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SEMI Europe パブリックポリシーディレクター エミール・デミルカン 2019年10月15日

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SEMIは現行の機械指令が目的にかなっており、従って本質的な変更は不要であることを欧州委員会との協議で確認しました。この協議は機械業界を代表するSEMI等のグループに対し、機械指令の改正に対する考えを委員会が求めるために開いたものです。

機械指令の下では、製造業者は健康および安全上の要求を満たさない限り、欧州市場に機械を上市することができません。この指令は、特にSEMIが代表するエレクトロニクス製造分野、その中でも欧州ならびに海外の半導体製造装置メーカーに関連するものです。

以下は、SEMIが欧州委員会に提供した情報について、人工知能(AI)等の新技術が機械指令の範囲において健康および安全に及ぼす影響を中心にまとめたものです。SEMIが欧州委員会に提出した正式な回答はこちらをご覧ください。

 

人口知能、アルゴリズム、機械学習

SEMIが代表するマイクロエレクトロニクスデバイスメーカーの多くは、機械(半導体製造装置)の性能向上のために、AIアプリケーションを既に採用しています。現在のマイクロエレクトロニクスデバイス工場は、AIを組み込んで大量の故障データを管理し、製造効率を向上し、歩留まりを改善しているのです。一例として、AIはビッグデータのリアルタイム収集とモニタリングを可能にし、何らかのハードウェア故障等のオペレーション異常が発生すると、工場システム管理者に警告を発します。

AI

AIによって製造プロセスにフィードバックを提供し、自動調整/修正をすることも可能です。機械指令がAIを含む新技術によく適合していることは、SEMI会員も認めています。機械指令は機械製造業者が満たすべき健康および安全上の要求を指定していますが、技術的にはニュートラルです。指令は技術規格の開発の専門性を備えた組織に、適合を達成するための技術仕様規格開発を委ねているのです。

 

サイバーセキュリティとサイバー脅威

サイバー脅威には、デバイスの不正な操作やその構造の改造などがあります(欧州ネットワーク情報セキュリティ庁(Enisa)のGood practices for Security of Internet of Things in the context of Smart Manufacturing参照)。このような意図的なサイバー攻撃は機械指令の範囲外となる犯罪行為であり、機械安全の整合規格でも取り扱われていません。リスクアセスメントの整合規格(例、ISO 12100)はITセキュリティ攻撃を明確には扱っておらず、国際的不正使用および犯罪行為として分類されています。

サイバーセキュリティ

ISO 12100は対象となる機械の制限の決定について、リスクアセスメントおよびリスク低減の戦略の中で、意図する使用および合理的に予見可能な誤使用(ISO 12100:2010、Clause 4)だけを考慮しています。外部からの(機械制御システムやそのほかの電子部品の脆弱性を介する)ITセキュリティ攻撃とその安全上の意味は、合理的に予見可能な誤使用には含まれません。しかし、ITセキュリティ攻撃に対する脆弱性を機械製造業者は、機械がインターネット等のサイバー攻撃のルートとなりえるITシステムに接続する設計をする時点で検討します。この場合、製造業者はISO/TR 22100-4で提供されるガイダンスを参照することになります。

さらに、別の記事でもご紹介した欧州サイバーセキュリティ法は、はじめて、サイバーセキュリティ認証製品の欧州全域のルール化を導入しました。サイバーセキュリティ法の主要な目的は、ICT製品のサイバー攻撃に対する復元力とセキュリティを最高水準にすることです。同法ではICT製品を、ネットワークおよび情報システムの要素あるいはグループと定義し、将来のサイバーセキュリティスキームが、製品カテゴリー、サイバーセキュリティの要求、参照規格、評価プロトコル(自己評価、第三者評価等)、セキュリティ保証水準を指定するようにしています。この観点から、欧州サイバーセキュリティ法がすでにありながら、サイバーセキュリティに対処するために機械指令を改正することは、ネットワークに接続する機械の製造業者に不透明性を生じる可能性があります。

 

ロボット

機械指令付属書Iは、機械がその機能に相応しく設計製造されることを求め、予測される条件下で実行される操作、調整、保守によって人員に危険が及ばないようにすることを要求しています。また、機械が危険を生じるような異常な使用を妨げるように、設計製造されることも要求しています。この要求はロボットと人間が同じ場所で作業する環境に適用されます。

AGV

半導体製造工場では、無人搬送車(AGV)または有軌道敷無人搬送車(RGV)として分類されるロボットがウェーハキャリアを搬送し、半導体製造装置との間でウェーハキャリアを移載している場合があります。このような工場では機械指令を考慮して、人間と共有するスペースの危険に配慮したロボット(AGVやRGV)の設計製造をしています。機械指令と既存の業界規格(SEMI S17等)がすでに規定した詳細が、かかるロボット(AGVやRGV)に関連した健康および安全の危険を低減するためのガイダンスとして十分に機能していることを、SEMIは確認しています。

 

ユーザーマニュアルのデジタル化と翻訳

SEMI会員各社は、ユーザーマニュアル(機械指令付属書Iの「Original Instructions」)をEUの公用語のひとつで提供することに何ら問題はないが、それを機械が上市されるEU加盟国の言語に翻訳することは問題となる場合があると報告しています。機械のユーザーから翻訳されたマニュアルが不明瞭であると言われる場合があるのです。同様に重要なことは、ユーザーマニュアルを複数のEU言語に翻訳することは、この業界にとって重大なコスト要因となるという点です。SEMI会員企業は英語版のデジタル化したユーザーマニュアルに大きな利点を見出しています。機械の製造業者にとっても使用者にとっても莫大な利益となるのです。機械が設置後にアップデートされる場合、製造業者はデジタルマニュアルをオンラインで提示するか、使用者に直接送信すれば、いかなる時でも容易に参照することができます。

最終使用者にデジタルマニュアルを提供することによって、半導体製造装置サプライヤーは時間を節約すると同時にコスト、マニュアルの誤り、環境負荷も減ります。デジタルマニュアルなら、執筆者ならびに当該技術専門家は、迅速かつ容易にマニュアルを改正することができます。機械の使用者にとっては、デジタルマニュアルであれば、文書の検索が短時間かつ容易にできるようになります。SEMI会員企業は英語のデジタルマニュアルを好みます。半導体製造装置に搭載されるソフトウェアは英語であり、操作トレーニングも英語で提供されるからです。

要約すると、SEMI会員企業は現行の機械指令が依然として目的にかなっており、健康および安全に関する法的な齟齬はないと確信しています。SEMI会員企業はAIアプリケーションを何年も使用していますが、健康および安全上のリスクが生じたことはありません。機械指令は必須健康安全要求事項を提供しますが、技術的にニュートラルであり、製造業者は最先端技術と同調した適合規格を使って指令に適合することができます。極端な改正は不要ですが、SEMI会員企業はデジタルユーザーマニュアルを使用し、翻訳の要求を軽減することを全面的に支持します。これは機械の使用者と製造業者の双方が合意できるものです。

 

初出 SEMI Global Update 2019年9月16日号