半導体サプライチェーンで発生しているチップ供給不足に、ワシントンの政策立案者が注目しています。世界的なパンデミックにいらだつ半導体ユーザーは、チップ不足と、それによる川下のエンドユーザー企業や消費者に及ぼす影響に警鐘を鳴らしています。影響を真っ先に受けた世界の自動車メーカーは、工場閉鎖や減産にいたっています。
2021年2月、バイデン大統領は、米国のサプライチェーンを点検し、確保するための大統領令に署名しました。この見直しの目的は、国内の製造能力の再活性化と再構築、研究開発における米国の競争力の維持、そして高賃金雇用の創出にあります。この大統領令の下で、米国はサプライチェーンを強化するために、同盟国とより緊密に協力することになるでしょう。大統領令では、いくつかの重要なセグメントの点検を指示していますが、これには半導体製造と先進パッケージングが含まれています。商務省は、米国の半導体サプライチェーン全体のリスクを特定し、大統領令発行から100日以内にこれらのリスクに対処するための政策提言を行う予定です。
米国議会は、ホワイトハウスと連携して、サプライチェーン問題に対処するための様々な措置を検討しています。最近、上院財政委員会は、米国の税法が国内生産に及ぼす影響についての公聴会を開きました。Ron Wyden議員(オレゴン州選出民主党)とMike Crapo議員(アイダホ州選出共和党)の両委員長は、国内製造業を強化するために超党派で協力し、委員会が管轄する経済的手段を使用する考えを強調しました。
委員会は、国内の半導体製造に大きなインセンティブを与える2つの法案について議論しています。第1は、半導体製造に対する投資税額控除(ITC)です。これは昨年の「CHIPS for America Act(Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors for America Act)」に含まれていますが、2021年度国防権限法(NDAA)等の半導体インセンティブには含まれていません。ITCが導入されれば、米国の税制に予測可能性と安定性がもたらされ、半導体業界の大規模かつ長期的な投資を促進することができます。
2つ目は米国イノベーション・雇用法(American Innovation and Jobs Act)です。2022年に施行される研究開発費の償却義務を廃止し、スタートアップや小規模企業還付税額控除を拡大しました。研究開発と製造に対する国内のインセンティブを強化することは、米国を他国と対等な立場に置くための重要なステップであり、半導体業界における米国の継続的なリーダーシップを促進するでしょう。
上院院内総務のチャック・シューマー議員(ニューヨーク州選出民主党)は、中国に対する米国の競争力を強化するための一連の措置の法案を作成する意向を表明しました。このパッケージには、NDAAで承認されたマイクロエレクトロニクス分野の研究開発、および商業助成金プログラムへの資金が含まれると伝えられています。上院はこの法律を4月に審議する予定です。
SEMIは、米国政府が半導体産業に対して、国内製造および研究開発奨励に新たな焦点を当てたことを、高く評価しています。半導体産業こそが、無数の技術を可能にし、米国経済全体の分野でイノベーションを推進し、重要なインフラと防衛システムに不可欠な電子システムを動かしているからです。我々は、米国議会及び米国政府の政策立案者と協力し、国内の半導体エコシステム全体への支援を進める考えです。
Kimberly Ekmarkは、SEMIのパブリックポリシーおよびアドボカシーの担当ディレクターです。