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2023-09-07

チップ産業の成長と環境維持のバランス - SEMICON West 2023 パネルディスカッション

SEMICON West 2023では、半導体業界が直面する法規制リスクの増大について専門家によるパネルディスカッションを開催し、このリスクを、サステナビリティ戦略の追求と政策に対する広範な業界協力によっていかに回避するかが議論されました。

パネリストとして、Arkemaフッ素系スペシャリティ事業マネージャーのBen Siegl氏、EMD Electronics持続的研究開発担当ディレクターのLu Gan氏、Glencoe Strategies社長兼創業者のScott Stone氏、東京エレクトロン プロダクトコンプライアンス&アドボカシー担当のColin Brough氏が登壇しました。本イベントは、SEMI Electronic Materials Group(EMG)が企画したものです。

今回のパネルディスカッションは半導体業界に今後の規制の枠組みの基盤となるような包括的な政策提案の検討を呼びかけて締めくくられました。この枠組みの目的は移行スケジュールの明確化、技術イノベーションのニーズの強調、そして経済上の優先事項を犠牲にすることなく、総合的に高い環境パフォーマンスを達成する方法で規制リスクを軽減することです。

 

規制リスク増大の兆候

過去1ヶ月間における世界の平均気温、北大西洋の海面水温、南極の海氷減少量、カナダの山火事の件数はこれまでの記録をことごとく上回りました。

これによって、気候政策をめぐる議論は、専門家による将来予測である気候モデルから実際に発生し悪影響を与えている気候データへと、中心が変わる可能性が高いでしょう。こうしたデータは最新のものであるため、それに対する進歩的な政策立案者の反応や一般市民の政治的反発などによって高まる緊急性は、現行および将来の気候規制の要件には反映されていません。
 

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SEMICON Westの満席の会場で講演する、著者のColin Brough

 

しかし近いうちに、半導体産業が直面する規制リスクは増大し、業界全体のサステナビリティ基準や目標に対する強い結束と明確化が求められるでしょう。

これまでに多くの企業がサステナビリティに対して示してきたリーダーシップは素晴らしいものですが、それだけで業界が規制リスクを免れることはできません。現状の技術力や商業的現実と相反する環境規制という結末も考えられます。

 

半導体業界の規制基準

米国と欧州連合は、モントリオール議定書キガリ改正に従い、ハイドロフルオロカーボン(HFC)の生産と輸入を段階的に減らしています。様々なHFC関連の規制要件により、この10年、そしてその先にわたってHFCの上流供給は大幅に抑制され、また使用可能なHFCの種類も用途ごとに地球温暖化係数(GWP)に基づいて制限されることになります。

米国環境保護庁(EPA)は用途別許容量の一部を半導体業界に直接割り当てていますが、この政策は一時的なものであり、業界は数年ごとにこの割り当てを正当化しなければなりません。つまり、半導体ファブで使用するエッチングガスの排出制御/リサイクルに対する圧力が高まることが予想されます。

多くのHFCのGWPは数千です。米国とEUの規制提案では、来年にはGWPが300から700を超えるものを禁止し、将来的にはGWPの閾値を150、一部の用途では10にまで引き下げる公算が大きいと見られます。

N2O、PFCs、SF6、NF3など、半導体産業で使用されるHFC以外の温室効果ガスについては、米国では直接の規制はありませんが、EPAやカリフォルニア州などの州にはレベルは様々ですが使用および排出を制限する権限があります。

対照的に、EUのFガス規制案は、HCF、PFC、HFC、HCFC、HFE、SF6、NF3等、より広範囲のフッ素化合物を対象としています。

EU議会とEU理事会の間で最終交渉が進められているFガス規制案は、2023年末までに法制化される見込みです。この規制案では、割当量の段階的削減に関する厳格な要件、既存装置の保守修理を制限することによる強制的な陳腐化、また、2030年までに大半の空調・冷凍機器のGWPを150未満にすることを目標とした広範な取引禁止が設定されています。エッチングやプローブテストで一般的に使用される低温冷凍機(チラー)は、除外される可能性が高いものの、最終的な結論はまだわかりません。
 

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気候変動への配慮以外にも、多くのフッ素系化合物に含まれるPFASに対する懸念が高まっています。米国のメインやミネソタなどの諸州やEUの複数の団体がPFAS含有化学物質の早期規制を求めています。

また、半導体産業はエネルギーと水を大量に消費する産業であり、こうした消費は温室効果ガス(GHG)プロトコルが定める排出源区分のスコープ1(直接排出)、スコープ2(エネルギー調達などによる間接排出)、スコープ3(サプライチェーンの他社による間接排出)の報告・開示に算入される場合があります。米国とEUの当局は、少なくともスコープ1と2 の排出量について詳細な情報開示を求めようとしており、最終的には、スコープ3の基準も明確にして、その排出量も開示対象とする可能性があります。

 

サプライチェーンにおけるサステナビリティのリーダーシップ

パネルディスカッションでは、気候変動やより広範なサステナビリティゴールに対するリーダーシップを発揮するための、個々の企業や業界全体が実行している取り組みも紹介されました。チップメーカー、装置メーカー、材料サプライヤーを含むサプライチェーンの多くの企業は2030年までに50%以上の排出削減、2050年までにカーボンニュートラルを公約しています。

これらの公約は重要です。なぜならサプライチェーン企業はチップ製造の複雑なプロセスにおける排出削減対策の技術的・経済的実現性を判断できる唯一の存在だからです。これらの公約はカーボンニュートラルを達成するための技術的可能性を示していますが、業界の技術ロードマップを妨げるような規制介入を未然に防ぐことはできません。

Image気候変動フットプリントの縮小を公約する意思のある企業は重要電子デバイスの供給や、イノベーションを妨げない方法で排出を削減する詳細なステップを提供する上で欠かせない役割を担います。

最大限の効果をあげるために、半導体業界はSEMIやSIAのような共同作業の接点となる業界団体を通じた集団行動を検討すべきです。これら組織のメンバーはすでにサステナビリティにおけるリーダーシップを確立していますが、さらにサステナブルなチップ製造への実際的な道筋を規制当局との共同作業により実現するため、サプライヤー、競合他社、顧客からの協力を求めていく必要があるでしょう。

 

チップ業界は統合基準を開発する必要がある

半導体メーカー、装置・材料サプライヤー、そしてエンドユーザーは、これまでのように自主的なコミットメント、あるいは戦略地政学的な先端マイクロエレクトロニクスへの判断に依存したままでは、気候変動に起因する将来の規制要件から業界を守れる見込みは低いでしょう。半導体業界の技術があまりにも高度であるため、先進的な政策立案者は業界の技術力や商業的現実に関係なく標準化を推し進めることになるでしょう。

ですから、業界はモントリオール議定書の成功実績と業界寄りの制度の構造やコンセプトを参考にして、現行法の下で課されうる最も厳しい環境性能をも上回る独自の統合基準を考案しなければならないのです。

 

著者について

LogoScott Stone氏は、気候変動および保護政策に関する法務およびコンサルティングに取り組むGlencoe Strategies社の社長兼創業者です。同社は、特にハイドロフルオロカーボン(HFC)、その他のフッ素化合物およびその代替品に関する国内法、規制、政治問題、国際条約交渉に重点を置いています。Stone氏は、2020年米国技術革新製造法(AIM法)の原案作成者であり、モントリオール議定書のキガリ修正条項の批准に賛成する米上院票の確保に貢献しました。
 

HSColin Brough博士は、Tokyo Electron Europe Ltd.においてプロダクトコンプライアンス&アドボカシーを担当しています。磁性材料の研究、民生用製品の製品開発、軍用防衛機器のプロセス開発のキャリアを経て、1994年に半導体装置業界に入りました。半導体業界における28年間の職務には、カスタマーサポート、プロセスサポート、技術トレーニング、EHSが含まれます。特に欧州連合内の環境規制により、業界への要求が高まる中、製品コンプライアンスとアドボカシーに異動しました。東京エレクトロンのグローバルチームの一員として、他の業界パートナーやSEMIと協力しながら、世界中で提案されている規制の影響に対処しています。