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電子産業のサプライチェーンにおける技術革新とコストダウンを

エグゼクティブが討論

ISS 2014レポート

SEMI Industry Strategy Symposiumの最終日、1月15日に行われたエグゼクティブパネルディスカッションで、電子産業サプライチェーンの今後の技術革新を何が推進するかについて、多彩な見解が披露されました。技術需要と製造効率こそが弛まぬ技術革新の原動力だとする意見がある一方、サプライチェーンのコストダウンへの集中は過剰であり、価値提案を放棄しているとの声も聞かれました。

VLSI Research会長 ダン・ハッチソン氏の司会で繰り広げられた幅広い議論の中で、こうした見解についての意見や実例は、新しいデバイス構造、リソグラフィ、さらには450mmウェーハ移行へと展開しました。

Nvidia Corporationのテクノロジー/ファウンドリオペレーション担当副社長 ジョン・チェン氏は、コンシューマ市場は価格に敏感なため、値ごろ感が大切だと述べました。人々は高機能で相互にインタフェースがよい電子ガジェットを欲しがりますが、ユーザーの圧倒的多数は若者であり、価格が非常に重要になるのです。

チェン氏は、業界が初期から真の意味で協力できるなら、コンカレントエンジニアリングによる無駄や重複の解消が可能だと言います。その場合、トータルコストを削減し、全員の利益を増大することにつながるでしょう。

チェン氏は「ベンダーを絞り上げる」効果を信じていませんが、サプライループの中に無駄はまだ存在すると述べました。チェン氏は、一方向に連鎖した直線的な関係を意味する「サプライチェーン」よりも、参加者が一緒に協力しあう「サプライループ」という表現で思考することを好みます。

チェン氏は「サプライループの中では、他社を出し抜くことが難しくなります。参加企業はどこも大変有能であり、唯一の方法は、パイ全体を大きくして、自分の分け前を増やすことなのです。」

チェン氏の考えでは、この種の協力が、困難な技術的要求と変化の増大が盛らす複雑性への対応には不可欠です。その一例として、20nm半導体デバイスの製造技術を採用するにあたって、業界が直面する3つの不連続性をあげました。

最初のものは好ましい不連続性 ― 3Dトランジスタ、つまりFinFETの導入です。こうした新たなデバイス構造では、ゲートのチャンネル制御性が高く、リーク電流が減少するので、消費電力が削減され、コンシューマ機器のバッテリー寿命を大幅に延長することができます。チェン氏は、このような革新的設計と、その製造プロセス技術なくして、飛躍的な性能向上を達成することはできないと述べました。

2番目の不連続性は、193nmリソグラフィの終焉に伴って発生します。マルチプルパターニングが必要になる時点です。20nmでは、マスクステップ数が15~20%増加しました。チェン氏はマルチプルパターニングを「考えのない力ずくのもの」と見なしています。これによりウェーハコストは上昇し、歩留りにも影響がおよび、そのどちらの結果も、ダイコストに好ましくない不連続性をもたらすことになります。

3番目の不連続性が、ウェーハサイズです。チェン氏は、業界はすでに450mmウェーハを必要としていると主張します。業界が大口径化をするときは、これまで常にその他の技術革新が同時に起こってきたことを、チェン氏は指摘しました。こうした過去の経緯に基づいて、チェン氏は450mm技術開発と一緒に新たな技術革新があることを予期しています。

Applied Materialsの取締役会会長マイク・スプリンター氏は、「モノのインターネット(IoT)」とパーベイシブ・コンピューティングが創出する半導体需要について、楽観的な見通しを提供しました。IoTとパーベイシブ・コンピューティングは、相互に接続された大量のセンサおよびコンピュータを示すもので、これにより社会が直面している複雑なビジネス、ヘルスケア、教育問題にも対応できると、スプリンター氏は期待します。

パーベイシブ・コンピューティングに影響するサブトレンドとしてあげられるのが、移動性とパーソナルデバイスが発信する大量情報の処理です。これから、いつでもどこでも利用可能となれば、膨大なデータが生み出されることになります。この急速な拡大からして、スプリンター氏は、必要となってくるデータ処理能力と記憶量が過小に見積もられていると考えています。そして、私たちが前例のない需要の拡大と直面していることを強調するため、他の製品の普及率との比較を示しました。テレビは5千万人のユーザーを獲得するまで40年を要しましたが、フェイスブックは2年しかかからず、今やアプリは数週間で5千万ユーザーを獲得しているとスプリンター氏は述べました。そのため、データセンターの増加率は高まり、私たちが求める性能もより高いものとなるでしょう。データセンターの外では、消費電力とコストの低減が求められることになります。

最高の価値のあるテクノロジーは、性能をアップし、消費電力を下げ、コストを下げるものです。そしてこれこそが、業界が研究開発の対象と優先順位を決めるためのモノサシとすべきものだ、とスプリンター氏は考えます。

スプリンター氏は、業界が5nmまで微細化を継続することについては確信しています。彼によると、リソグラフィは現在では、本質的に「コスト問題」であり、もはや実現性の問題ではありません。なぜなら、プレシジョン・マテリアル・エンジニアリング等の別の手法もあるからです。

スプリンター氏は、「私たちは、1970年代以降、不揮発性メモリの登場、DRAMの登場、ゲート電極のアルミからシリコンへの変更を業界が経験したときは、いつもこのような技術革新に対する需要が見られました。現在の私たちも同様な環境にあるのです。フラッシュメモリは驚くほどの進歩をしました。それでも私たちは、新しいDRAMやロジックデバイスの3D技術を必要としているのです」と述べました。

装置メーカー各社では、生産性向上、エンジニアリング、統合、海外生産により、非常に効率化が進んでいます。スプリンター氏は、効率化について業界は限界に到達しており、これ以上は研究開発の大幅なトレードオフなしには無理だと考えています。技術革新への投資は、能力、性能、コストを基準として評価すべきだとも述べました。

450mmについて、スプリンター氏は、450mmで検討されている技術変更は、業界が研究開発費を集中さえすれば、300mmではるかに容易に達成できると言います。さらに、スプリンター氏はメモリメーカーの姿勢を心配しています。プロセスされるウェーハの大半がメモリ製品のものであり、メモリメーカーが450mmに参加しないとなると、450mm時代を支えるだけの十分なボリュームが得られないからです。

「技術革新はその需要があるところで発生します。私はこれからの10年から15年にワクワクしています。ただひとつ限界があるとするなら、それは若い人たちをこの業界に確実に呼び込めるかということです。」

パネルディスカッションの司会をするダン・ハッチソン氏の質問に答えるかたちで、マイク・スプリンター氏はISSの中でこれに先立って主張された、統合や大型合併で誕生するメガサプライヤは、破綻しないだけの大きさになるが、技術革新を生むには大きすぎるという見解に反論しました。スプリンター氏は、東京エレクトロンとApplied Materialsの技術者が一緒になり、異なるが補い合う能力を共有できたときに、技術革新の火花が散る可能性について非常に楽観的であると述べました。スプリンター氏は、Applied MaterialsがVarianを買収したときに生じた有益なコラボレーションを示し、東京エレクトロンと合体した際にも、新しい組織は本物のコラボレーションを活用し、研究開発費を技術革新に集中させることができるだろうとの見解を披露しました。

ニコン副社長執行役員 精機カンパニープレジデントの牛田一雄氏は、リソグラフィは、長きにわたりトランジスタ一個あたりのコストを下げ、ムーアの法則を支えてきたと語りました。しかし、露光光源の短波長化やNAの拡大では、これも限界に達しつつあります。EUVLにはコストがかかる課題が山積していることから、ニコンはウェーハの大口径化は避けられないと考えています。200mmから300mmへの移行中に、光リソグラフィの性能は4倍の向上をしました。

牛田氏はニコンは顧客をサポートするため、投資回収は長期的に見ていると述べました。牛田氏はこの状況をBoeing社の787開発投資と比較しましたが、同社は回収に20年程度を要すると思われます。

牛田氏はまた、450mmが300mmに対抗するには150枚/時のスループットが必要と発言し、そして業界内での同時進行が、開発費の回収時間を短縮するためには不可欠であると語りました。

Brewer Science社長兼創業者のテリー・ブリューワー氏は、根強く強調されつづけるコスト削減を嘆きました。これは業界の会話でいつも聞かれることです。ブリューワー氏が恐れているのは、この業界がテクノロジーの推進者として、真の技術革新からしだいに遠ざかってしまうことです。その前に話題となった、将来のタレントのリクルートという業界のニーズについて、ブリューワー氏は、コストにばかりにフォーカスしていては、若い技術者が製造技術革新に胸が躍ることもなくなってしまうと述べました。

ブリューワー氏は、製造サプライチェーンがコスト削減を技術革新の主たる利益と位置づけるなら、その価値が減少するだろうと警告しました。ブリューワー氏は「かつては、ムーアの法則には大変な価値がありました。チップがエレクトロニクスにおける主たる価値提案だったからです」と述べ、半導体製造は、「主流」の価値としては、AppleやGoogleが作り出すものに取って代わられようとしていることを示唆しました。

ブリューワー氏は半導体業界の思考回路をAppleと比較して「スティーブ・ジョブズは、誰もがコストを下げようとしているときに、800ドルの電話を世に出しました。Appleが勝利したのは、より優れた価値提案ができたからです」と述べました。

ブリューワー氏は、450mm移行の産業ロードマップでは、EUVリソグラフィがコストの問題で遅延または排除されるだろうと示唆しました。これとは対照的に、最新の2つのノードは、主に化学工学と材料技術革新によって導かれましたものです。

パネルディスカッションは、技術革新とコラボレーションは密接に関係した活動であり、また統合が進むサプライチェーン環境の中で業界が持続するためには、価値に根差した技術革新が必要であるというコンセンサスをもって結論としました。

(初出 SEMI Global Update 2014年2月号)