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2020-08-04

ポストコロナ時代の半導体サプライチェーンを考える SEMIジャパンウェビナー Members Dayレポート

SEMIジャパンでは、新型コロナウイルスの流行下においても情報提供を継続するため、毎月ウェビナーを開催しております。618日、624日、77日には、SEMIジャパンMembers Dayとして3回のウェビナーを提供いたしました。例年のようなフィジカルな講演会・交流会は催すことができませんでしたが、オンライン化することにより、遠方の会員を含めより参加しやすい環境になり、延べ2千人を超える方々にご参加いただけました。

3回を通じた大まかなテーマはコロナ時代の半導体産業のアップデートと会員企業の新たな戦略作りの支援でしたが、業界がおかれた状況を考慮し、SEMI会員以外の方々にも会員と同じように無料で提供させていただきました。このことも一般の聴講者が参加された要因となりました。

3回のウェビナーには次の5名の専門家に講演をいただきました(講演順)。

  • アクセンチュア() ビジネス コンサルティング本部 コンサルティンググループ日本統括 マネジング・ディレクター 金若 秀樹氏
  • (株)SUMCO マーケティング技術部担当課長 小森 隆行氏
  • マイクロソフトコーポレーション 製造インダストリー ディレクター 濱口 猛智氏
  • OMDIA シニアコンサルティングディレクター 南川 明氏
  • ボストン・コンサルティング・グループ マネージング・ディレクター&パートナー 小柴 優一氏

 

半導体への影響は比較的小さく追い風も

5名の講演者は、コンサルタント、ITサービスプロバイダー、半導体材料メーカー、アナリストという異なる視点から状況を観察していますが、口を揃えて半導体産業は他産業と比較してコロナウイルス流行による影響が小さかったと述べています。現在の旺盛な半導体需要を支えているのは、外出の抑制あるいはロックダウンによる急速なデジタルトランスフォーメーションが社会全体に広がったことがあげられました。

南川氏新型コロナウイルスの影響下では、リモートワーク、リモート学習、リモート医療、また在宅での娯楽を支えるエレクトロニクス需要が発生していますが、南川氏(OMDIA)はそれだけではないと言います。

南川氏によると、ビデオストリーミング、ゲーム、リモートワークなどでクラウドサービスの利用が急増し、その結果として通信ネットワークに対する需要が増加しています。Nokiaの報告によると通信ネットワークのトラフィックがオンライン会議で300%、ゲームで400%増加しており、ピークトラフィックはキャパの上限に近づいています。こうした状況から、サーバーの出荷額は2024年まで年平均8%の率で成長が続くと南川氏は予測しました。

小柴氏しかし、すべての半導体が順調ということではないと、小柴氏(ボストン・コンサルティング・グループ)は指摘しました。半導体のエンドユーザーのコロナウイルスから受ける影響には強弱があり、影響が大きくなっているのは自動車、産業機械、航空機の各産業だと言います。そのため、例えば車載半導体需要は減速すると考えられますが、その場合、半導体バリューチェーンの中で最も影響を受けやすいのは、車載売上比率の高いデバイスメーカーや、国内半導体商社だと小柴氏は述べました。

南川氏は2020年の半導体アプリケーション市場について、好調なのはデータセンター、ノートブック、SSDHDD、ゲームであると予測しています。

 

今、半導体業界で何が起こっているか

小森氏小森氏(SUMCO)はシリコンウェーハの大手サプライヤーの視点で業界動向を分析し、現在進行している半導体の変化について次のように報告しました。

  • 微細化と300mm需要をけん引しているのはスマートフォンで、ハイエンド機では1台あたり平均1,700mm2のシリコンウェーハを使用していると推定され、その内80%以上が300mmウェーハで、50%以上がマルチパターニングの先端プロセスで製造されたチップである
  • 5Gの通信高速化、周波数帯域の増加でスマートフォンのRF半導体搭載量が増加し、RFスイッチ、チューナーは化合物からシリコンに置き換わった
  • 5Gスマートフォンは、CPUとモデムのワンチップ化により低価格化が促進され、普及が加速
  • CMOSイメージセンサーは裏面照射、積層化で高画素化と高感度化が進んでいるが、今後は非可視光帯域をカバーするマシンビジョン向け製品の技術開発が進む
  • EVやロボットなどのモーター需要でIGBTMOSFETなどパワー半導体が生産拡大し、300mm化が進んでいる

南川氏も、5Gスマートフォンの普及については、これまでで最も急速に進展し半導体消費に貢献すると予測しました。また半導体ファブの稼働率について、メモリーが大手メーカーの投資抑制により高水準を保っており、今後生産能力が増強されても需給バランスは維持され、ファウンドリは3月末にスマートフォン関係のキャンセルが出たもののやはり高水準を維持し好調、マイクロもノートPCやサーバーの需要増で2020年後半から稼働率が高まるとしています。

 

ニューノーマルへの転換

コロナ危機によって加速されたデジタルトランスフォーメーションは、一時的なものでなく今後も常態化し、社会の構造が変化するという見方も、各講演者に共通して見られた見識です。

金若氏

金若氏(アクセンチュア)は、デジタルトランスフォーメーションによって社会・経済活動が大きく変化し、企業においても、特に「働き方」の領域において変化が顕著だと述べました。中小企業におけるリモートワーク環境の整備はまだ十分に進んでおらず、政府による支援の予算化でこれから加速すると予想されますが、大手エレクトロニクス/IT企業においてはすでに制度改革が進行しています。金若氏はその例として、NTTが今後も在宅勤務5割を継続する方針を発表したこと、東芝が2019年から計画していた全社変革5年計画にある原則H在宅勤務が加速されるであろうこと、日立製作所は20214月から在宅勤務を標準としたこと、dwangoが全社員を対象に原則在宅勤務を承認すると発表したことを挙げました。

また金若氏は、営業活動などを単純にリモート化することによる弊害も指摘し、商談のオンライン化、取引のペーパーレス化、イベントのバーチャル化だけではなく、オンラインコミュニティの創出、デジタル空間でのリッチコンテンツ提供といった新たな集客力、営業力の構築も必要であると提言しました。

 

製造業のデジタルトランスフォーメーション

濱口氏新型コロナウイルスのパンデミック対策として、各国間で渡航の規制がなされ、これによるエンジニアの海外での現場作業が困難になるなどの問題が発生していますが、こうした人に依存したシステムを補完するデジタル技術について、濱口氏(マイクロソフト)はいくつかの事例を紹介しました。

ASMLが採用したリモート作業支援システムでは、装置保守のエキスパートと現場にいるリモート作業者をネットワークでつなぎ、エキスパートは作業者が装着したカメラ映像を見ながら、作業指示を音声と共に作業者が装着したゴーグル上にグラフィカルに提供し、複雑な作業を支援することに成功しています。ここで重要になるのはナチュラル・ユーザー・インタフェース(NUI)を導入して、作業者が直感的に指示内容を理解できるようにすることです。

また、AIの活用による工場オペレーションの変革も、オンサイトの作業者を抑制するためには必要となります。濱口氏は半導体業界への適用例として、装置メインテナンス後のキャリブレーションエラーによるダウンタイムを削減するために、深層強化学習によりキャリブレーションを自動化するAIの自律的な仕組みを実現したケースを説明しました。

 

リスタートに向けた企業戦略

コロナ危機は、前述した「働き方」の領域以外にも、グローバルなビジネス環境を含めさまざまな変化を起こしており、企業は変化に則った戦略の見直しをする必要があります。小柴氏(ボストン・コンサルティング・グループ)は予想される変化領域を示し、その中からサプライチェーンの変化について論じました。

小柴氏によると、グローバルサプライチェーンは安定調達のために、国産化、冗長化が進み、全体としてのコスト増は避けられません。また米中のような地政学的対立も相まって、貿易総額は2023年までに以前の水準に回復しても、貿易路間の金額は大幅にシフトすることが予測されます。企業はサプライチェーンの短期的な回復力の向上と、中長期的な変革を進めるために、安定とコストのトレードオフの評価、リスクの可視化が必要となります。

また、小柴氏は14%の企業が過去の不況において売上・利益率の成長を実現していることを指摘し、逆境においても成長への積極投資、機会をとらえたM&Aの実行、そして他社よりも迅速に変化に対応することが提言されました。

 

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