイクロ流体、マイクロエレクトロメカニカルデバイス技術のことです。この「皮膚のようなデバイス」の例として、リアルタイムの血糖値評価装置や、新生児集中治療における乳児のバイタルサインを継続的に監視するモニタリング装置があります。いずれも、非侵襲性のワイヤレス生体適合性デバイスです。

SEMI:あなたの研究を活用した市販の生体適合性/マイクロ流体ウェアラブルデバイスの例としてどのようなものがありますか?

ROGERS生活の質向上や救命に関する用途において、私たちのいくつかのアイディアは商用化に成功しています。スポーツやフィットネスの分野では、皮膚インターフェイスマイクロフルイディックシステムが開発されました。これは、汗の情報を収集・蓄積し、化学分析を実行するソフトデバイスがベースとなっています。これらは、化粧品と陸上競技の分野でグローバルに発売されています。化粧品の例は、ロレアルグループが発売した、「汗のpHから肌のpH度を測定するセンサ」です。このセンサを装着することにより、自分の身体にあったスキンケア製品を選ぶことができます。詳しくは以下の動画をご覧ください。

 

ノースウェスタン大学のバイオ集積エレクトロニクスセンターの Rogers Research Groupの技術を使用したMy Skin Track pH内部構成

 

私たちの技術はまた、臨床医学とリハビリテーションの用途で使われています。これは、柔らかい、皮膚インターフェースのワイヤレスセンサーで、脳卒中のリハビリテーションにおいて、患者の日々の進歩を評価するためのものです。従来、電子機器とつないで使う有線センサや、手首限定で使うウェアラブル機器がありますが、これらは、明らかに「機器として装着する」ものです。一方、このシステムは、バンドエイドのように皮膚に貼り付けるタイプであり、使用中の患者が「つけている実感がない」ものとなっています。これらのプラットフォームは、会話や嚥下能力、四肢の動き、睡眠の質、歩行およびバランスを測定します。医療従事者は、患者が医療施設の外に出る際にモニタリングし、収集された情報から、患者の状態を把握することができます。(詳しくは動画をご覧ください)

SEMIフレキシブルデバイス以外ではどんなものがありますか?

ROGERS小型化を追求したデバイスも開発しています。よい例がMy Skin Track UVです。これは最近ロレアルのLa Roche-Posayとして商品化されました。これは、バッテリー不要のワイヤレスセンサーデバイスで、紫外線照射量をリアルタイムで測定し、スマートフォンで紫外線対策のお知らせをするサービスと連携するものです。My Skin Track UVは、米国中のすべてのアップルストアおよびアップルのWebサイトから入手できます。詳しくは動画をご覧ください。

  

ロレアルラロッシュポゼマイスキントラックUV

 

救命用途の実現例もあります。それは、水頭症患者のモニタリング用途です。水頭症は、脳内に髄液が過剰に蓄積していく病気のため、定期的にチェックする必要があります。放置しておくと、脳室などの拡大によって致命傷に発展する恐れがあります。

脳の中に水がたまってくる病気を治療するために行われます。

水頭症は、シャントによって治療することができます。シャントは、蓄積した体液を頭蓋内腔から体の遠位部、しばしば腹部に排出するものです。しかし残念ながら、シャントは10年間でほぼ100パーセントに近い失敗率を示しており、それらをテストするのに通常、MRI、CTスキャン、さらには手術さえも必要とします。我々の技術を使うことで、包帯サイズの皮膚感覚センサを首の皮の表面に適用することができます。皮膚に貼り付けてから5分以内に、同センサは、流体がシャントを通って流れているかどうかを非侵襲的に判定することができます。これにより、家庭や他の医療現場でない場所からでもシャントの迅速な評価を独自にサポートできます。このデバイスは、病院から患者を解放し、彼らに安心感と自立心を与えるものです。(詳しくは動画をご覧ください。)

 

SEMI:今後の可能性について教えてください。

ROGERS生体適合性のあるマイクロ流体・ウェアラブル技術は、もはや学術研究室だけで議論される遠い未来の技術ではありません。フレキシブルハイブリッドエレクトロニクス(FHE)とMEMS /センサ。非常に成長性が高く、今後5年間で、数千から数億のデバイスが市場に出る可能性を見込んでいます。我々は5年から10年以内で数十億ドル規模の市場機会になると期待しています。

 

(初出 2019年1月31日)

 

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