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2022-07-20

ガス広域モニタリングの市場需要を探る

ガス状または揮発性の汚染物質による健康影響に関する新たな知見によって、屋内外の空気質をモニタリングする必要性が明らかにされました。短時間では微量な曝露レベルであっても、様々な揮発性物質が人の健康を害することが判明しています。新たに有害性がわかった揮発性物質を、家具、乗用車、トラックといった多くの消費者製品や工業製品家具が排出している恐れがあります。健康リスクの低減または排除に向けた適切かつ効果的な対処をする上で、ガス状汚染物質の検出・測定技術への関心が高まっています。

国立および国際機関のどちらもが、工業、医療、屋外、屋内(オフィス・住宅)の空気室モニタリングに対するガイドライン、規制、スタンダードを策定しています。こうしたガイダンスにより、メーカーは自社製品の適正を証明し、またユーザーに汚染物質の許容レベルを知らせることができます。一例として米国環境保護庁(EPA)は最新の科学技術を駆使した費用対効果の高い手法によって、大気汚染を低減・抑制する規制を制定しています。一般的な汚染物質のほとんどについて、EPAは5年ごとにデータをまとめ、規制の妥当性を評価しています。また、空気質に影響を与える恐れのある特定化学物質について、自動車、トラック、発電所などの排出源を明らかにしています。汚染物質と健康リスクの原因となる発生源を関連づけることが目的です。

Regulations屋外の主な大気汚染物質であるO3、NO2、SO2、COは、EPA認定測定器でモニタリングされています。 その測定結果は、パーティクル検出器のデータと合わせて、空気質指数(AQI)の算出に利用されます。屋内空気の場合は、利用状況によって揮発性物資は決まり、住宅とオフィスビル、居住状況、家具の種類、換気システムといった要因に左右されます。例えば、CO2、ホルムアルデヒド、ベンゼンなどの揮発性物質が挙げられます。

大気汚染物質モニタリングの重要性は高まる一方ですが、これに対する技術的ソリューションは、データ品質や費用対効果において、顧客の期待に応えられていないのが現状です。 

 

センサーの選択

空気質モニタリング(AQM)用ガス分析計は、大きく2つのカテゴリーに分けられます。規制当局の承認度で一番にランクされるのが、ガスクロマトグラフ(GC)、質量分析(MS)、化学発光(CL)、また紫外光/可視光やレーザーによる光音響分光といった従来方式の分析機器です。長年にわたり、これらの従来技術は、携帯型、さらにはウェアラブル型でも優れた性能を達成しています。しかし、民生用としてはコストが高く、また消費電力が大きく、一般的に頻繁なメンテナンスも必要なため、ガスモニタリングに向けた広範な普及には限界があります。このカテゴリーの機器の多くは、EPA、世界保健機関(WHO)など、さまざまな国家機関や国際機関によって承認あるいは推奨がされています。

承認度では2番となるカテゴリーが、電気化学、金属酸化物(MOx)、ペリスタ、非分散型赤外線(NDIR)など、さまざまな原理に基づく通常のガスセンサーです。民生用の屋内外空気質モニタリング、医療診断、国土安全保障など様々な分野におけるガスセンシング需要に対応するため、手頃な価格の高性能センサーが求められています。

ここ数年にわたりガスセンサーメーカー各社は、非水電解質を使用した電気化学センサー、微細加工MEMS技術を使用したMOx、ペリスタ、NDIRセンサーなど、新しい技術や製造方法をつぎつぎと採用してきました。これらの進歩により、消費電力、コスト、そして最も重要なことであるサイズの削減が進み、現在のセンサーは従来のさくらんぼサイズから米粒サイズにまで小型化したものもあります。
 

Gas image

 

ガスセンサー市場のトレンド

SEMI MEMS and Sensors Industry Group(MSIG)では、この成長市場の動向を把握するため、ガスセンサーを使ったシステム開発を行っている複数の企業と連絡を取り、現在のセンサーモジュールがニーズを満たしているかどうかを調べました。その目的は、センサーメーカーが要求の厳しい新たなアプリケーションに向けた製品開発をする上で解決しなければならない共通課題を見つけ出すことにありました。

調査対象となった企業が目指すアプリケーションは様々で、パーソナルヘルスケアからスマートシティの大規模環境監視にまで亘ります。ほとんどの企業は、最も関心のあるパラメータとして空気質をあげています。ユースケースは多様ですが、アプリケーションが屋内外の両環境において同様の精度で動作することを多くの企業が望んでいます。

調査の結果は、ひとつで万能のアプローチはないということでした。屋内と屋外では汚染物質が異なり、それにより最適な検出技術も変わるのです。

調査では、センサーの精度サイズデータレート消費電力キャリブレーション価格の各パラメータのデータを収集し、アプリケーションにどのような影響を及ぼすかを調べました。各社は、センサー単体だけでなく、キャリブレーション、データ転送、センサーロジックなどの周辺部品を含めたセンサーシステムについてもコメントを寄せています。

 

【精度】:調査対象企業の約半数は、交絡要因となるガスがない状態での測定であれば、市販のセンサーの精度に満足しています。ガスセンサーメーカーは、対象ガスに対するセンサーの選択性を向上させ、他のガスの干渉を排除する努力を進めています。このほか、ドリフトやキャリブレーションなどの問題も報告されました。

ガスセンサーは、ここ最近、主要性能パラメータのほとんどが大幅に改善されています。MEMSに代表される新技術によって、センサーのハードウェア、統合ガスフィルター、ソフトウェア技術の連携活用が進み、従来方式の分析装置を使ったソリューションと遜色ない性能水準というゴールに向けて性能が向上しています。
 

Sensors


マルチガスセンサー(GE Research提供)

 

【サイズ】:センサーパッケージのフットプリントは、3mm x 3mm から 10mm x 10mm までの範囲に分布しています。ガスセンサーのサイズは、デバイスの使用技術によって決まります。金属酸化物センサーは、3mm x 3mmに収まる小型のものとなり、NDIR、電気化学、およびペリスタセンサーはもっと大きくなります。

 

【データレート】:回答は1秒に1回から10分に1回までと幅があり、ほとんどの企業が望ましいデータレートについては報告していません。原則としては、ガスセンサーのデータレートは、ガス濃度の変化をモニターする際に予想される時定数に合わせる必要があります。例えば、スマートオフィスの場合、部屋の容積や換気速度にもりますが、1〜10分に1回の割合でCO2濃度の変化を検知すればよいでしょう。一方、スマートシティの都市環境にあるバス停付近の急激な変化を検知しようとすれば、屋外の風向きを考慮し、1秒に1回程度のデータレートが必要となります。

 

【消費電力】:回答に100μWから1Wと幅があったのは、バッテリー駆動と電源ライン駆動の違いと思われます。ガスセンサーをシステムの一部として考えると、システムの消費電力はデータレートとトレードオフになることが通常であり、データレートを低くすれば消費電力を抑えることができます。最新のガス・センサー・システムの設計では、デジタル・インターフェースとプログラム機能によって可能になったスリープモードやパワーダウン等の技術を使って電力消費を最小化しています。

 

【キャリブレーション】:回答は、センサー素子単体と、特定のアプリケーション用のキャリブレーションパラメータを格納したセンサーシステムの双方が対象となっています。ほとんどの企業は、ガス・センサー・システムがメーカー出荷時に校正されることを希望していますが、一方でエンド・オブ・ライン(製造ライン終端における)校正する選択肢にも同意しています。通常、出荷前のエンド・オブ・ライン校正はコスト増につながるため、各社が前向きであることは驚くべきことです。これは、精度が非常に重要であり、そのためにセンダーメーカーと協力することを望んでいることを表しています。

 

【価格】:ガスセンサーの価格に対する満足度については、企業の回答はまちまちで、購入対象がセンサー単体か、キャリブレーション、データ転送、センサーロジック、その他の機能込みのセンサーシステムかによって違いがあります。また、大量生産されるコンシューマ製品では数ドルから、産業用や車載用では10ドル以上と、その見込み価格帯も様々です。

近年のガス検知技術の進歩により、コスト削減の実現性が高まっています。例えば、シリコンプロセスを使用するMEMSベースのソリューションは、現時点では使用されていませんが、導入によりコストを削減できる可能性があります。さらに、ガスセンサー以外で利用されているほとんどの MEMS プラットフォームにはデジタル機能が統合されているため、大規模なセンサー・ネットワークによる制御や統合が容易であり、エンドユーザーのセンサーの総所有コスト (TCO) が削減される可能性もあります。センサーシステムのキャリブレーションは、MEMS他のセンサーシステムのコストの大きな部分を占めており、業界ではこのステップがコスト削減の重要手段であると位置づけています。

 

【ガスセンサー試験標準規格】:ガスセンサー試験標準規格の重要性について尋ねたところ、ほとんどの企業が使用を支持しました。半世紀以上前から、家庭用や産業用の安全機器には、ガスセンサーの性能基準が適用されています。今日では、ガスセンサーのアプリケーションが様々な市場に広がっており、新たなお客様も標準化によって効果的にガスセンサーを利用できるようになるでしょう。

SEMI MSIGデバイス・ワーキンググループでは最近、ガスセンサーのユーザーとメーカーがセンサー性能の共通指標を使用できるように、ガスセンサーのパラメータのガイド(SEMI MS14 – Guide for Critical Parameters of Gas Sensors)を取りまとめています。

 

まとめ

Medtech最新のガスセンサーのメーカーは、従来から高品質のデータを低コストで提供しているセンサーから学ぶことができます。例えば、初期のウェアラブル生体センサーは精度が低いものでしたが、アプリケーションの可能性に対する興奮から、当初は気づかれませんでした。しかし、業界はすぐに、ウェアラブル生体センサーの市場を広げるためには、精度を大幅に改善する必要があることに気づきました。その結果、心電図や筋電図血糖値測定など、医療機器に匹敵する精度を持つウェアラブルセンサーが多数登場しています。

別の例では、マイク、加速度計、ジャイロスコープ、コンパスなどの物理センサーは、精度が市販されているソリューションに追いつくと、大量に採用されるようになりました。例えば、年間約10億台が出荷される携帯端末に採用された結果、そのセンサーの価格は1個1ドル以下に下がりました。

ガスセンサーに革命を起こすには、精度の向上が必要です。今進められている学際的なアプローチもたま、新しいガスセンサーの開発と市場拡大を促進しています。エレクトロニクス、ガスフィルター、パッケージング、オンボードデータ解析の進歩によって、センサーの安定性と精度が向上する可能性は確かに大きいでしょう。AI技術やオンボードデータ解析を用いた、ロバストモデル予測やアルゴリズムによっても、性能は大きく向上させつつあります。

 

執筆者紹介

HeadshotRadislav PotyrailoはGE Researchの主席サイエンティストであり、SEMIテクノロジーコミュニティであるMEMS and Sensors Industry Groupのデバイス・ワーキンググループ議長を務めています。ガス、化学、生体検査に関する複数の活動をリードし、新しいセンシングシステムの発明、ラボでのフィージビリティスタディからフィールドでの検証、そして商品化までを担当しています。キエフ工科大学でオプトエレクトロニクスの修士号を、インディアナ大学で分析化学の博士号を取得しています。

 

Headshot

坂内 良太郎はRobert Bosch LLCのシニアマネージャーとして、Bosch Sensortecの民生市場向けMEMSセンサーのビジネス開発を担当しています。過去13年間、MEMSセンサーの分野で活躍し、Boschの米国および日本の拠点で技術およびビジネスのポジションを歴任。日本の国際基督教大学でリベラルアーツ学士号を取得。

 

HeadshotSreeni RaoはTDKのシニアディレクターとして、ガスおよび環境センサー製品およびビジネスを担当しています。MEMSセンシングと半導体の分野で25年以上の経験を持ち、Texas Instruments、IBM、Analog Devices、Qualtre, Inc.で技術およびビジネスのリーダーを歴任しました。カリフォルニア大学アーバイン校でECE博士号を、ノースイースタン大学でMBAを取得しています。

 

HeadshotChristian Meyerは、ルネサスのシニアプロダクトマーケティングマネージャです。過去18年間、様々なガス技術の分析、センサーの開発を担当。大気計測の応用物理学と工学のバックグラウンドがあります。