MEMSとセンサーは、IoT、ウェアラブル、スマートホーム、デジタルヘルス、精密農業、自律走行車、ロボット、環境モニタリングなど広範な分野を通じて、私たちの生活を改善する有望技術として、あらゆる技術の中で突出した存在となっています。
従って、毎年春に米国で開催されるMEMS & Sensors Technical Congress(MSTC)で、MEMS&センサー業界の成長が最も関心を集めているのも当然といえます。5月23日~24日にマサチューセッツ州のMITキャンパスで開催される今年のイベントは、OMDIAのMEMS&センサー担当シニアリサーチアナリストであるNora Houlihan氏による市場のアウトルックの講演で幕を開けます。本稿では、Houlihan氏に講演のプレビューと彼女のバックグラウンドについてのインタビューをお届けします。
SEMI:最近の半導体セクターの減速がMEMS市場に与える影響は、他分野と比較して大きいですか、それとも小さいですか?
Houlihan氏:MEMS市場は、特にワイヤレス(スマートフォンやタブレット)業界向けでは、製品が消費者需要と密接に結びついているため、若干の減速が見られます。しかし、産業、車載、ヘルスケア、環境などコンシューマエレクトロニクス以外の用途では、需要が旺盛です。
SEMI:MEMSの成長には、これまで通り目を見張らせるものがあります。今後5年間で大きな成長が期待できるMEMSデバイスは何でしょうか。
Houlihan氏:MEMSスピーカーは、低価格化と共に、サイズ、再生音域、音質での優位性が定着することで、今後5年間に大きな成長が見込まれます。MEMSの小型化が進むと、設計者は製品全体のサイズはそのままで、内蔵するデバイスや機能を増やすことができます。これは、特にウェアラブル製品などでは重要です。
SEMI:あなたの博士課程でのナノスケール工学を専攻し、蝶をモチーフにしたセンサーについて研究されましたね。センサーの分野で動物から学ぶことは多いのでしょうか?
Houlihan氏:センサー業界に限ったことではなく、一般的に自然から学ぶべきことはたくさんあります。植物や動物は、何百万年もの時間をかけて、体を冷やさないように、あるいは外敵から身を守るように進化を遂げてきました。それらは、新しいセンサーやナノテクノロジーの設計にインスピレーションを与えてくれます。私がモルフォ蝶を研究したのは、モルフォ蝶の羽にナノ構造があり、湿度や蒸気、非凝縮性ガスの変化に敏感に反応して色を変えているからです。
クリーンルームで同じようなナノ構造を製造し、対象となるガスや化学物質に合わせてセンサーを校正することは容易にできます。自然界の仕組みを分析し、その概念を自分たちが製造する製品に適用することは素晴らしいことです。自然を利用した研究は、ほぼ無限に存在すると言えるでしょう。人類は、まだ自然のごく表面しか見ていないのです。
SEMI:MEMSの分野では、新興企業と大企業のバランスがとれていると思いますか?
Houlihan氏:はい。新興企業から生まれた新技術が、大企業の手によって市場に投入され、あるいは自らその壁を乗り越えるのを見ると刺激を受けます。MSTCのようなイベントのおかげで、小規模な企業は自分たちの研究を披露し、イノベーションを継続するためのサポートを受ける機会を得られるのです。
SEMI:MSTCで、他のセンサー技術の専門家と意見を交換したいことがあれば教えてください。
Houlihan氏:IoTがMEMS業界にどのような影響を与えるかについて、詳しく知りたいと期待しています。数年前、「トリリオン・センサ」という大きな数値目標が注目されましたが、それが現実にどうなっているのかを知りたいのです。組み込みセンサーの数やセンサー・プラットフォームのユビキタス化により、実現の可能性は十分にあると思います。
SEMI:ご自身のことをお尋ねしますが、休暇は海と山のどちらがお好きですか?
Houlihan氏:山です!私は(ニューヨーク州北部の)アディロンダック山地でハイキングやキャンプをして育ちました。秋に色づく木々を見るのが大好きです。
Nora Houlihan博士について
Nora Houlihan博士は、OMDIA Components & Devicesで、MEMS及びセンサーを担当するシニアリサーチアナリストです。
Houlihan氏は、2022年春にOMDIAに入社しました。それ以前は、サウスカロライナ州チャールストンのザ・シタデルで化学学部の非常勤講師を務めていました。Houlihan氏は、ニューヨーク州アルバニーのSUNYポリテクニック・インスティテュートでナノスケール工学の博士号を取得しています。また、ニューヨーク州ポツダムのクラークソン大学で化学の理学士号を取得しています。
Timothy Brosnihanは、SEMIのMEMS and Sensors Industry Group (MSIG)のエグゼクティブ・ディレクターです。