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2020-09-16

クリティカル・サブシステム・サプライヤの 新型コロナウイルス感染拡大への対応 堀場エステック 小石社長に聞く

新型コロナウイルス感染対策によって半導体需要が増加し、半導体産業の設備投資は昨年から大きく回復しようとしています。2017年~2018年にかけてのメモリーブームでは、材料と共に製造装置のクリティカル・サブシステムや部品の不足が発生しました。今回の活発な投資に際しては、パンデミックによってサプライヤの生産へ影響がでる可能性も考えられ、その安定供給と今後さらに増加が予測される需要への対応に関心が寄せられています。

 

クリティカル・サブシステムの代表的製品であるマスフローコントローラー(MFC)の世界市場をリードする株式会社堀場エステックの代表取締役社長 小石秀之氏に、同社における新型コロナ対策についてオンライン・インタビューでお話をうかがいました。

 

 

SEMI:堀場エステックではどのような新型コロナウイルス対策を講じられていますか?

 

konishi-horiba小石氏:当社では、従業員の安心・安全の確保と、顧客への製品の安定供給の両立を目指し、対策にあたりました。416日に政府が緊急事態宣言を日本全国へ発令したことを契機に、本格的な対策実施がスタートしています。

 

当社を含むHORIBAグループでは、COVID-19対策委員会を組織し、世界各地のグループ企業からの情報をここに集中することで、迅速かつ効果的な対応な対策を講じました。各リージョンのパンデミックの状況はテレビや新聞でも報道されますが、現場からの生の声と最新の情報を集めることが重要だと判断したためです。

 

全社的に今も在宅勤務を活用していますが、工場においては生産を維持する必要から、密をさけディスタンスをとること、外部からの人の出入りを制限すること、また従業員の持ち場以外の施設への立ち入りを制限することで対応しました。また、全ての部屋の入口には消毒液を設置し、全社員にマスクの配布もしました。

 

semi-blog-image-20200916_3ディスタンスの確保の具体的な施策としては、食堂の席数を削減し、また一人あたりのオフィススペースを拡大するために会議室をオフィスに改造しました。従業員の立ち入り制限については、当社工場には複数部門の生産施設が敷地内に併存している場合があり、エリア間に「見えない壁」をつくり、持ち場以外のエリアへの立ち入りを制限しました。幸いにも現時点で従業員への感染はありませんが、今後、仮に発生することがあっても、接触者が限定されることで従業員の感染リスクが下がりますし、工場全体の閉鎖を避けることもできます。

 

SEMI:堀場エステックのサプライチェーンの維持では問題はありませんでしたか?

 

小石氏:当社のサプライチェーンは海外にも展開しており、中国にもサプライヤがありますが、幸いなことに大きな供給の問題は発生していません。また、海外のサプライチェーンに何かあったとしても、クリティカルな部品については、国内企業からの調達も多く、致命的な問題にならないように体制を整えています。

 

国内のサプライヤについては洛楽会というコミュニティを作って、緊密な関係作りをしています。名称から京都企業の集まりのように思われるかもしれませんが、もちろん日本全国のサプライヤの皆様に参加いただいています。緊急事態宣言後の6月には臨時にお集まりいただき、新型コロナウイルス関係の各社の情報交換と協力のお願いを申し上げ、危機意識の共有をいたしました。

 

今回の危機にあたっては、当社のサプライチェーンの国内外のバランスがうまく機能して、大きな問題を回避することができたと考えています。

 

SEMI:こうした対策に対する前もっての準備はあったのでしょうか?

 

小石氏:当社では、2014年にステンドグラス活動というプロジェクトを立ち上げ、ダイバーシティ、働き方改革、そしてGood Place制度と呼んでいる在宅勤務率向上にむけた取り組みをしていました。そのひとつのソリューションとして、Web会議システムを導入し、会議のオンライン化を進めていたため、新型コロナウイルス感染抑制のための在宅勤務導入にあたってもIT部門の努力も有り大きな混乱はありませんでした。

 

在宅勤務やオンライン会議は、コロナウイルス対策と切り離しても、良い面が多々あります。社員にとっては、通勤時間を生活の質の向上など、会社以外の目的に振り向けられますし、オンライン会議なら、大勢の参加者が移動をしなくてもコミュニケーションがとれます。

 

semi-blog-image-20200916_4HORIBAグループでは年2回、各事業分野のトップとグループ企業トップ、約100名が3日間にわたり議論をするGlobal Meetingを開催していますが、今年はこれもオンラインで実施しました。安全かつ経済的な開催ができてよかったと思います。ただし、米国とヨーロッパと日本という時差の問題は、今後さらに工夫する余地があるかもしれません。

 

SEMI:今後予想されるMFCの需要拡大への対応はいかがですか?

 

小石氏:当社では2018年にMFCの主力工場である熊本県の阿蘇工場を拡張し、生産能力を倍増させました。工場内のスペースにも余裕をもたせたことで、2021年以降に予測される需要拡大に際しても対応できるだけの生産キャパシティーを構築でき、全世界のユーザーに安定供給ができるものと考えています。

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堀場エステック阿蘇工場(熊本県阿蘇郡西原村)

 

もちろん、新型コロナウイルスは収束したわけではなく、またワクチン接種などの治療法も準備が整っていませんので、今後も最大限の感染対策を実施し、生産体制の両立を図る必要があります。

 

SEMI:対外的な新型コロナウイルス対応への貢献はありますか?

 

小石氏:半導体はニュー・ノーマルを実現するエレクトロニクスの重要部品であるだけでなく、新型コロナウイルスの治療法やワクチンの開発においても重要な役割を果たしており、堀場エステックとしては、MFCを含むキーコンポーネントの安定供給を維持することが最大の貢献だと思います。

 

semi-blog-image-20200916_6HORIBAグループでは、これに加えて、2つの重要な貢献活動に参画しています。ひとつは、「COVID-19と戦う知財宣言」です。新型コロナウイルス感染症のまん延終結を唯一の目的とした行為に対しては、世界中の知的財産のオーナーに事前に同意を得ることで、一切の対価や補償を求めることなく、保有する特許権・実用新案権・意匠権・著作権の権利を一定期間行使しない宣言をするよう呼びかける運動です。堀場製作所はその発起人18社* に加わっており、微力ながらパンデミック収束を支援しています。

 

また、国立研究開発法人産業技術総合研究所が代表機関として進める、簡便・迅速な新型コロナウイルス抗体検査チップシステムの開発にも堀場製作所は参画をし、開発したシステムを医療機器として実用化するための装置開発を担当しています。堀場製作所が培ってきた、免疫測定法における知見と検体検査技術を活かし、早期の開発実現に取り組んでいます。

 

SEMI:今回の危機から学んだこととは何でしょうか?

 

小石氏:この新型コロナウイルス危機は、私どもが過去から経験したことのない、未曽有の危機です。早く通常に戻ってほしいと誰もが願うところですが、実際には以前とまったく同じに戻ることはできないでしょう。

 

ITを活用した業務の効率化という点では、日本は諸外国に遅れをとっていると感じる部分がありましたが、今回の危機で一気に加速された感があります。新型コロナウイルスに対応する中で、デジタル化による「働き方改革」を企業も従業員も必死に考えることになりました。ニュー・ノーマルといわれる新しい社会の在り方の中で、こうした変化を本当の意味で業務に取り入れることができなければ、企業が生き延びることは難しいと思います。

 

その反面、従来のアナログなコミュニケーションの重要性を再認識することもありました。今年は採用面接をすべてオンラインで行いましたが、同じ空気の中で向きあわないと分からないこともあります。採用された学生が社員となった時、面接時と印象が違うということもあるかもしれません。本当にシリアスな話をする場合は、はやりFace-to-Faceで議論が必要な場合があるということです。

 

企業としては、どのような場合であっても、事業の継続、製品の安定供給、サプライチェーンの維持が必要となりますが、今回のような全く想定できていなかった危機を経験することで、当社としても改善しなければならない部分がいろいろと明確になりました。また、事業継続計画についても、台風や地震といった災害対策が中心となっていたものを変更していく必要があります。この経験を今後に生かすことこそが、最も大切だと考えています。

 

* 発起人20社(五十音順):味の素株式会社、株式会社エスアールエル、NECソリューションイノベーション株式会社、株式会社LSIメディエンス、キヤノン株式会社、京都大学医学研究科付属ゲノム医学センター、コニカミノルタ株式会社、ジェノコンシェルジュ京都株式会社、株式会社島津製作所、シャネル合同会社、株式会社椿本チエイン、帝人株式会社、トヨタ自動車株式会社、株式会社ニコン、日産自動車株式会社、株式会社堀場製作所、本田技研工業株式会社、三井情報株式会社、ヤフー株式会社、ローム株式会社