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2021-05-23

化学物質PFASの規制に業界・企業はいかに対応すべきか ーSEMIビジネスアップデートレポートー

半導体は高集積化、高機能化、高性能化の歴史の中で、次々と新規の化学物質を採用してきました。1985年には、わずか11種類の元素しか半導体には使用されていませんでしたが、現在では約50種類の元素が使用されています。多様化する半導体材料の中には、毒性や可燃性、あるいは温室効果などの環境への影響等の危険有害性のあるものもあり、例えば2006年の欧州RoHS指令による鉛規制などに対し、業界は代替技術・材料の開発に多大な努力をしてきました。

フッ素系化学物質も規制対象のひとつであり、国連の「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」(ストックホルム条約)では、2009年にはペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)が、2019年にはペルフルオロオクタン酸(PFOA)が規制対象となりました。このような有害性のある化学物質を一つ一つ規制するよりも、危険有害性が懸念されるフッ素系化学物質をPFASというグループにまとめ、この定義に当てはまる新たな化学物質も含めて規制しようとする動きがあります。

SEMIでは、PFAS規制に対し半導体製造サプライチェーン全体が速やかに対処すべき業界共通課題として取り組んでおり、日本でも5月12日にSEMIビジネスアップデート「半導体業界に甚大な影響を及ぼす化学物質PFAS規制動向」をオンラインで提供いたしました。本稿は、SEMIジャパン EHSスペシャリスト 嶋田 昇による講演の要旨を、一般の方にもわかりやすくまとめたものです。

 

PFASとは何か

PFASとは、特定の化学物質の名称ではなく、「パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物」の頭文字で、現時点で米国化学会のCAS番号がついたものでは4,730種類の化合物のグループの総称となっています。さらに、今後製造・使用される新たな化合物でも、パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物であれば、PFASに含まれることになりますから、4,730化合物に限定されるものではありません。尚、すでに規制対象となっているPFOSやPFOAもこのグループに入ります。

EUはPFASを、少なくとも1つ以上の-CF2-または-CF3の脂肪族分子を含む化合物と定義しています。この条件を満たすものであれば、例えばPTFE(テフロン)のような有機高分子化合物(ポリマー)も対象となります。

PFASの利用範囲は広範な産業で利用されており、半導体では、ノンポリマーのものが、フォトレジストに、ポリマーが半導体製造装置の配管、バルブ、ポンプ等の接液部材、フォトレジスト、反射防止膜に使用されています(図1)。その他にも、ケーブルの被膜に難燃剤として添加されるなど、様々な形で半導体製造サプライチェーンのどこかで含有している可能性があります。

 

図1:PFASの用途例


図1 PFASの用途例

 

PFAS規制の経緯

化学物質規制としては、国連ストックホルム条約の他にも、EUのREACH規制、米国の有害物質規制法(TSCA)、日本の化審法などがありますが、PFASグループの化学物質として最初に規制されたのが、2003年のTSCAによるPFOS規制です。PFOSは長期的な水生生物に対する毒性、発がん性の疑い、生殖毒性が懸念されました。

2019年にはこのPFOSに加えPFOAが、2004年に発効したストックホルム条約の規制対象に追加されました。ストックホルム条約は、毒性、難分解性、生物蓄積性、長距離移動性のある残留性有機汚染物質を地球規模で規制するもので、現在182か国が加盟しています。加盟国には、規制対象化学物質の追加があった場合、通常2年程度で国内法を整備することが求められます。

これに加えて、TSCAはペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)を2007年より規制対象としており、ストックホルム条約でも2021年7月より規制対象に追加することが予定されています。

こうして、フッ素系化合物の規制物質が増加していく中で、2020年に欧州委員会は根本的で広範な化学物質規制戦略を発表しました。発がん性、変異原性または生殖毒性物質(CMR)、難分解性で高蓄積性および毒性を有する物質(PBT)、免疫毒性物質、神経同棲物質、およびその他の危険有害性資料について、グループ化手法を使用し、REACH規制の対象とするというものです。この手法を初めて導入するのがPFASなのです。EUは、PFAS規制を2025年に発効する予定で、現在策定を進めています。また、米国環境保護庁(EPA)も2019年にPFAS行動計画を公表しており、現在はPFAS行動法案の審議が進められています。

 

図2:各種PFASの規制およびスケジュール


図2:各種PFASの規制およびスケジュール

 

半導体業界・企業に求められる対応

前述のようにPFASは4,700種以上の化学物質のグループであり、半導体の製造にも様々なかたちで使用されていることが分かっています。半導体製造で使用されるPFASは、特定の用途に従って設計されているので、事実上、代替できないものが多く、そうした場合は「必須用途」で代替技術がないことを主張し、規制からの適用除外を求める必要があります。

これまでのPFOS、PFOAの規制に対しても、半導体製造においてそれらの使用が必須であり代替ができない用途については除外規定を獲得し、現在の半導体産業を維持しています。ここで重要となるのは、規制が発効する前の所定の期間内に申請をすることで、発効後では適用が除外されることは非常に困難になります。

しかし、PFASの利用は多くの産業に及んでいるため、企業が直接使用している以外にも、サプライチェーンの川上で使用されていることを、川下のユーザーが知りえていない可能性もあります。PFASは意図的に使用されている場合だけではなく、知らず知らずのうちに不純物として含有される場合もあるでしょう。また、半導体製造装置は数千点から1万点を超える部品から組み立てられており、その全てにPFASが含有されていないことを、サプライチェーンを遡って確認するのは非常に困難です。

サプライチェーンの川上から川下まで全体のPFAS使用に関する情報の共有が、PFAS規制への対応には不可欠となります。

 

SEMIのPFAS規制への対応活動

SEMIは半導体製造サプライチェーンにおけるPFASの必須用途を擁護するため、次のような活動をしてきました。

  • 2020年7月29日に欧州委員会に対し、PFASの必須用途として半導体関連部品・材料についてREACH 規制管理オプション分析(RMOA)への回答を提出
  • 2020年12月3日に開催された産業界と欧州連合の意思決定者を対象とした英Chemical Watchの会議で、これらの物質の重要な役割と半導体製造サプライチェーンにおける「必須用途」について説明

今後の取り組みに関しては、次の2点が課題となっています。

  • PFASの適用除外申請に対して、必須用途としての社会的利便性・経済性等が評価されますが、最終規則で必須用途として認められるようアンブレラ効果も活かして、業界が一丸となって所轄官庁へ意見出しをしていく必要があります。
  • PFAS含有の情報共有が希薄であり、今後はサプライチェーン上の川上の供給者と川下使用者間の情報共有化が重要な課題となります。

こうした活動についてのお問い合わせ、参加希望につきましては、SEMIジャパン EHS部 コリンズ純子(jcollins@semi.org)までお問い合わせください。

 

今後の化学物質規制に関する情報提供の予定

SEMIジャパンでは6月9日に「欧州SCIPデータベースの最新動向と問題点」と題し、EUの懸念物質のデータベースについて解説をいたします。講師は、SEMIジャパン EHSスペシャリストの嶋田 昇が担当します。詳細はこちらをご覧ください。皆様のご参加をお待ちしております。

 


 

SEMIビジネスアップデート

「SEMビジネスアップデート」では、マーケットトレンド、最新技術やアドボカシーなど幅広い分野の専門家を講師にお迎えし、テーマを掘り下げます。なお、ファシリテーターには経済リポーター 大里 希世氏があたります。

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