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2020-08-25

未来の省エネ化を支える影の立役者「パワーデバイス」を学ぼう

私たちの身近にある家電やPCの電源部、ロボットを動かすモータ制御において、安定かつ効率的な電力供給や、無駄のない高精度の制御を実現するのがパワーデバイスだ。ありとあらゆる産業に使われており、特性・用途に合わせて多くのデバイスが存在する。

パワーデバイスの技術革新は、未来の省エネ化のカギを握るといっても過言ではない。消費電力を削減し、環境にやさしい社会を実現する「影の立役者」である。

パワーデバイスは、重要な役目を担う一方で、技術者不足が課題となっている。成長が期待される分野ではあるが、重要性の高さのわりに目立たない。半導体の分野の中でも比較的地味な存在だ。昔ながらの経験豊かな凄腕エンジニアがノウハウをもっていて、覚悟を決めて弟子入りしないと、その世界で生きていけないような職人的香りがする。

でも、繰り返すが、未来の省エネ化のカギはパワーデバイスの技術革新が握っているのだ。

つまり、今、この分野にトライするにはよい機会だといえる。技術知識を深めることで、時代のニーズに沿ったキャリアを手に入れることができる。
 

では、なにから学べばいいのか-----? 
 

筆者は、全体を俯瞰し、体系的に学ぶことが、理解習得の近道となると考えている。

技術体系がかなり複雑なので、一朝一夕にキャッチアップすることは難しいかもしれないが、最近は、エッセンスを一通り学べるセミナーも増えてきたので、興味がある方は、是非、参加いただきたい。

といっても、仕事の関わり方によっては、実際行動に移すか迷われる方も多いだろう。そこで、本稿では、10月に予定しているパワーデバイスのセミナーのご紹介を兼ねて、パワーデバイスに関する基本的な情報をお伝えする。

少しでもお役に立てば幸いである。

 

パワーデバイスは電力を変換する半導体素子

パワーデバイスは各機器の電力を機器に使いやすい形に変換する半導体素子だ。交流を直流に変換したり、ノイズのない精度の高い電流に整えたり(整流)、電圧の上げ下げをしたり(電圧変換)、交流の周期を変えたり(周波数変換)する。性能・特性指標としては、電流、耐圧、スイッチング特性、および損失特性(オン抵抗/オン電圧/スイッチング損失)が比較検討される。

機器の用途によって必要となる電圧、電流の範囲が異なる。機器の安全性が保証される範囲である定格電流、定格電圧の2軸でマッピングした絵が用途別の俯瞰図としてパワーデバイスの世界ではよく使われている(図1)。

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図1

 

機器の用途によって必要となる電圧、電流の範囲が異なる。機器の安全性が保証される範囲である定格電流、定格電圧の2軸でマッピングした絵が用途別の俯瞰図としてパワーデバイスの世界ではよく使われている(図1)

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図2

 

また、制御方式や機能・特性によってもさまざまな種類のものがある。全体を俯瞰するもうひとつの見せ方は、定格電力と動作周波数の2軸で各デバイスを表現したものだ(図2)。これも業界ではお馴染みの絵だ。

なお、図1、2は各デバイスの大分類に過ぎない。実際に、パワーエレクトロニクス機器の開発にあたって評価・検討する。パワーデバイスの構造・特性は多岐にわたる。

例えば、モバイル用充電器、電源アダプタなど、比較的扱う電力が小さく、小型化が要求される機器向けに、高速スイッチングの特長を生かせるデバイスとしてパワーMOSFETがある。パワーMOSFETは導通損失(オン抵抗)を下げるために二重拡散MOS(DMOS)を基本とする。チップに流れる電流の方向としては、横型(LDMOS)、縦型などバリエーションがある。近年、耐圧を維持しながらオン抵抗を下げる工夫として、LDMOSのドリフト層の表面電界を低減するRESURF(Reduced Surface Field)構造や、同じ耐圧でもドリフト層を薄くでき、低オン抵抗化が可能なスーパージャンクションMOSなどが注目されている。

また、特性に関しては、しきい値やオン抵抗などの電流電圧特性、スイッチング特性などがある。

携帯機器用のパワーMOSFETのようなデバイスと、電力の大きな産業機器や大型モータ制御用に使われるIGBTでは評価する特性・内容が異なってくる。顧客の用途に合わせて個々のデバイスで高度なすり合わせを行うイメージだ。そのため、デバイスごとに見るべきポイントを習得する必要があるのだ。

 

付加価値の源泉はデバイス構造の進化にあり

パワーデバイスは、ロジックやメモリなどのICと製造面においては、その技術開発の方向性が大きく違う。

基本的にプロセスの微細化は緩やかであり、微細化の話題もあまり頻繁に語られることはない。少数製品の大量生産というよりは少量多品種生産のケースが多く、ウエハーの大口径化によるコストダウンが効きにくい。そのため、前工程で一度に大量のデバイスを生産するメリットがメモリなどと比べると薄いのだ。300mm化へのシフトも一部で進行しているが、主流はまだまだ200mm以下だ。

ロジック製品がコアとなるIPや論理回路などの機能軸で差別化を図るが、パワーデバイスの付加価値の源泉はデバイス構造とそれを実現するプロセス技術である。高効率なデバイスを実現するためにデバイス構造やパッケージ/モジュールの実装技術を進化させることが性能向上に寄与する。

先の例で取り上げたパワーMOSFETのスーパージャンクション構造では、プレーナMOSソース下部の深さ方向に柱状のP層を形成することで、チップサイズの上昇を抑えつつ高耐圧化、低オン抵抗化を実現している。

後工程のパッケージやモジュール技術のノウハウも他の半導体と比べ重要度が高い。大きな電流電圧を扱い、発熱対策も必要なため、ボンディング技術や放熱設計が必要になるためだ。

 

次世代の本命!ワイドバンドギャップ半導体

パワーデバイスの中で今、最も注目度が高いのがSiCやGaN、酸化ガリウムなどの新材料の話題だ。従来は、コストの問題などで限られたニッチ市場でのみ使われていたが、高速鉄道や太陽光発電(PCS:Power Conditioning System)などで普及が進み、最近は自動車、医療、データセンタ用で市場が期待されている。

ワイドバンドギャップ半導体で先頭切って製品化されたのがSiCショットキーバリアダイオードだ。ついで、SiC-MOSが実用段階にきている。最近では、パワーMOSFET、IGBT、HEMTでも新素材を使った動きが活性化している。

プレーヤも増えており、パワーデバイス以外を手掛ける半導体メーカや自動車電装メーカなどの異分野からの参入組も目立っている。ビジネスモデルも多様化しており、ウエハー製造からモジュールまで手掛ける垂直統合企業、チップ設計に特化するファブレス設計企業もあれば、後工程に特化したモジュール企業もある。

 

パワーデバイスの魅力とは?

パワーデバイスは今後成長が期待される有望技術であり、新しい技術が次々に登場していて目が離せない領域だ。

ロジックやメモリと違い、一部の固定プレーヤが上位を占める市場構造ではない。競争は激しいが、メモリのように高額の設備投資ありきのビジネスではなく、いろいろな要素が複合的に絡み合うため、未来の勝者が読みにくい(誰もが勝者になり得る要素がある)ところも面白い。

なにより多くの日系メーカがこの分野で第一線のポジションで頑張っている。そこがパワーデバイスの一番の魅力かもしれない。

 

【セミナーのご案内】
パワーデバイスの基礎から最新動向までカバー

パワーデバイスの基本構造・特性、製造方法、パワーモジュールの概要から信頼性評価に至るまで、基本的な内容を一通り理解できる構成になっております。

また、注目度の高いワイドバンドギャップ半導体の材料動向や学会における最新情報までを盛り込んでいます。

パワーデバイスの技術になじみが薄い初心者の方にもわかりやすい構成になっていますが、実務に役立つ知識を随所に盛り込んでいますので、現在技術者の方にもおすすめです。

セミナーは2日間。講師は、複数の半導体メーカでデバイスやプロセス技術の経験豊富な群馬大学大学院理工学府電子情報部門客員教授の松田順一氏です。

 

<パワーデバイスセミナー概要>

日時: 2020年10月27日㊋ – 28日㊌ 9:45 – 17:45

場所: SEMI会議室

セミナーの詳細はこちら