downloadGroupGroupnoun_press release_995423_000000 copyGroupnoun_Feed_96767_000000Group 19noun_pictures_1817522_000000Member company iconResource item iconStore item iconGroup 19Group 19noun_Photo_2085192_000000 Copynoun_presentation_2096081_000000Group 19Group Copy 7noun_webinar_692730_000000Path
メインコンテンツに移動

表面光起電力法によるシリコンウェーハの少数キャリア拡散長測定のための試料の前処理法の紹介

 

SEMIスタンダード
シリコンウェーハ日本地区技術委員会
ジャパン・テストメソッド・タスクフォース
リーダー 竹田隆二 (グローバルウェーハズ・ジャパン(株))
メンバー 宮下守也 (グローバルウェーハズ・ジャパン(株))

2019年3月13日

 

半導体プロセス前工程においてウェーハの汚染評価方法の一つにSPV(Surface Photovoltage)法があります。今回出版に至ったSEMI M88-1018 “Practice for Sample Preparation Methods for Measuring Minority Carrier Diffusion Length in Silicon Wafers by Surface Photovoltage Methods”(表面光起電力法によるシリコンウェーハの少数キャリア拡散長測定のための試料の前処理法)はその測定前の試料準備に関するものです。

ジャパン・テストメソッド・タスクフォースでは、JEITA (電子情報技術産業協会)で策定された日本発の規格をSEMI規格に移行する活動を行っています。SEMI M88-1018の開発もその活動の一環として行われました。

 

JEITA規格のSEMI規格への移行の背景

SEMIでは、2014年より、シリコンウェーハに関するJEITA規格のSEMIへの移行作業を進めています。(詳しくはSEMI通信2015年10月号を参照ください。1)

1958年に、JEITAに、「半導体用シリコン原料の国産化を促進し、かつ性能の向上を図るため、必要な共同研究および調査を実施する」ことを目的として、シリコン技術専門委員会が設立され、そこに半導体デバイスメーカー、シリコンウェーハメーカーを中心とするシリコンウェーハの専門家が集まり、米国のNBS(現NIST : National Institute of Standard Technology アメリカ国立標準技術研究所)、SEMI、ドイツのDIN(Deutsches Institut für Normung: ドイツ工業規格)との協力の元、数々の規格を制定してきました。これら規格は半導体産業のサプライチェーンの基礎としてB to Bの取引において活用され、そのうちいくつかは、SEMIとの協力の元、SEMI規格化することにより国際規格として発信され、全世界で用いられています。

しかし、2013年当時の半導体デバイス業界の構造変化に伴い、日本の半導体デバイスメーカーの多くは、ITRS (International Technology Roadmap for Semiconductors:国際半導体技術ロードマップ)に則った微細化を主導原理とした半導体デバイス開発・製造から手を引くこととなり、その結果、JEITA半導体技術専門委員会を2014年3月に廃止、シリコンウェーハに関するJEITAシリコンウェーハ材料規格を2016年3月に廃止する、との決定がJEITAにおいてなされました。このため、シリコンウェーハに関する既存のJEITA規格の維持および管理ができなくなる事態となりました。JEITA規格は実際に国内の多くの企業において購買仕様書等で引用されており、規格の廃止はサプライチェーンに問題を生じさせる可能性があります。

そこで、SEMI規格化されていないJEITA規格を早急にSEMI規格化することにより、その内容を残して行くことが急務となりました。このJEITA規格をSEMI規格化する作業は、旧JEITAシリコン規格管理小委員会の委員がSEMIメンバーとなり、活動してきました。なお、JEITA規格のSEMI規格化に当たっては、当該規格の著作権の使用に関してSEMIとJEITAの間で正式な合意を得ております。

SEMI規格に移行するものとして、8件のJEITA規格が対象とされ、SEMI規格の新規制定あるいは改訂をすることになりました。本稿では、最近規格化された1件を次のとおり紹介します。

 

新規格紹介: SEMI M88-1018 “Practice for Sample Preparation Methods for Measuring Minority Carrier Diffusion Length in Silicon Wafers by Surface Photovoltage Methods” (表面光起電力法によるシリコンウェーハの少数キャリア拡散長測定のための試料の前処理法)

本規格は、2005年7月に制定されたJEITA規格EM-3509 「表面起電力法によるシリコンウェーハの少数キャリア拡散長測定のための試料の前処理法」をSEMI規格に移行したものです。当時の背景として、半導体素子の微細化および高集積化に伴い、素子製造プロセスおよび基板材料であるシリコンウェーハ中の金属汚染の低減が求められていましたが、これは現在でも変わらない課題でもあります。シリコンウェーハ内部の金属汚染を評価する方法のひとつとして、SPV法による少数キャリア拡散長測定が広く利用されていました。

しかし、SPV法は試料の表面状態の影響を受けやすく、測定前の試料の表面処理がしばしば必要になること、また、表面処理後に経時変化し、表面が安定するまで試料を放置しなければならない、などの問題があり、放置時間を短縮した安定的な前処理法の標準化が求められていました。そのため、2003年にJEITAのウェーハ測定標準化専門委員会に、SPV法の前処理標準化ワーキンググループが設置され、次の3段階の活動を経て標準化を行うことが計画されました。

(1) ワーキンググループ参加機関に対するアンケートとテストによる従来の前処理法の問題点の洗い出し。
(2) 前処理後の放置時間を短縮するための方法の検討。
(3) (2)の検討で得られた方法のラウンドロビンを行い、機関間のバラツキを把握。

これらの活動に基づいて規格案が作成され、書面審議を経て2005年7月に規格が制定されました。この規格作成のために行った上記(1)(2)(3)の活動結果は、JEITA規格に付随した解説として発行されており、この解説部分は、SEMIスタンダードのAuxiliary Information “Round‐Robin Testing of Sample Preparation Methods for Minority Carrier Diffusion Length Measurements by Surface Photovoltage Methods” として発行が予定されています。

特に、ラウンドロビンには、5つの機関が参画して、規格作成のための貴重なデータが得られています。その内の一つの結果として、図1に示すように、本規格として提案された二段階の熱処理を前処理として行うことでSPV測定値のバラツキが低減される結果が得られており、本規格の前処理方法の有効性が確認されました。 

図1

図1. Auxiliary Information中の Figure 4: Inter-laboratory Variance in Minority Carrier Diffusion Lengths in the As-Received and after HF + 2-Step Annealing

 

SEMI M88-1018の主な内容は、前処理方法の手順、処理する環境、使用する薬品、装置、記録事項、安全に関する注意などからなります。前処理方法は、試料であるシリコンウェーハのp型とn型で異なることが特徴です。

以上のように本規格は、本測定前の試料の前処理に関するもので、一見地味なものでありますが、測定結果は、試料の前処理手法に大きく依存することが多く、その典型的な例といえるものです。SPV法は、シリコンウェーハの内部の金属汚染を評価する手法として、現在でも幅広く使われているものであり、本規格の重要性は、増々高まっているといっていいでしょう。

今後も、SEMIスタンダード シリコンウェーハ日本地区技術委員会ジャパンテストメソッドタスクフォースでは、残りのJEITA規格のSEMI規格への移行として、

・JEITA EM-3511 “Method for measuring Fe concentration in p-type silicon wafers by using surface photovoltage method” (表面光起電力法を利用したp型シリコンウェーハ中のFe濃度測定法)、を元にしたSEMI規格の改訂、

・JEITA EM-3506 “The measurement method for recombination lifetime of the epilayer of the silicon epitaxial wafer (p/p+, n/n+) by the short wavelength excitation microwave photoconductive decay method” (低波長励起マイクロ波光導電減衰法によるシリコンエピタキシャルウェーハ (p/p+, n/n+)のエピ層の再結合ライフタイム測定方法)に対応したSEMI規格の制定などを行っていきます。

 


SEMI通信 2015年10月号: JEITA規格のSEMI規格への移行について

(注:当時のタイトル)
元東京大学特任研究員, SEMI Japan Regional Standard Committee Co-Chair & Silicon Wafer Committee Co-Chair

河合 直行


本規格のご購入
SEMIスタンダードは、次のサイトにてご注文を受け付けております。

http://www1.semi.org/jp/Standards/StandardsPublications

 

SEMIスタンダード活動への参加
SEMIスタンダード開発活動には以下のURLよりスタンダードプログラム委員登録を行うことによって、どなたでも参加していただけます。
http://www1.semi.org/jp/Standards/CommiteeInfo/ctr_028435

 

本件に関する問い合わせ先:
SEMIジャパン スタンダード&EHS部 コリンズ純子 (jcollins@semi.org