Tokyo Electron Europeのサービス戦略・エクセレンス担当シニアバイスプレジデントであるEyal Shekel氏に、人工知能(AI)がスマート製造に与える影響や、製造装置のスマート化技術による半導体製造を進化について話を聞きました。
Shekel氏は、SEMI Technology Unites Global Summit(2021年2月15-19日、オンライン開催)の中で2月17日に提供されるSEMI Fab Management Forumの講演者です。
SEMI:AIはスマート製造の重要な実現技術です。最新のトレンドはどうなっていますか?
Shekel:最先端ノードや非常に複雑な3次元半導体形状の出現により、装置開発や大規模な計測技術の使用から歩留まり阻害要因のモニタリングまで様々な分野で、市場投入までの時間が長期化し、コストが増加しています。
AIは、将来のデバイスのニーズを満たすために適切な材料やプロセス技術を決定するマテリアルズインフォマティクス分野で、重要なツールとなりつつあります。新しい材料やプロセスと合わせて、バーチャルメトロロジーを開発・導入することで、製造プロセスの各段階でお客様のデバイスウェーハを、ほぼ絶対的なリアルタイムで正確にモニタリングすることが可能になるでしょう。
SEMI:R&Dから量産立ち上げのプロセスで、データ分析はどのように有効でしょうか?
Shekel氏:AIを活用したマテリアルズインフォマティクスの新たな研究分野から、高効率な製造プロセスの発見と最適化を導くツールが誕生しています。例えば、東京エレクトロンでは、エッチングレート向上のためのプロセスと材料の相互最適化法を開発しています。
半導体製造プロセスの歩留まりを監視・管理するためには、直接計測をすることが重要ですが、時間とコストがかかるため、すべての生産ウェーハを監視することは困難です。しかし、ディープラーニングAIにより、製造装置のデータと過去に処理されたウェーハの計測変数から、すべてのウェーハの計測値が予測可能になりつつあります。これにより、トータルな品質管理とラン・ツー・ラン管理が可能になり、さらに生産コストとサイクルタイムの同時削減が可能になります。
SEMI:TEL Service Advantageについて説明いただけますか?
Shekel氏:TEL Service Advantageは、お客様のニーズに合わせたサービスプランを選択できる、TELのグローバルサポート体制です。また、お客様のご要望や技術的な進歩に対して迅速に対応できる体制になっています。TEL Service Advantageは、お客様の装置メンテナンスの効率化、および当社製装置の生産性を最大限に引き出す様々なサポートプランをご提供します。お客様のニーズに合わせてプランを組み合わせ、最大限の効果を得ることができます。
TEL Service Advantageを支える重要な要素の一つが「TELeMetrics™」です。TELeMetrics™は、リモート接続を利用して各種センサーからの装置データを分析し、その分析結果に基づいて、装置のスループット改善や予知保全等、お客様固有の課題にあわせたソリューションを提供しています。
SEMI:パンデミックに際して、AIは助けになりましたか? サクセスストーリーをシェアいただけますか?
Shekel氏:パンデミックの影響で世界的に渡航が制限されたため、多くの場合、お客様を訪問することは非常に困難であり、また不可能な場合もありました。当初はスマートフォンや電子メールなどの標準的な通信機器で対応していましたが、トータルサポートセンター(TSC)によるリモートサポートを強化しました。
その後も、TELは「Service Advantage」プログラムをいち早く展開し、以下のような先進的なツールや手法を追加で利用するようになりました。
- AR(拡張現実感)を導入し、お客様とTELエンジニアを遠隔支援
- TEL装置へのセキュアなリモート接続を実現し、パラメータやログを調査や、設定の変更を実行
- テレビ会議システムや工場内の研修ツールでトレーナーをつなぎ、世界各地の技術者のスキルアップを図る遠隔研修コースを実施
- ARゴーグルを使用した装置の立ち上げとトラブルシューティング
- TELのグローバルテクノロジーデータベースを拡張し、マルチ言語検索機能を実装
あるヨーロッパの顧客サイトでの重要なプロジェクトが、優れたサクセスストーリーを提供しています。上記のすべてのアプローチを用いて、現地チームと協力して、大きな遅れなく装置を立ち上げることができました。このことは、お客様から高く評価されましたし、当社にとっても非常に重要なことでした。
SEMI:未来について何を予測しますか?
Shekel氏:世界の技術インフラは急速に発展し、拡大し続けています。5Gネットワーク、IoT、高度なセンシング機能などの要素は、ニューロのようなインフラをベースにした、私たちが汎用AIと呼ぶものに発展して行くでしょう。自動学習は領域を超えて広がり、内部ロジックや推論により、現在は手作業で行われている多くの作業を自動化するようになるでしょう。特に私たちの業界では、汎用AIによって、労働者は現在進行するオペレーションよりもデータ分析や将来の高度な研究開発に集中できるようになるでしょう。
SEMI:テクノロジーはどのように私たちを団結させるのでしょうか?SEMI Technology Unites Global Summitに何を期待しますか?
Shekel氏:テクノロジーが私たちを結びつけたのは、この150年のことでした。電信や電話から始まったコネクティビティが、遠距離で情報を交換するために使われました。今日では、テレビ会議機能、AR、通信技術の向上により、地理的に分散している人々を結びつけることがはるかに容易になりました。このことは、特にこのパンデミックにおいて明らかであり、価値のあるものとなっています。事実、私たちは、装置サポート、トレーニング、顧客対応など、すべての重要な活動を、たとえ私たちが直接立ち会うことができなくても、継続して行うことができるのです。
SEMI Technology Unites Global Summitは、普段セミコンの展示会でお会いすることの多い方々やお客様とのつながりを保つ絶好の機会です。
また、そうでなければ出会うことのできない多くの人とのネットワークを築くことができます。さらに、スピーチやプレゼンテーションをいつでも見ることができます。通常は展示会とイベントが同時に開催されるので、普段は見逃してしまうプログラムもありました。
Tokyo Electron Europeのサービス戦略・エクセレンス担当シニアバイスプレジデントであるEyal Shekel氏は、半導体業界で27年のキャリアを持つベテランです。イスラエルの工科大学Technionを機械エンジニアとして卒業後、Applied Materialsに入社。1997年にヨーロッパの東京エレクトロン(TEL)に転職し、イスラエルのリージョナルサービスマネージャーを務めた後、すぐに同社のジェネラルマネージャーに任命されました。2005年よりTEL Europeの上級管理職に就任。2019年までは上級副社長としてTEL Europeのサービスおよびサポート業務を監督していました。現在は、日本のTELグローバルサービス委員会の共同リーダーを務めています。