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2021-02-08

バイタルサイン遠隔モニタリング技術の先端に立つimec

今回のパンデミックによって、これまで確立していた医療の枠組みは再定義されました。何度も通院するような古いモデルは、もはや感染リスクがあり成り立ちません。現在、焦点となっているのは、健康評価のための広汎なバイタルサインの遠隔モニタリングソリューションと自動データ処理です。

ソーシャルディスタンスに適した、ウェアラブル、埋め込み型、挿入型、摂取型等の技術を使った長期モニタリングが、個人ならびに集団の医学的異常の検出に役立つでしょう。小型で新技術を活用したバイタルサインの遠隔モニタリングについて、imecのテクニカルスタッフのプログラムマネージャー兼プリンシパルメンバーであるCarlos Agell氏にお聞きしました。Agell氏は、SEMI Technology Unites Global Summit(2021年2月15-19日、オンライン開催)の中で2月19日に提供されるSEMI MedTech Forumの講演者です。

 

SEMI:診断技術をけん引するイノベーションとは何でしょうか?半導体産業はどんな役割を担うのでしょうか?

 

Agell氏:COVID-19が引き金になって、遠隔診断が明らかに必要性となりました。その代表例が、呼吸モニタリングとSARS-CoV2検査技術です。

COVID-19の最も明らかな症状のひとつが呼吸ですが、この点で医療技術には大きなギャップがあることが浮き彫りにされました。小型の携帯デバイスを使った広範な呼吸データの連続モニタリング技術の必要性です。imecでは、このギャップを埋める実現可能なソリューションを提供する技術として、生体インピーダンス法によるチップセットやスマートフォン対応のセンシングデバイスに取り組んできました。半導体産業の新しいセンシング法によって、携帯型遠隔呼吸モニタリングを改善することが可能です。

imec一方で、SARS-CoV2の診断技術は、現在の健康危機において最も重要なものとなっています。この分野で求められているのは、検査の簡素化、迅速化、低コスト化です。また、現実的な観点から、社会はウイルスの拡散を防ぐ必要があります。imecは、先陣を切って半導体ベースのソリューションを導入し、シリコンベースの技術で被験者の呼気からエアロゾルを採取することで、COVID-19検査のゴールドスタンダードであるPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法分析の簡素化を目指しています。

呼気中のウイルス量を測定することで、感染の明確な指標が得られます。また、経済的回復を促進するためには、迅速検査によるウイルス量の高い被験者の検出が鍵となります。費用対効果が高く、迅速でありながら信頼性の高いSARS-CoV2検査ソリューションは、施設の入口や飛行機の搭乗口でのゲート検査などで利用すれば、旅行やホテル、レストランなど深刻な経済的打撃を受けた業種でも対面サービスが可能になり、ビジネス再開を促進する上でも有効です。

 

SEMI:imecの医療分野の改善の取り組みについて、もう少しお聞かせください。

 

Agell氏:imecは、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、COVID-19などの呼吸器系疾患の治療に必要な、人目につかない遠隔呼吸モニタリングの開発を活発に進めています。こうしたソリューションは、シリコンチップセット、センサー統合、アルゴリズムを組み合わせてによってセンサーデータを解釈します。

生物学的基礎を理解するための取り組みの一環として、imecの*1ハートオンチップ 用マルチ電極アレイ(MEA)プラットフォームは、患者由来の心筋細胞を研究するために、高密度電極(444444電極/mm2)による、細胞外・細胞内の記録、電気刺激の印可、インピーダンス計測を行う比類のない機能を提供します。

imecは、呼気分析(エアロゾルキャプチャ)をベースした迅速かつ低コストのSARS-CoV2検査装置を、分析時間5分を目指して開発しています。このようなツールは景気回復の鍵を握るものであり、imecは2021年後半にブリュッセル空港でプロトタイプ装置の大規模試験を計画しています。

imecは、パンデミック中に使用するソーシャルディスタンス対策ツールを開発するスピンオフや外部企業を支援してきました。医療はimecの重要な戦略分野であり、複数の部門で、細胞選別技術や多電極アレイから、非侵襲的な心肺・神経モニタリングのためのセンサーやシステム、医療データの高度な処理や試験用のツールに至るまでのお互いに補完しあうテーマに取り組んでいます。

 

SEMI Technology Unites Global Summit

 

SEMI:パンデミックは遠隔診断にどんな影響を及ぼしましたか?この分野でどんな新しいことがあるでしょう?

 

Agell氏:パンデミックによって、遠隔診断の進歩は加速しました。例えば、遠くにいる医師との面談が可能になり、遠隔医療がうまく立ち上がりました。しかし、私の考えでは、これは出発点に過ぎません。遠隔医療の医師は、体温、体重、血圧などの診察室の診療時と同じ健康データを遠隔収集することが必要を感じるでしょう。その後すぐに、医師はさらに多くのデータを必要とするようになり、膨大な量のデータを分析するためのアルゴリズムが開発され、遠隔診断の進歩は次の段階に拍車をかけることになります。つまり、医療は医師中心の枠組みから、患者中心のソリューションへと大きく移り変わるでしょう。願わくは、この変化が健康へのよりプロアクティブなアプローチを促進し、病人を治療する時代から、予防と健康維持へと脱却すること期待しています。

 

TUGS imec patch

Imecの呼吸モニタリング研究用デバイスは、医療パッチの形態をとる。

 

SEMI:感染症診断以外に、パラダイムシフトを起こすだろうソリューションはありますか? 遠隔診断のニーズ拡大に関連した世界市場のトレンドを2つ挙げることができますか?

 

Agell氏:医療のパラダイムシフトは、ハイパーコネクティビティのトレンドによって大きく促進されることになるでしょう。通信は高速で広範囲に及んでいます。医療も、小売、銀行、取引、ビジネス全般と同様に、通信回線を介して部分的にリモートで行うことができることが、今回のパンデミックで証明されました。

新しい診断法の性能を証明することは必要ですが、それが困難であることは明らかです。医療分野は厳しく規制されており、またこの市場は一般に保守的であるからです。しかし、アルゴリズムと自動化された診断法が徐々に医療界の信頼を獲得するトレンドが、明らかに進行しています。臨床試験や規制当局への申請は有効ですが、一定期間市場に出回ったソリューションが医療関係者(および一般の人々)の全体的な信頼を得たとき、明らかな証明が得られるでしょう。昔、GPSナビゲーション技術でも見られたように、クリティカルマスを満たすことで一般的に受け入れられるようになるのです。

医療市場に関しては、パンデミック後の最初のシナリオとして、遠隔医療からハイブリッドモデル(外来診療と遠隔医療のミックス)への揺り戻しが予想されています。これは両方の良いとこ取りに見えますが、その有効性と市場で生き残れるかは未知数です。

パンデミックによって加速された明確な市場トレンドは、家電製品における保健機能のコモディティ化です。家電製品の会場を覗いてみると、時計、スマートフォン、体重計、さらにはオフィスの椅子やクッションまでもが、健康情報を収集する日が遠くないことがわかります。

 

MEA

imec MultiElectrode Array (MEA)チップセット

 

SEMI:テクノロジーはどのように私たちを団結させるのでしょうか?SEMI Technology Unites Global Summitに何を期待しますか?

 

Agell氏:私は、このパンデミックについて大変楽観的な見方をしています。世界的な健康危機が招いた被害をテクノロジーが食い止めると信じています。テクノロジーは私たちを団結させるだけでなく、命を救うことにもつながるのです。

SEMI Technology Unites Global Summitに個人的に期待しているのは、半導体業界がパンデミックや今後のパンデミック後のシナリオにどのように対応していくのかを、私たちが理解することです。健康に関連したトレンドが出てくるのか、またそれが一過性のものなのかに興味があります。以前の世界的なパンデミックの時には、半導体産業は存在すらしていなかったので、現在の状況は前例がないのです。

 

TUGS imec Agell headshotCarlos Agell氏は、imecのテクニカルスタッフのプログラムマネージャー兼プリンシパルメンバーとして、プロジェクトを監督し、研究トピックの戦略的方向性を決定しています。ウェアラブル機器開発のバックグラウンドを持ち、心臓病用ウェアラブル機器の分野でFDA承認を受けた2つの医療機器の開発でリーダーシップをとりました。また、アクティブ医療機器の次世代国際標準を開発する標準化委員会のオランダ支部のメンバーでもあります。Agell氏は、カタルーニャ工科大学(スペイン)とカリフォルニア大学アーバイン校(米国カリフォルニア州アーバイン)で電子工学とECCSの2つの修士号を取得しています。

 

*1生体機能チップのひとつ。チップ上にMEMS技術を利用してマイクロ流路などを構成し、臓器の培養細胞を組み合わせることにより、従来の人工臓器ではできなかった生体機能を再現する。ハートオンチップは心臓機能を再現する。

 

原文はこちら:https://blog.semi.org/technology-trends/remote-vital-sign-monitoring-technologies-help-drive-new-standard-of-healthcare