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コロナウイルス検査の最前線にあるMEMS

アリッサ・M・フィッツジェラルド博士 2020年4月6日

イメージ写真

2020年3月21日土曜日、米食品医薬品局(FDA)は、カリフォルニア州の企業Cepheidに対し、新型コロナウイルス(COVID-19)の原因ウイルスであるSARS-CoV-2を迅速に検出できる新たな検査の販売を緊急承認しました。Cepheidの「Xpert®Xpress」は、サンプル準備の実践時間が1分未満で、わずか45分で検査結果が分かるSARS-CoV-2検査です。

 

Cepheidは、1996年にKurt Petersen氏やM. Allen Northrup氏を含む7名によって設立され、マイクロ流体チップベースのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析装置を商品化した企業としてMEMSコミュニティでよく知られています。同社が生物学的脅威に迅速に対応したのは今回が初めてではありません。2001年の米同時多発テロ事件後、同社は米郵政公社に迅速な炭疽菌検出技術を提供した最初の企業であり、現在も提供を続けています。

 

世界保健機関(WHO)米疾病予防管理センター(CDC)のプロトコルによると、すべてのCOVID-19試験プロトコルの要となるのは、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)分析技術です。簡単に説明すると、PCRは、患者のスワブ検体中のDNAを増幅するために熱サイクルを利用し、蛍光光学検出でウイルスの特異的DNAを検索する装置です。この検査では、まずウイルスのゲノムを知る必要があります。SARS-CoV-2の全ゲノム配列を決定するという重要な研究は、2020年1月10日に中国の科学者によって初めて公表されました

 

従来のPCR装置は、結果が出るまでの熱サイクルに何時間もかかりますが、MEMSベースのPCRシステムは、従来のものよりはるかに早く結果を出せます。熱質量がごくわずかなスケールヒーターと反応炉により、非常に高速な冷熱サイクルが実現し、数分で結果を出すことができます。

 

図1

図1
(左)Northrup氏らが開発し、Cepheidにライセンス供与された初のMEMSシリコンPCRチップ
(右)Cepheidの検査カートリッジ
出典:1993年に横浜の学会でNorthrup氏らが発表した論文「DNA amplification in a microfabricated reaction chamber(微細加工された反応炉内でのDNA増幅)」の924~926ページ

 

MEMSベースのPCRシステムに関する研究は、1990年代初頭から着実に続いています。現在、研究者らは、特にポイントオブケア(臨床現場即時検査)用途向けに、高度に統合された低コストのシステム開発に注力しています。最近の研究の一例として、韓国のETRIとGenesystemのチームが、ポリイミドチャンバーやマイクロヒーター、光学読取用統合CMOS検出器を備えた低コストのハンドヘルドPCRシステムのプロトタイプを開発しました(図2)。

 

図2

図2
(左)ポータブルPCRのプロトタイプにおけるチャンバー、加熱モジュール、統合光学検出器の断面図
(右)統合検査カートリッジ
出典:2019年にベルリンの学会で発表された論文「A Handheld and Battery-Powered Realtime Microfluidic PCR Amplification Device(ハンドヘルド電池駆動リアルタイムマイクロ流体PCR増幅装置)」の1063~1065ページ

 

韓国では、バイオテクノロジー企業の迅速な対応と新たなドライブスルー検査場の構築が、COVID-19の発生の特定と対策の実施に役立ちしました。Cepheidの検査も同様に効果的であることが期待されています。

 

重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)、現在のCOVID-19の蔓延により、MEMS技術によって迅速な検査が可能なPCR検査機は、ウイルスの蔓延に対抗する上で必須の医療ツールになってきています。開発が続けば、こういった重要な機器のコストも低減できるため、近い将来すべての医院にPCR装置が設置されることも期待できます。

 

Antoine Amade

Alissa M. Fitzgerald博士は、2003年にカリフォルニア州バーリンゲームを拠点とするMEMSおよびセンサーソリューション企業A.M. Fitzgerald & Associates, LLC(AMFitzgerald)を設立し、MEMSの設計・製造・製品開発において25年以上のエンジニアリング経験を有しています

 

AMFitzgerald設立前は、NASA(米航空宇宙局)ジェット推進研究所やOrbital Sciences Corporation、Sigpro、現在はSiemensに合併されたSensant Corporationに勤めました。Fitzgerald博士はMITで学士号と修士号を、スタンフォード大学で博士号をそれぞれ取得しています。また、多くの機関誌を発表しており、8件の特許を取得しています。2008年から2014年までMEMS Industry Group(MIG)の運営審議会に属し、2013年にはMIGの功労者に選出されました。現在はRigetti ComputingとTransducer Research Foundationの役員も務めています。

 

AMFitzgeraldは、SEMIの戦略的提携パートナーであるMEMS & Sensors Industry Group(MSIG)の会員を長期にわたって務めています。

 

AMFitzgeraldのウェブサイト
https://www.amfitzgerald.com/

 

図2