私たちが呼吸している空気は大切なものですが、大気は人為的な排気物質によって汚染されるがままとなっています。それでも、地球のために温室効果ガスの排出とその背後にある人間の行動を、汚染物質のレベルを測定するガスセンサーの助けを借りてコントロールできるという希望があります。
数多くの大気汚染物質の中には、私たちの健康に有害なものもあります。図1は、上位7つの汚染物質、その主な発生源、健康への影響を示しています。大気質指数は、粒子と4つのガス(一酸化炭素、オゾン、二酸化硫黄、二酸化窒素)の値を組み合わせて計算されます。良いニュースは、これらの汚染物質のそれぞれをモニターできるガスセンサーが市場に出回っていることです。
図1 – 上位7つの汚染物質(一酸化炭素、粒子状物質、二酸化窒素、オゾン、揮発性有機化合物、二酸化炭素、二酸化硫黄)の健康への影響。
出所:EPA Air Sensor Guidebook
ここで課題となるのが、ガスセンサーの多くの最終ユーザーが、様々なベンダーから提供されているセンサーの性能特性をどのように比較すれば良いかを理解していないことです。SEMIは使用者がこのハードルを乗り越えるお手伝いをしています。SEMI-MSIGは今年、Device Working Groupの中にガスセンサー標準規格(スタンダード)を開発するグループを設置しました。その目的は、試験方法、信頼性条件、パッケージング、通信インタフェースなどのガイドラインを定義して市場の発展を促すことにあります。重要なのは、この標準化によって、センサーの使用者が競合製品の中から最適なセンサーを選べるようになるということです。
SEMI-MSIG Device Working Groupは、主要なガスセンサー企業および装置メーカーの専門家によって構成されています。ガスセンサーを提供する企業の皆様が、この住宅、工場自動化、自動車、家電、医療等の分野での大気質改善を図るグループに参加されることを歓迎いたします。ひとつの有望な分野がスマートフォンなどの家電製品で、こうした機器のユーザーの大気質への関心が高まっています。
MEMS & Sensors Industry Group(MSIG)Device Working Groupは、2019年初めに組織されました。そのミッションは、MEMSおよびセンサーデバイスとプラットフォームの技術仕様、業界スタンダード、ベストプラクティスを開発することにあります。MEMSおよびセンサーの利用と拡大を全世界で促進することが目標です。
汚染物質 | 健康影響 |
一酸化炭素(CO) | 体内の臓器や組織に届く酸素の量を減らし、心臓病を悪化させ、入院やEDの受診につながる。 |
粒子状物質(PM2.5/PM10を含むPM) | 心臓や肺の病気、非致死的な心臓発作、不規則な心拍、喘息の悪化、肺機能の低下、呼吸器症状の増加などで早死にする可能性。 |
二酸化窒素(NO2) | 呼吸器症状を悪化させ、特に小児、高齢者の喘息患者の入院率を高め、呼吸器感染症にかかりやすくする。 |
オゾン(O3) | 胸の痛み、咳、のどの炎症、鼻づまりなど、さまざまな健康問題の引き金となる可能性がある。気管支炎、肺気腫、喘息を悪化させることがある。 |
VOC(揮発性有機化合物) | 癌や他の深刻な健康問題を引き起こす有毒な大気汚染物質もある。 |
CO2(二酸化炭素) | 頭痛、めまい、いらいら、呼吸困難、発汗、疲労感、心拍数増加、血圧上昇、昏睡、窒息、痙攣など様々な健康影響がある。 |
二酸化硫黄(SO2) | 喘息患者の既往の呼吸器疾患を悪化させ、咳、喘鳴、胸の締め付けなどの症状を引き起こす。 |
表1 – 主要7種の汚染物質とその健康影響。
出所:EPA Air Sensor Guidebookv
Device Working Groupはこれまで慣性センサーに活動を集中していましたが(このチームのアウトプットの例として、慣性センサーのIEEE2700規格を参照してください)、2020年にガスセンサーに焦点を移し、近いうちに他のタイプのセンサーにも活動範囲を拡大していく予定です。Bosch、TDK Invensense、ルネサス、Infineon、Analog Devices、STMicroelectronics、GE、Intelなどの業界リーダーが毎月集まり、一連の新規取り組みについて戦略を練っています。
SEMI-MSIG Device Working Groupへの参加に興味がおありでしたら、MEMS & Sensors Industry Groupのディレクター、カルメロ・サンソニ(Carmelo Sansone)までご連絡ください。