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マリア・ベトラーノ 2020年2月12日

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フィンランドVTT技術研究センター(VTT)は高い目標を掲げています。世界的な研究開発企業として、VTTは環境破壊や食糧不足などの国際的な課題への取り組みに役立つバイオインターフェース/生分解性フレキシブルハイブリッドエレクトロニクス(FHE)デバイスの製造に注力しています。

2月24日から27日にカリフォルニア州サンノゼのDoubleTree by Hiltonで開催されるFLEX | MEMS & Sensors Technical Congress (MSTC) 2020で、25日に基調講演「Beyond Flexible Hybrid Electronics: Biodegradable Electronics and Interfacing Bio+Electronics」を行うVTTのプレジデント兼CEOのAntti Vasara博士に、SEMIのMaria Vetranoがインタビューを行いました。

 

SEMI:ボディインターフェースエレクトロニクスとはどういったものですか。また、バイオインターフェース/生分解性エレクトロニクスに対するビジョンを伺えますか。

Vasara:ボディインターフェースエレクトロニクスは何十年も前から存在しています。1970年代に開発されたワイヤレス心拍数モニターがその好例です。コンパクトで安価なウェアラブルデバイスによる継続的な心臓モニタリングは広く利用できる技術です。一方、コレステロール値やバイオマーカーのような他の身体的パラメーターは、医師が診察する際にその都度診断されるものです。症状が現れる前に、複数の測定値を用いて基準値を定める方が実際にははるかに効果的です。

そこで登場するのがバイオインターフェーシングです。バイオインターフェースデバイスは、汗や息、血液、尿などの複雑な生体成分を継続的に測定・分析します。例えば、汗をモニタリングするスマートパッチは、汗で湿った部位でも機能します。また、センサーから抽出したサンプルデータの伝送管理、コンタミネーション制御、測定後のサンプル廃棄などの課題を克服しています。

FHEは、原則として適切な成分データを抽出する、ウェアラブルな汗分析パッチの理想的なフォームファクターですが、フレキシブル回路基板は想定外のバイオマトリクスには対処できません。ゆえに、VTTのミッションは、生体系とのインターフェースや生分解性を備えたFHEデバイスに必要なアップスケーリングプロセスのノウハウを予測・開発することです。

当社は生分解性エレクトロニクスにも注力しています。環境保護に取り組むエンドユーザーやメーカーは、ラベルやステッカーのような形態のエネルギー自立型IoTセンサーの生分解性バージョンを求めているからです。一般的には、パッケージングやロジスティクス、環境モニタリング、医療診断アプリケーションに使われるセンサーが普及しています。しかしながら、これらのセンサーの寿命は数日、数週間、もしくは数カ月ですが、生分解性でないと廃棄されることになります。

SEMI:VTTはどういったアプローチでバイオインターフェース/生分解性エレクトロニクスを開発されていますか。

 

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VTTのRtoR印刷によるセンサーアレイ

Vasara:フィンランドの公的資金提供機関Business Finlandが出資するプロジェクト「ECOtronics」では、再生可能資源を利用した、リサイクルや堆肥化が可能な電子機器や光学機器の開発にパートナーと協力して取り組んでいます。例えば、紙やボール紙、VTT自社開発のナノセルロースフィルムやバイオポリマーフィルムなどの基材を使って開発された環境モニタリングや皮膚パッチ用のデバイスは、リサイクルや自然分解が容易です。当社はデバイス回路をロールツーロール(RtoR)印刷で生成しています。デバイスあたりの非生分解性廃棄物の全体的なフットプリントを削減するために、ベアダイコンポーネント接合に向けてアセンブリープロセスを最適化しました。

SEMI:最も有望なユースケースとその理由について伺えますか。

Vasara:大量の廃棄物を排出する使い捨て検査器具の代表例として、デジタル妊娠検査キットがあります。このキットは、マイクロプロセッサーやコイン型電池2個、液晶ディスプレイ、LED光源、フォトダイオードを備えた硬質な回路基板と、それを梱包する大きなプラスチックパッケージで成り立っています。こういったキットの材料とバッテリー容量は、何百回もの妊娠検査を行えるレベルのもので、使い捨てにしてしまうには過剰なスペックです。

生分解性基板上のプリント回路、ASICやLED光源、フォトダイオード、電源用薄膜電池等のベアダイアセンブリーコンポーネント、生分解性プラスチックのデバイス用パッケージを用いることで、使い捨て検査器具の環境フットプリントを完全に見直すことができます。当社は現在、お客様の従来の検査をエコトロニック(電池不要)なフォームファクターに変えるためのツールボックスを開発中です。

 

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UCバークレーとVTT共同開発の汗センサー

もう1つの刺激的なユースケースは、カリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)のAli Javey博士と当社が共同開発した汗センサーです。電気工学とコンピュータサイエンスの教授でBerkeley Sensor and Actuator Center(BSAC)の共同ディレクターであるJavey博士のチームと協力し、運動中の継続的な汗分析用ウェアラブル電気化学センサーを開発しました。VTTは印刷されたセンサー電極と体液管理・輸送用汗収集マイクロ流体チャネルを備えた、基礎センサープラットフォームを構築しました。UCバークレーのグループは、数時間にわたって汗に含まれているN+イオン、K+イオン、水分のレベルをモニターできる化学的手法を提供しています。電気化学、印刷、パッケージング、マイクロエレクトロニクスなどのさまざまな分野の技術を組み合わせることで、何が達成できるのか楽しみにしています。

 

SEMI:よりフレキシブルなFHEデバイスの開発製造はどのようにして実現するでしょうか。VTTはエコシステムのどの部分に当てはまりますか。

Vasara:多くのFHEデバイスは大規模市場をターゲットとしているため、製造の拡張性が鍵となります。システムのパフォーマンスと信頼性の質を損なわずに、1つのデバイス(作業用プロトタイプ)から少数のデバイス(実現可能性の検討)、数千のデバイス(テスト製造)、数百万のデバイス(大量生産)と拡張していくにはどうすればよいかが課題です。

新たなFHEデバイス開発には高度な製造設備が必須ですが、製造設備は高価です。研究開発と事業化のギャップを埋めるために、当社がRtoR試験印刷ラインを確立したことは非常に貴重です。当社は、大面積のRtoRプロセスとハイブリッドアセンブリーに特に重点を置いた、先進FHEデバイス用の独自の設備をグローバルで提供することができます。このサービスは、開発の初期段階で当社のお客様の高額な設備投資の負担を軽減し、プロトタイプから大量量産までの開発過程でお客様を導くことができます。

SEMI:デバイスメーカーが成功するために知っておくべきことは他にありますか。

Vasara:私の考えでは、FHEデバイスの成功に必要なファクターは高度な自動化、プロセスの最適化、信頼性の高いサプライチェーン、そしておそらく最も重要なのが、設計者がフレキシブルなハイブリッド回路上のすべての異なる要素の完璧な相互運用性を保証するための明確な基準とルールです。忘れてはならないのは、当社がエレクトロニクスと印刷、生物学、パッケージング、マイクロ流体、射出成形、その他の専門分野との融合を目指していることです。

当社は最近、一連の設計ルールをまとめた、プリンテッドエレクトロニクスおよびハイブリッドエレクトロニクスの製造方法に関する最先端の概要『PrintoCent Handbook』を出版しました。この概要は無料でダウンロードできます。

ダウンロードはこちら
https://www.printocent.net/handbook/

 

FLEX | MEMS & Sensors Technical Congress

SEMI:FLEX|MSTCの参加者にVasaraさんの講演からどのようなことを得てもらいたいですか。

Vasara:マイクロエレクトロニクス、MEMS、印刷、材料、バイオセンサーにおける最新の技術と革新は、FHE分野での真の革新のためのツールボックスを提供してくれます。異なる製造方法とスキルセットを組み合わせるために、複数の技術分野の横断的研究アプローチと大胆な措置がいま必要とされています。理想的な学際チームの構成は以下の通りです。

 

  • ベアダイICアセンブリー用接触パッドの設計方法を知っている印刷技術者
  • 材料表面の生物機能化を実現するプロセス設計において印刷時の熱的・機械的ストレスについて知っている生物学者
  • 酵素バイオ燃料電池駆動の回路を最適化する方法を知っている電子工学技術者

 

私たちの体や飲料水、車、畑、ペット、日用品などに装着されるセンサーの数は確実に増えるでしょう。センサーが何に装着されるにせよ、環境フットプリントができるだけ最小になるよう努めることが大事です。

 

Antti Vasara博士

Antti Vasara博士は2015年からVTTのプレジデント兼CEOを務めています。2000人以上の従業員を擁し、売上高が2億5000万ユーロ(約300億円)を超える同社は、明確なビジョンの下に研究、開発、革新を推進しています。Vasara博士は、欧州研究・技術協会(EARTO)のプレジデント、フィンランドのサービス産業団体Paltaの取締役会会長、 フィンランド最大の通信事業者Elisa Oyjの社外取締役、フィンランド産業連盟EKの取締役でもあります。

Vasara博士は、欧州委員会の産業とイノベーション政策に関する複数の著名なグループや、フィンランドの人工知能(AI)と研究政策に関する複数のグループに携わっています。これまでNokiaやTieto、SmartTrust、McKinsey & Companyなどの民間企業に25年ほど勤めました。キャリアの初期には、光通信の研究者として20以上のピアレビュー論文を執筆し、国際特許を取得しました。Vasara博士は、フィンランドのアールト大学で理学(技術)博士号を取得しています。

VTTのウェブサイト
https://www.vttresearch.com/

FLEX|MSTC は、SEMIの技術コミュニティであるMEMS & Sensors Industry Group(MSIG)とFlexTech協賛のイベントで、MEMS/センサーとフレキシブルエレクトロニクスのサプライチェーンの成長に注力しています。

Maria VetranoはSEMIの広報コンサルタントです。