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3D光学センシングの時代が到来

 

IHS Markit 主席リサーチアナリスト マヌエル・タリアヴィーニ 2019年4月11日

 

 

3D光学センシング市場が再び急増していますが、すべてAppleのおかげです。この技術によって次の世代の最終製品はどんな強化がされるのでしょうか。その他の分野では、3D光センシングにどうアプローチし、そして最終的に使用することになるのでしょうか。また、この極めて重要な技術から最も多くを得るサプライヤーは誰なのでしょうか。

3Dセンシング、顔認証、そして光学認証システムが、民生機器の領域で注目を集めるようになったのは最近のことですが、実はこれらは10年近く前(2010年11月)に登場したものです。Microsoftはこの技術が紹介された直後に、Xbox 360のゲームコントローラーKinectシステムに採用しました。 これは、2010年に任天堂がWiiリモコンを発表したことで、MEMSモーションセンサーが巨大なコンシューママーケットに参入したことに匹敵する重要な出来事でした。

 

Appleが顔認証で3Dを採用

3D光センシングは、ゲーム機からスマートフォンへと拡大しました。2017年、Apple がiPhone10周年を記念して発売したiPhone XにFace IDカメラシステムを搭載したのです。Face IDは、3Dセンシングおよび拡張現実(AR)/仮想現実(VR)のノウハウを獲得するための企業買収という、Appleの長期戦略の副産物です。Appleは2015年から2018年の間に、カメラモジュールメーカーのLinX(2015年)、ARスタートアップのVrvanaおよびイメージングセンサー企業のInVisage Tech(どちらも2017年)、そしてARグラスのAkonia Holographics(2018年)を買収しています。

常に自分なりの方法でイノベーションを起こしてきたAppleは、ストラクチャードライト方式にToFデバイスを組み合わせるという独自のアプローチを採用しました。これは高価ではあるものの、2つのメカニズムの長所が統合する結果になりました。ToFデバイスに近赤外照明を追加したことで、幅広い照明条件下でシステム効率が高まり、同時にFace IDの信頼性も向上し、全体としては、ユーザーエクスペリエンスの満足度向上につながりました。STMicorelectronicsが提供するToFコンポーネントは、ターゲットの材質や色に制約されないシングルフォトンアバランシェダイオード(SPAD)センサーを使用しています。ただし、このセンサーの良好な精度を得るには、強いターゲット照明が必要です。

この他、Face IDシステムの中心的コンポーネントとして、垂直共振器型面発光レーザー(VCSEL、Lumentum製)やドットプロジェクター(ams / Heptagon製)があります。これらは、光学部品パッケージにまとめられています。

Appleのアプローチは、iPhoneのXs、Xs Pro、XrやiPad Proの最新機種など、同社の最新スマートフォンやタブレットのFace IDシステムに採用されていることから、高価であっても信頼性が高いことがわかります。

 

AppleのFace IDは、iPhoneおよびiPad Proモデルで使用されている顔認証テクノロジーです。画像提供:アップル。

 

ゲームに参加する中国携帯メーカー

他の携帯電話メーカーは、Face IDに類似したシステムの開発が噂されているか、もしくは、すでに同様のソリューションを発表している状況です。各社のアプローチは様々で、標準的なToFデバイスを選択した企業もあれば、ストラクチャードライト方式を採用した企業もあります。こうしたシステムが対象とするAndroid端末の多くは、できたばかりの独自3D顔認証システムをバックアップする生体認証として、指紋センサーを搭載しています。指紋センサーは、独立したセンサーとして実装作するか、ディスプレイに統合されています。

たとえば、中国の携帯電話メーカーのOppoはストラクチャードライト方式を採用しており、そのFind XモデルにMegviiのアルゴリズムを使用しています。Oppoは、Apple Face IDより高速であると主張しています。私は、Vivoが2018年半ばからToFカメラに取り組んできたことを聞いたことがあります。同社によると、安全なスマートフォン決済やロック解除などの用途でより高い精度と安全性を提供するとのことです。

 

中国のテクノロジー大手Huaweiは、携帯電話のフラッグシップモデル「Mate 20 Pro」で初の3D顔認証センサーを搭載しました。正面にある3Dセンサーは、顔認証と3Dスキャナーを兼ねており、ユーザーは被写体を立体的に認識し、デジタル化されたライブオブジェクトとして3D ARアプリケーションで操作することができます。まだモノ珍しい感じはありますが、単なる認証を超えた3D光センサーの使い方を特徴として強調しています。またXiaomiのスマートフォン「Mi Explorer Edition」では、顔の3Dスキャンを可能にするストラクチャードライト方式 3Dモジュールを備えています。これは、まるでAppleのクローンのようです。

全体的に見て、Appleの競合が対応製品を開発している状況からみると、顔認証の重要性に議論の余地はありません。現在Googleが開発中のAndroid OSの次のリビジョン(リビジョンQ)でも、リークされたコードから、同様のものが確認されています。 

 

Kinect for Xbox 360は、コンシューマ製品として成功しただけでなく、新しいマーケットを開拓しました。これも、この3Dセンシングソリューションが比較的低コストだったおかげです。MicrosoftはXbox 360の初代Kinectと同じハードウェアを使用することで、開発ベンダーが長年温めていたプロジェクトをKinect環境で設計できるようにしました。開発パートナーや自作マニアがKinectに創造性を発揮した例をいくつか挙げておきます。PCへのジェスチャー制御機能追加、ユーザーがジェスチャー制御できるバーチャルな動的照明(Kimchi and Chipsのデモ動画)、安価なホログラムジェネレータ(MIT Media Labの動画「Princess Leia」)などです。

 

ますます拡大する市場

IHS Markitは、3D光学式センシングにおけるToFセンサーの世界市場が、2018年の3億7000万ドルから2019年には5億ドルを超える規模になると予測しています。また、ToF市場は、この先数年間にわたって他の光センサーとひとつのパッケージに統合した組み合わせソリューションにリードされて成長を続けると予想しています。この結果、ToF方式の構成部品は、ストラクチャードライト方式より安価になるでしょう。

またIHS Markitでは、光センサーの市場はこの先さらに拡大するとみており、2022年には、15億ドルに達すると予測しています。ゲーム機からスタートした3Dセンシング技術がこなれてきて、巨大なスマートフォン市場での採用が進むと考えているからです。

IHS Markitは、ToFや他光センサーの着実な成長を予測しています。

 

上述のように、ToF方式はストラクチャードライト方式よりも、大きな市場シェアを獲得する可能性が高くなります。量産効果によってシステムの組み立てやキャリブレーションの統合コストが削減できるため、部品の点数やコストの削減にもつながります。

今年中には、Appleをはじめとする携帯端末メーカ各社が、スマートフォンの背面にToF方式の3Dカメラを搭載して、より夢中になれるゲーム体験や新しいAR / VRアプリケーションをサポートするようになるかもしれません。これがさらに3Dセンシング市場を後押しするでしょう。

なお、光学的3Dセンシングの有効な代替手段として、超音波、ミリ波、レーダーなども利用可能です。これらの代替技術は、障害物回避や室内の存在検知などの一部の用途では利用される可能性があります。

 

IHS Markitの3D光学センシングおよび光センサーの情報はこちら

https://technology.ihs.com/606483/light-sensors-for-consumer-mobile-report-2018

 

(初出 SEMI Blog 2019年3月19日)


 

著者について)

マヌエル・タリアヴィーニは、2017年にIHS Markitに入社しました。主な担当分野は、モバイルテクノロジおよびコンシューマテクノロジ向けのMEMSおよびセンサーです。携帯電話、タブレット、ラップトップ、そしてスポーツやフィットネス製品のセンサーをトラッキングしています。IHS Markitに入社以前は、STマイクロエレクトロニクスで10年以上にわたり、製品エンジニアリング、プログラム管理、および同社のMEMS部門でのマーケティングおよび事業開発などを担当していました。