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紛争鉱物と半導体サプライチェーン

N-Able Group International ロン・ジョーンズ

持続可能性(サステイナビリティ)と企業の社会的責任(CSR)に関する記事が、近年、業界紙をはじめ各種媒体を賑わせています。半導体業界に数十年もの長きにわたり携わってきた者として、半導体業界がCSRの模範的存在となることを願っています。それは半導体業界がテクノロジリーダーとしての地位を確立することでもあります。

5月末、米国上場企業各社は、紛争鉱物に関する初の年次報告を米証券取引委員会(SEC)に提出しました。半導体業界において、直接、間接を問わず製造に関与する上場企業は、ほぼ全社にSECへの報告義務があります。これには、ファブレスおよびIDMの半導体企業、ファウンドリ、OSATが含まれます。半導体製造では、前工程および組立工程で金、スズ、タンタル、タングステンが使用されます。したがって、完成したICにはこれらの紛争鉱物が含まれており、SECへの報告が必要となります。ほとんどの企業は鉱物の出所を十分に特定できておらず、明示的または黙示的に「紛争との関連判定不能」として報告しています。

紛争鉱物の問題に関して、ほとんどの企業はSECへの報告義務への対処に追われており、どのようにすれば紛争非関与を達成できるかという具体的な方法の検討まで手が回っていません。個人的な見解として、SECへの報告義務は、企業のコンプライアンス徹底の大きな動機づけにはならないと考えています。他の例に漏れず、企業を動かす最も大きな力は損益への影響です。社会的責任を取る大企業は、購入する製品の紛争非関与を求める条項を、購買契約に追加するようになっています。この要求は、半導体企業、ファウンドリ、OSAT、そして材料サプライヤへとサプライチェーンの上流から下流へと連鎖しています。紛争鉱物を使用した製品の購入を顧客がやめれば、企業は紛争非関与な製品を出荷することの重要性を、より強く認識するようになるでしょう。つまり、減収こそが、明確に定量化された判断基準となるわけです。

SECへの第1回の報告期限が過ぎ、これまで報告書類の作成に追われていた企業も、紛争非関与を達成、あるいは少なくとも紛争鉱物を使用した製品の割合を削減する方法を本格的に検討できる余裕が出てきたところでしょう。

各社がさらに賢く、連携し、協力すれば、半導体業界の性質からして、その大半が1~2年で紛争非関与を達成できる可能性もあります。その鍵となるのが、直接取引のある金、スズ、タンタル、タングステンの材料ベンダーが一日も早く紛争非関与を達成することです。半導体産業自体は比較的大規模な業界ですが、紛争鉱物のほとんどは比較的少数のサプライヤから供給を受けているのが現状です。

紛争鉱物のコンプライアンスに関する報告ツールとしては、主にEICC-GeSI帳票(紛争鉱物報告テンプレート: CMRT)が使われてきました。このテンプレートを精錬所が材料ベンダーに提出し、材料ベンダーがメーカーに提出するという形でサプライチェーンの階層を上がっていき、最終的にBoeing 767といった製品のコンプライアンスを達成します。しかしこの方法は、階層を上がるにつれて精錬所ID以外の詳細情報がすべて失われてしまうという大きな短所があります。つまり、サプライチェーンの最上位の階層にいる企業が任意の階層まで情報を掘りさげる仕組みが用意されていないのです。サプライチェーン上流の企業は直接取引するサプライヤへ問い合わせ、そのサプライやはその次のサプライヤに問い合わせ、そこがまた次に問い合わせるという繰り返しを、サプライチェーンをたどって続ける必要があります。半導体業界もこの方式をそのまま取り入れています。ファブレス企業はファウンドリおよびOSATに問い合わせ、ファウンドリやOSATは直接取引する材料サプライヤに問い合わせるという図式です。

しかし半導体業界ではサプライチェーンの階層が精錬所から数えて2階層程度と非常に浅く、直接取引する材料サプライヤの数も業界全体で非常に限られています。このため、もっと違ったアプローチを導入すれば、はるかに短期間でコンプライアンスを達成できます。それが、先にも述べたように直接取引する材料サプライヤになるべく早く紛争非関与を達成してもらうというアプローチです。前工程および組立工程で使用する材料が完全に紛争非関与となれば、製造されるICも紛争非関与となり、すべての問題が解決します。サプライチェーンの階層が深い業界の企業に比べれば、半導体業界にとって紛争鉱物の問題ははるかに単純です。

半導体は世界全体のエレクトロニクス市場の約25%を占めています。近い将来、半導体業界が紛争非関与を達成できれば、世界のエレクトロニクス産業全体でコンプライアンスが進むことになるでしょう。

このことは、コンゴ民主共和国(DRC)とその周辺諸国から紛争鉱物の購入を継続することと矛盾しません。なぜなら、本質的な目標はこれらの国々からの調達をやめることではなく、紛争地域および高リスク地域からの調達をやめ、現地経済への貢献を続けることにあるからです。

(初出 SEMI Global Update 2014年7月号、抄訳)