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2021-09-29

エッジへのAI導入:SEMI CTOフォーラムレポート

人工知能(AI)は急速な進歩を遂げており、金融、エネルギー、ヘルスケア、マイクロエレクトロニクスなど、多くの産業において重要なテクノロジーとなりました。AIは、数兆ドル規模の世界市場を牽引すると同時に、現在のパンデミックのトラッキングや、ハリケーンや山火事などの気候によって生じる災害の予測など、社会的問題の解決にも貢献しています。

現在、AIのアルゴリズムは主に大規模なデータセンター、つまりクラウド上で実行されています。AIをエッジで使用するためには、データをクラウドに送信し、そこで分析し、その結果をエッジに返信する必要があります。エッジは現場において使用されるデバイスであり、橋の強度を確認するセンサー、携帯電話、医療用埋め込みセンサー、自律走行車など多岐にわたります。

現在のAIを主にクラウド上で運用するアプローチでは、多くのエネルギーが消費され、データ伝送の遅延やセキュリティ上の脆弱性も問題となります。しかし、エッジをインテリジェント化するには、デバイスのサイズ、コスト、電源容量、計算能力の厳しい制約という課題があります。AIを拡張するためには、こうした課題を解決する必要があります。

エッジAIの課題と解決策を探るため、SEMIのCTO(最高技術責任者)フォーラムが7月15日に開催され、Accenture、Advanced Micro Devices、Applied Materials、Brewer Science、Dell Technologies、Dow/Dupont、EMD Materials、Entegris、Galaxy Semiconductor、GridMatrix、HPE、Imec、Lam Research、Microchip、Qualcomm、Quantum Semiconductor、Resilinc、Soitec、Teradyne、東京エレクトロン、Veecoなどマイクロエレクトロニクス業界をリードする22社のCTOが集まりました。基調講演では、QualcommのEvgeni Gousev博士とスタンフォード大学のBoris Murmann教授のお二人にご登壇いただき、胸躍るようなアイデアを披露していただくとともに、CTOの皆様との活発な議論を行いました。今回のフォーラムでは、以下のような見解が得られました。

 

なぜエッジAIが重要なのか

持続可能性:AIアプリケーションが普及すると、必要となる強力なコンピューティングパワーによって、大量の電力が消費されます。現在、AIは航空業界よりも多くの二酸化炭素を排出しており、まったく持続可能ではありません。エッジAIを増やすことで、低消費電力のローカルデータ処理が可能になり、電力消費と温室効果ガス排出の両方が削減されます。

レイテンシー:AIの魅力の1つは、リアルタイムの意思決定をサポートする能力です。自律走行車が障害物を発見したり、医療機器が異常を感知したりした場合、次の行動を即座に決定する必要がありますが、レイテンシー(遅延)を最小限に抑えることが実現の鍵となります。エッジAIは、迅速な診断と実用的なインテリジェンスを提供可能であり、この意思決定を実現する上で重要な役割を果たします。

プライバシーとセキュリティ:私たちの生活がデジタル機器に依存するようになると、当然のことながら、プライバシーとサイバーセキュリティが最重要課題となります。個人、企業、さらには国家全体が、デジタルエラーや悪意のあるハッキングの被害を受けています。エッジをインテリジェント化することで、データ伝送の脆弱性を減らし、プライバシーとセキュリティの両方を向上させることができます。

5G接続性:5Gネットワークやギガビットイーサネットが登場しましたが、普及はまだこれからです。十分な接続環境であっても、ビデオ通話が途切れたり、切断したりするなど、通信には限界があることは明らかです。このような通信の切断は、サービスが行き届いていないコミュニティや遠隔地では、より顕著になります。エッジAIは、通信ネットワークに依存せずに動作するため、例えば遠隔地の診療所や森林の奥深くでの環境保護活動などで、人命や自然環境を救うことにもつながるでしょう。

多様性、公平性、受容性:分かりにくく、過小評価されがちな利点ですが、エッジAIは現場で活動する人が自分で問題を制御できるようにする、本質的に民主的な機能です。 高価なクラウドサービスや通信ネットワークに頼る必要がないため、世界中の人々がAIにアクセスできるようになり、より多くのイノベーターに力を与えます。

 

エッジAIを実現するには

エッジAIのコンセプトは新しいものではありませんが、その可能性を最大限に発揮するためには、実用化に向けて多くの努力が必要です。電力容量が厳しく制限された小さく安価なデバイスに、膨大なコンピューティング能力と分析能力を詰め込むことは大きな挑戦です。エッジAIが急速に進歩するためには、以下のような要素が必要となります。  

システムレベルのアプローチ:Gousev博士とMurmann教授は、エッジAIの開発には、ハードウェア、ソフトウェア、システムのスタック全体を一緒に最適化する、総合的な思考が必要だと強調しました。ハードウェアは、電力効率を考慮して設計され、ミリワット単位の電力で動作するようにしなければなりません。これは、十分な性能のハードウェアを使用する現在のアプローチとは対照的です。研究者たちは、アナログやインメモリ・コンピューティングなどの革新的なアプローチを模索しています。また、ソフトウェアのインフラとツールを成熟させ、エッジに特化したエネルギー効率の高いアルゴリズムを開発し、ニューラルネットワークに適応させる必要があります。さらに、これらのエッジデバイスはユビキタスになりますから、デバイスにセキュリティ設計を組み込み、アルゴリズムの倫理的バイアスを事前に排除することも極めて重要です。

Smart Dataスマートなデータ管理:エッジデバイスの計算能力と消費電力の両方が厳しく制限されているため、効率的なデータ管理が不可欠となります。エッジAIのアルゴリズムやアーキテクチャでは、データセットをスパース化、つまり圧縮する必要があります。Murmann教授は、実際のピクセルではなく、ピクセルのグラデーションを使って情報を保存することで、入力データ量を削減できるという実用例を示しました。また、博士はモデルの学習に使用するデータの質も向上させる必要にも言及しました。  

CTO Forum Talentエコシステムの構築:Gousev博士は、エッジAIのための強固なエコシステムを構築することの重要性を強調しました。博士が代表を務める非営利団体tinyMLは、主にバッテリー駆動のデバイスを対象に、ミリワット(またはそれ以下)の電力範囲で、さまざまなセンシング法(視覚、音声、動き、化学的なものなど)に対してデバイス上で分析を行うことができる機械学習アーキテクチャ、技術、ツール、アプローチを広く定義しています。tinyMLは、関心のあるコミュニティを形成し、本物のエッジAIデバイスが将来的に普及するために必要な、認知向上とエコシステム構築を進めています。

サプライチェーンの対応:エッジAI技術は、パッケージや材料などのサプライチェーン要素を含むフルスタックの最適化を必要とします。例えば、AIシステムのコストは、高価なシステムオンチップ(SoC)ソリューションの代わりに、ヘテロジニアスインテグレーションや2.5D、3Dなどの革新的なパッケージング技術を使用することで軽減できます。材料業界は、エッジAIを実現に向けた量的需要とイノベーション需要の増加に対応する必要があります。また、マイクロエレクトロニクス業界は、技術開発に影響するような材料製造上のEHS(環境・健康・安全)問題や、世界的な規制動向を注視する必要があります。

人材の育成:マイクロエレクトロニクス業界における十分な人材確保は、おそらく経営者を夜も眠れないほど悩ませている最大の問題です。人材不足を解消するためには、多面的なアプローチが必要です。業界は、社会貢献や持続可能性に向けたアプリケーションを強調して、学生に刺激をあたえなければなりません。競争力のある給与と、若手研究者のインターンシップを組み合わせる必要があります。業界は、人材発掘の視野を、テクノロジー分野の外側人も広げ、未開拓の高校生や中学生に特別な努力を注ぐことが必要です。膨大な数の学生に刺激的なキャリアの機会を与え、必要な教育資源やツールを提供することが、人材不足の長期的な解決の基盤となるでしょう。短期的には、業界は雇用している従業員がAIデータ技術に精通するためのトレーニングに投資しなければなりません。

エッジAIは、必要な時にすぐ手の届くところでAIを利用できるというエキサイティングな可能性を秘めています。エッジAIは、持続可能性や多様性、公平性、包括性を向上させることで、社会的な利益をもたらすことができます。しかし、成功を導くためには、本稿で説明したような複数のイネーブラが必要です。企業は競争上の理由から革新を続けるでしょうが、それだけでは十分ではなく、共同体が必要になるでしょう SEMIは、前競争領域でいくつかの共同プログラムを提供しています。その中には、スマートデータ-AI、サプライチェーンイネーブルメント、労働力開発の活動があり、エッジAIの課題へ対処する重要なイネーブラの役割を果たすでしょう。SEMIとtinyMLが協力することで、エッジAIの可能性を実現するための業界サポートが可能となるのです。

謝意:SEMIは、本イベントを後援いただいたGalaxy SemiconductorとResilincに感謝いたします。

Tom SalmonはSEMIのコラボレーティブ・テクノロジー・プラットフォーム担当副社長です。Pushkar P. Apte博士は、SEMIの戦略的技術アドバイザーであり、Smart Data-AI Initiativeのリーダーです。