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ベンチャーキャピタリストが注目する半導体技術の他分野応用

SEMI ポーラ・ドー

投資家が探し求めているのは、これまで同様に、半導体製造における高価値な諸問題を解決し、あるいは、半導体技術を医療や環境など他分野における破壊的技術へと導く、卓越した技術だ――これが、SEMICON West 2014のSilicon Innovation Forumに集まった有力ベンチャーキャピタリストたちの声でした(リンク先から講演およびパネルディスカッションの録画をご覧いただけます)。

「金融機関系投資家は、ハードウェアからモバイルゲームアプリのようなITやIoTへと投資先を移し、事業会社系投資家の投資先はハードウェアビジネスのより早い段階へとシフトしています」Semiconductor Advisorsの社長、ロバート・メア氏はこう述べています。

SMC Panel PhotoTallwood Venturesゼネラルパートナーのジョージ・パブロフ氏もこれに同意し、自身の金融投資会社がハードウェアへの投資を減らしていると述べました。技術が成熟した結果、チャンスは減り、マージンも出口価格も減少しているためだといいます。「アプリメーカーは1ショット当たり1ドルの利益があり、これはチップメーカーを上回る」と、別のベンチャーキャピタリストも率直な声を漏らしています。

つまり、半導体への投資では、リスクを低減するための創造的戦略が必要になるということです。例えば、あるスタートアップに対して、その顧客とサプライヤを含めた支援に関心を持った事業会社系投資会社3社が、最近行った取引があります。「資本家を話し合いの場に参加させ、企業利益の最優先を保証することが重要です」とパブロフ氏は指摘します。これには、首脳陣の組み替えや役員会の再編といった厳しい決断も伴います。

金融機関系投資家も、経験豊富なチームを投入して、企業が必要とする戦略パートナーを見つけ出して紹介できるなら、早期から関与するかもしれません。

事業会社系投資家は、リスクを低減するために初期段階の企業に関与することが増えており、ときには競合他社との協力すらありえます。Intel Capitalディレクターのショーン・ドイル氏は次のように述べています。「投資で協力しあうことが増えており、将来はさらに増えるでしょう。対象が大企業でも小企業でも、基本的な業界利益が一致する場合は、問題の大きさに応じて協力します。事業会社系投資家を当初から関与させるべきだと考える金融機関系投資家の呼びかけは大きくなる一方です」。

投資の前に必要な対策も増えています。Band of Angelsの会員であるKurt Petersen氏も、3名の会員がエンジェル投資の準備が整う前から2年間にわたって、ある企業を指導していることに言及しました。実際に、MEMS企業が、ファウンドリへの依頼を引き受けてもらうために、事業会社系投資家を必要とする場合もあるとのことです。

「当社が昨年行った投資の半分以上は、他の事業会社系投資家との共同投資でした」Applied Venturesゼネラルマネージャのアイリーン・タンガル氏はこう語り、IntelおよびSamsungと共同で投資した案件で得られた顧客の声は特に有益だったと付け加えました。

ベンチャーキャピタリストが今注目している半導体スタートアップ企業

Dr. Bob Metcalfeそうなると、こうした投資家たちが半導体分野でどんなところに投資しているのかという疑問が浮かび上がります。主な投資先は、次世代の半導体製造課題を解決できる可能性を秘めた技術、あるいは従来の半導体技術を、医療から農業まで新しい分野に拡張する事業です。

Samsung、Intel、Applied Materialsの各社ベンチャー部門に所属する事業会社系投資家は全員、現在最も注目している投資対象として、革新的な素材に関するソリューションを挙げています。Inpriaの高解像度金属酸化物フォトレジスト、SBA Materialsの液相で自己集合する有孔Low-k誘電体、Voltaix(最近、Air Liquideによって買収)のゲルマニウムなどの化学物質に対する独自の前駆気体などが代表です。

「当社は、装置と材料に対する投資を増やしています。技術進歩は信じられないほど難しくなっているからです」と、Samsung Ventures InvestmentシニアディレクターのDong-Su Kim氏は述べました。

ベンチャーキャピタリストは、シリコン技術を他分野に応用することに幅広い投資機会を見出しています。特に、既存の技術を再利用することによって、製品化までの時間短縮と開発コストの低減が可能になる場合です。

DCMゼネラルパートナーのピーター・モラン氏は、その好例としてRayVioを引き合いに出しました。RayVioは、滅菌に特化した高出力紫外線LEDを製造しており、コストもパフォーマンスも従来の加湿または加熱方式とは比較にならないほど向上しました。

モラン氏がもうひとつのお気に入りが、バッテリーメーカーのEnovixです。同社は薄膜太陽電池に関する既存の技術を利用し、バッテリー構造そのものを刷新して面積当たり3倍の充電が可能なバッテリーを実現しました。金融機関系のベンチャーキャピタリストとして、DCMは事業会社系投資家と協力しています。

CypressはSunpowerとの経験から得た特定の製造および微細化に関する専門知識をもたらす一方、Intelは最適な製造工場立地をグローバルに特定してきた経験を提供しました。1ドル未満で販売されるデバイスなど以前には考えもしなかったが、今では錠剤が摂取されたかどうかを追跡する経口センサーなど、差別化と大量生産を前提とした低コストのデバイスに注目している、とモラン氏は付け加えています。

「ほとんどの投資機会はシリコン技術を他分野、特に医療分野に拡張することにかかっている」と、タンガル氏も同意し、Applied Ventureの投資事例を挙げました。Oncoscopeの前癌細胞の光学スクリーニングによる一般的な無作為抽出法と比較した生検精度の大幅向上、Twist Bioscienceの大規模な合成遺伝子製造プラットフォーム、MTPV Powerの熱・電気変換チップです。Applied Venturesもまた、IoT(モノのインターネット)の転換期から最大限の価値を獲得する機会を模索しています。移植あるいは体内摂取可能なコーティング材料の供給、またはコーティングサービスがその例です。

MEMS分野では、新しい用途に対応する新種の電気機械構造システムが登場し続けています。ピーターソン氏によると、Chirp Microsystemsの超音波ジェスチャー認識技術、Next Inputの感圧式タッチスクリーン技術、そしてLumedyne Technologiesのまったく新しい高精度慣性センサー技術などが特に注目に値するといいます。

ベンチャーキャピタリストが25社のスタートアップによる発表から2社を選出

一流投資家のパネリストが、Silicon Innovation Forumで選抜されたスタートアップ25社のプレゼンテーションの中から、材料/プロセスの破壊的技術を提供し、共同インフラストラクチャを活用している企業として、2社を選出しました。

Alediaは、8インチシリコン上に成長した同社のマイクロワイヤLEDは、サファイア基板上の薄膜として形成される従来のLEDより2~3倍安価になると主張します。同心円の量子井戸活性層を垂直に成長させた直径1μm以下の多数のピラー構造をとることにより、少ない材料で大きな発光表面積が得られ、MOCVDの処理時間も短くすることができます。ウェーハ上の面積が小さくなるため、シリコン全面を覆うGaN層と比較すると、格子係数と熱膨張係数の不一致を緩和できる可能性もあります。

共同創業者であり、CEO兼社長を務めるジョルジョ・アナニア氏は、同社がマスクの孔を通じて規則的で高品質なピラー構造を形成する方法を見出したと述べ、ルーメン/ワット数はまだ低いが、これは当面の改良目標ではないとしています。グルノーブルのCEAキャンパスに本拠を置く同社は、ピラー構造層のみを形成し、残りの工程についてはウェーハをメインストリームのCMOSファウンドリに送ることを計画しています。

もう一方のAmorphyxは、ディスプレイ用の高速スイッチング、低コストのバックプレーンソリューションを提供します。これは、金属-絶縁物-金属デバイスにおいて、ほぼ完全なアモルファス・サファイア絶縁層による一種のトンネル効果を利用したものです。同社は、台湾のITRIで活動しており、アジア企業3社との生産協力により、2015年には共同生産を開始する予定です。「これにより、400ドルのディスプレイのコストを、100ドルは削減できます」と、CEO兼社長のジョン・ブルワー氏は断言します。

このイベントで投資家向けのプレゼンテーションを行ったスタートアップのなかでは、このほかにMEMSマイクロフォンのスタートアップであるBaker-Callingも目をひきました。同社は、自由に伸縮する独立した4つの三角形のプレートを使用し、通常の静電薄膜よりも膜応力の影響を受けにくくすることで、圧電MEMSマイクロフォンの設計を画期的に簡素化しました。CEOのマット・クロウリー氏は、同社が事業会社系投資家向けに試作品を送付済みであり、ファウンドリでのプロセスを設計中であると報告しています。

マイクロ流体チップによる脱塩技術を紹介したOkeanos TechnologiesのCEO、トニー・フルダキス氏は、従来の逆浸透法に比べて半分のエネルギーで水から塩分を除去できると報告しました。これは容量を小さくすることで反応が向上するためで、同社は電気化学的プロセスによって、微細な流路を通過する際にイオンを除去しています。ただし、各処理で除去される塩分は10%程度に過ぎないため、一定量の水から塩分を完全に除去するためには、複数のセルが必要になるということです。

数年間にわたる助成金を活用して、大学の研究を商業化した事例

Applied Materials、Intel、Samsungの3社のベンチャー部門はいずれも、最近Inpriaに投資しており、次世代フォトレジストの解像度をめぐる主要な問題を同社が解決するかもしれないとして、注目の半導体開発事例として繰り返し言及しています。これまでのフォトレジストの長大に絡み合う高分子を、小さい無機分子に置き換えることによって、エッジが明確になり、7nmおよび10nmにおけるパターン倒れが減少します。CEOのアンドリュー・グレンビル氏は、このフォトレジストのLWRは、10nmのライン&スペースにおいて、従来のポリマー製品の半分ほど(従来の1.5nmに対し0.7nm)だと報告しています。

グレンビル氏は、創立当初の同社がオレゴン州立大学の金属酸化物クラスタ技術開発を進めるにあたって、助成金を活用してきたことを振り返りました。それはNSF/SBIR基金に始まり、オレゴン州のOnamiによる助成金、そして潜在的なユーザーによる共同開発基金まで続きました。Inpria社の材料開発は、当初、Onami大学ネットワークの共有装置、その次にはローレンスパークレー国立研究所のSEMATECHマイクロ露光装置を利用して行われ、その後もimecの共同研究プロジェクトに参加した装置メーカーやカスタマで進められました。こうして、エンジェル投資家やApplied Materials社に認められるまでの技術開発には5年近くを要したのです。

今年になって、Applied Materialsのほかにも、IntelとSamsungも今後の資金提供に加わり、またOregon Angel Fundからも助成金を受けて、半導体に関する経験とつながりがさらに広がりました。グレンビル氏はこう語っています。「当社は2年後までには、金融機関系投資家からも注目されるようになるでしょう。資本効率の高い開発に向かってひたすら資金活用を繰り返しており、その成果は実際の生産が始まる2015年に明らかになります」

SEMICON Westにおける次回のSilicon Innovation Forumは、2015年4月14日に開催されます。また、SEMICON Europa 2014(10月7~9日)では、Silicon Innovation ForumがあるInnovation Villageを開催する予定です。

またSEMICON Japan 2014(12月3~5日)では、投資家が注目するIoT技術のプレイヤーが多数出展する特別展「World of IoT」が開催される他、半導体エコシステムの市場動向を著名アナリストが講演するマーケットフォーラムが開催されます。

(初出 SEMI Global Update 2014年9月号)