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2023-04-17

欧州気候法、欧州Chips法:Fガス規則案が欧州半導体産業の成長戦略に及ぼす影響の可能性

2022年4月5日、欧州委員会はフッ素系温室効果ガスの規制案を公表しました。この提案は、Fit for 55パッケージの最後となるものです。このパッケージは、欧州連合(EU)の政策が欧州理事会欧州議会によって合意された気候目標に合致するように、法律を改正することを目的としています。

欧州気候法には、2050年までに欧州経済の気候中立化(温室効果ガスの排出量ネットゼロ化)を目指す欧州グリーンディールの目標が明記され、2030年までに温室効果ガスの純排出量を少なくとも(1990年比で)55%削減するという中間目標を定めています。半導体業界は、欧州グリーンディールに沿ったグリーンな未来の構築に向け、環境のサステナビリティを最優先にしながら、自動車、医療、航空宇宙、防衛、エネルギーなどの重要産業を支える革新的な部品やシステムの開発に取り組んでいます。

欧州Chips法は、サプライチェーンのデジタル繁栄と安全性を確保する上での半導体産業の戦略的重要性を認めており、これによって欧州の技術競争力を強化しようとしています。SEMI Europeのアドボカシーチームに、直面する問題を解決し、域内の環境スチュワードシップを推進するための持続可能な技術ソリューションを求める欧州の次のステップについて話を聞きました。

Brischetto:欧州委員会は、現行のFガス規制の改正を提案しました。Fガスとはどんな物質ですか?

SEMI Europeアドボカシー:Fガスとは、フッ素系温室効果ガスのことで、日常生活や産業のさまざまな用途に使用されている人工的に合成された化学物質のグループです。Fガスは、モントリオール議定書や欧州の法律などで廃止が決まっているCFC、HCFC、ハロンなどのオゾン層破壊物質の代替物質として、各種製品に使用されています。例えば、以下のようなものです:

  • HFCは、冷凍機・空調・ヒートポンプの冷媒、発泡剤、溶剤、消火器やエアゾールスプレー缶など、様々な分野・用途で使用されています。
  • PFCは、シリコンウェーハのプラズマ洗浄などエレクトロニクス分野で使用される他、化粧品や医薬品業界でも使用されています。
  • SF6は、主に絶縁ガスとして、高電圧スイッチギアの絶縁ガスとして使用される他、マグネシウムやアルミニウムの製造にも使用されています。
     

Brischetto:半導体メーカーはどのような目的でFガスを使用しているのですか?

SEMI Europeアドボカシー:半導体メーカーは、シリコンウェーハ上の複雑な回路のエッチングや、CVD装置のチャンバーのクリーニングにFガスを使用します。Fガスにエネルギーを加えることで、解離したプラズマ状態にし、製造装置のチャンバー内に反応性のフッ素原子を供給します。プラズマエッチングの場合は、遊離したフッ素原子がシリコンウェーハ表面に露出している絶縁材料や導電材料と選択的に反応して取り去り、半導体の回路パターンを形成します。CVD装置のチャンバークリーニングの場合は、フッ素原子が装置表面の余分な材料と反応して洗浄します。

半導体メーカーは、Fガス以外にも液状のフッ素系熱媒体を、プロセス機器の冷却、デバイステスト時の温度制御、基板表面や部品の洗浄、はんだ付けに使用します。またCVDやその他の製造工程でのチャンバークリーニングには、一酸化二窒素(N2O)も使用しています。

その他にも、装置やプロセスチャンバーの温度を制御するための、一般的にプロセスチラーと呼ばれる冷凍機、そして空調システムにもがFガスは使用されています。

Brischetto : なぜ欧州の当局が発した規則が、環境の持続可能性にとって重要なのでしょうか?

SEMI Europeアドボカシー:Fガス規則は、地球温暖化係数(GWP)の高いHFCガスが地球の大気に与える影響を低減するという点で重要な成功を収めました。SEMI会員は、欧州のモントリオール議定書キガリ改正へのコミットメントと、それによる2021年欧州気候法[規則(EU)2021/1119]で定められた法的拘束力のある温室効果ガス(GHG)削減目標達成を全面的に支持しています。 多くの企業が、生産プロセスの最適化や代替ガスへの切り替えなどの排出削減戦略を実施しています。

Brischetto:欧州委員会は、この規則をどのように評価しているのでしょうか。

SEMI Europeアドボカシー:欧州委員会による影響評価では様々な政策オプションを検討して、GHG削減目標に対するコミットメントと欧州産業の競争力維持のバランスをとり、政策によってGHG削減目標が実現可能となることを実証しています。しかし、欧州議会環境・公衆衛生・食品安全委員会(ENVI)が提案する追加措置については、排出量のわずかな改善のために欧州の半導体産業が大きな影響を受ける可能性があります。

Brischetto:このような規則が、欧州Chips法の目標に影響を与えているのでしょうか。

SEMI Europeアドボカシー:欧州が卓越性と野心のある地域であることを主張し、Fガス規則改正のような産業を左右しかねない法案が、半導体製造の既存あるいは新規工場の効果的な運用や生産効率に影響を及ぼさないようにすべきです。欧州Chips法との関連では、改正Fガス規則は、将来に目を向けた規制環境の中で装置サプライヤーも含めた半導体業界企業が活動できることを保証し、それによって欧州の半導体エコシステムの成長を支えるべきであり、これを阻害することがあってはなりません。

Brischetto:SEMI Europeのアドボカシーチームは、前述のようなリスクを軽減するためにどんな計画をしていますか。

SEMI Europeアドボカシー:欧州産業の成長を支援するため、SEMI Europeは改正案に対する重要な提言をまとめたポジションペーパーを公表しました。提言は、産業のグリーン・トランスフォーメーションと欧州半導体産業の成長支援を目指した6つの事項に焦点をあてています。ポジションペーパーは、SEMI Europeの諮問委員会幹部の支持を得ており、半導体産業が欧州のグリーンおよびデジタル・トランスフォーメーションの最前線に立ち続けることを目的としています。

Brischetto:ポジションペーパーに記載されている6つの事項とは何でしょうか。

SEMI Europeアドボカシー:6つの懸念事項は次のものになります。

  1. 冷凍・空調システムの定義がされていない
  2. 混合ガスに関連するフッ素系Fガスの定義が不明確
  3. Fガスを使用する装置の修理・保守に発生する制限による、装置寿命の短縮
  4. Fガス禁止に期限内に技術対応ができない場合の域内半導体生産能力への影響
  5. 半導体枠免除が無くなる場合の重要なプロセスケミカルの供給問題
  6. 半導体ドライエッチング用途の低温冷凍機が使用するGWPが高いFガスの供給問題

詳細については、ポジションペーパーをご覧ください。

このインタビューに協力いただいたSEMI EuropeアドボカシーチームとSEMI Greenhouse Gas Working Groupに感謝します。

 

外部リンク

SEMI Japanの連絡先

スタンダード&EHS部 菅野 : hkanno@semi.org

SEMI Europeの連絡先

Thomas Soin(Senior Specialist EHS and Sustainability): tsoin@semi.org
Marek Kysela(Senior Coordinator Advocacys): mkysela@semi.org

Serena BrischettoはSEMI Europeのマーケティングおよびデジタル・エンゲージメント担当ディレクターです。