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2022-03-27

スマート・マニュファクチャリング専門家が語る米国の人材不足解消策

深刻な半導体デバイスの不足により、半導体業界の人材不足があらわになりました。この問題に対して大学側が産学協力の機会やスキル開発の強化・拡大を模索する中、半導体業界のリーダーや政府関係者では、解決策として産業界の投資や職業研修インフラ、政府の人材政策や投資を検討しているところです。

スマート・マニュファクチャリングの分野では、正規の研修機会の不足、人材ニーズを満たすための産学協力体制の欠如、急速に変化する必要技能、新しい技能を試す機会の欠如など、商用な問題がいくつも表出しています。半導体業界は、自動化によって生成される膨大なデータを管理し製造工程に適用するための人材の新たな技能分類を強く求めており、これが大学カリキュラムの変更を求める声となっています。 

本稿では、今後米国でデータを大量に生成する複数の半導体ファブが新たに生産を開始しても、半導体製造分野で人材不足に陥らないために、スマート・マニュファクチャリング人材をいかに育成すべきかについて、専門家の方々の見解を紹介します。

 

既存ファブにもスマート・マニュファクチャリングは適用可能か

SEMI Fab Databaseによると、米国には研究開発、プロトタイプ、フル生産ラインを含めると200以上の半導体ファブがあります。その大半は、小口径ウェーハの少量生産をしており、最新のスマート・マニュファクチャリング装置には適用できていません。

Smart Manufacturing半導体製造分野に進んだ工学部の学生たちは、既存のファブでイノベーションを起こす機会があまりないことに落胆することが多いようです。UCLA の Subramanian Iyer工学教授によると、米国では半導体製造業への就職を考える大学生が減っており、その理由は新卒者向けの求人がない業界だと考えてられているためです。電子機器製造業は時代遅れの技術を使う仕事であり、キャリアの選択肢としては魅力がないと一般に見られているのです。

業界のリーダーでありIEEEフェローのDan Gamota氏は、「ファブ運営企業の資金は限られており、彼らはイノベーションを推進する非常に高価な次世代ファブの建設コストと、既存ファブの運用効率の最大化を比較検討し、投資判断を迫られています」と述べています。「企業はリスク回避的であり、新しい製造技術革新を取り入れるリスクとそれに伴う数十億ドルのコスト負担には消極的になりがちです。こうした企業が従業員を新しい技術についてトレーニングすることはありません。当然のことながら、これまで投資してきた既存のファブの生産高を最大化することに労働力を集中させる方を選択するのです。」   

情報技術(IT)と運用技術(OT)の社内融合は、以前から半導体業界でも認められていました。しかし最近では、装置やその自動化、接続を含めてファブをサポートする工学技術(ET)機能が出現しています。

Smart Manufacturing「スマート・マニュファクチャリングからの利益を享受するには、IT、OTとETの高度な連携が不可欠です」とGamota氏は語ります。「デジタルツインを作成するために必要なデータ生成・処理ツールは、ETの機能でしか提供できません。この3つの技術が連携していないために、イノベーションや新技術の統合が妨げられ、最先端の電子機器の商品化を遅らせているのです。」

過去数十年の間に米国では製造業のオフショア化が進み、人材育成と製品の開発、製造がバラバラになった結果、人材不足を招いてしまいました。製造の自動化と製品の設計・開発が切り離されたことで製造業のイノベーションは遅れ、多くの学生をハイテク製造業から遠ざけたのです。

 

新たに求められる製造技能

デジタルツイン、高度な分析技術、最新ロボット工学の利用により、半導体製造は変革していますが、さらに教育をも変革する可能性があります。Applied Materialsのコンサルタントも務めるミシガン大学のJames Moyne氏は、これは製造ラインの作業者が、ライン自動化のために働く従業員へと自然に進化したものだと言います。「イノベーションを担うのはやはり人間の役割であり、半導体製造のような資本集約的な産業のスマート・マニュファクチャリングには、多くのイノベーションがあります。」

つまり、スマート・マニュファクチャリングによって工場の製造ラインに必要な作業員の人数は減るかもしれませんが、データ分析や応用の技能を持った特別な人材が大勢必要になるのです。Moyne氏は、新しく製造業で雇用される従業員の10%から20%は、高度な技能を有する分野横断的なエンジニアが必要になる指摘しています。

 

大学のカリキュラム改革の必要性

この新しいタイプの人材は、スマート・マニュファクチャリングを進展させるために、データとデジタルツールの使用をする専門的技能を身につけている必要があります。Gamota氏などのスマート・マニュファクチャリング関係者は、多くの大学と協力して急速に進化するテクノロジーに対応したカリキュラム改革に取り組んでいます。

スマート・マニュファクチャリングには幅広い思考力のある人材が必要です。物理学、予測分析、化学、ロボット工学などの知識を組み合わせて問題を解決する、創造的で既成概念にとらわれない思考ができる人材です。知識の幅に関わらず、これらの分野の知識を活用して複雑な問題を解決しイノベーションを起こす技能のある人はなかなかいません。

大学の教育に対するアプローチは、学士課程で一般的な知識を、大学院で専門知識を教え、博士課程で専門家の育成を目指すというのが常でした。大学が、工学、理学、人文科学を基礎的なITおよびコンピュータ技能に結びつけ、学際的カリキュラムを通じて学生の将来の職業に対する準備を支援できれば、製造業の新しい人材の育成も改善されるでしょう。

米国がイノベーション普及曲線に遅れないために必要な人材育成する方法のひとつに、大学が学際的な技能者育成に向けて学部を連携させ敏捷に対応することがあります。SEMIは、米国半導体製造業の人材育成ニーズに産学連携を通じて対応する米国半導体アカデミー(ASA)の設立提案に参画しています。

 

大学研究の重要性

半導体製造において、正確度と精度は非常に重要な要素になります。ロボット工学、AI、機械学習の進歩は、デバイスメーカーが競争力を維持するための精度向上とコスト抑制を可能にしました。しかし、半導体製造において誤差は許容されないため、オペレーターは新しい手法を試みることに消極的になりがちです。

Gamota氏は、「大学の業績を促進するのは発見ですが、業界の行動を促進するのは利益です」と述べ、半導体業界には研究や実験に多額を費やす余裕がないことを指摘しました。

半導体業界と大学のもう一つのギャップは、時間の尺度が大きく異なる点です。半導体ファブは生産サイクルの短縮を目指していますが、半導体産業のイノベーション推進は大学の研究に依存しています。したがって、大学が最新の装置を使って学生をトレーニングしていることが重要となります。Gamota氏は、先進的研究施設、シミュレーション訓練、場合によってはインターンシップに対するマッチングファンドに、政府の資金援助を利用できると指摘しています。

大学は、実験と思考のための安全な空間を提供します。産学双方が、教育、人材、専門知識のやりとりを通じて利益を得ることができるのです。

 

貴重な体験が得られるアプレンティスシップとインターンシップ

専門家は、アプレンティスシップ(企業での職業実習訓練制度)やインターンシップの制度をさらに発展させ、学生に現実世界の問題を解決する方法を探る実践的経験をさせることを強く推奨しています。効率性を重視する今日の半導体ファブは、新しいアイデアを試みるのに理想的な場所とは言えず、ブレーンストーミングや知識共有にも適していません。重視されるのは不良品ゼロ、歩留まり100%の生産です。

Smart Manufacturing製造業のインターンシップの経験者であるGamota氏は「IT/OTなど大半の業務が重視するのは投資収益率であることを、学生はすぐに理解します」と言います。「インターンシップでは、学生がイノベーションを考える時間と日々の教育を両立させる余裕はほとんどありません。しかし、産学の対話を促進することで、学生は今勉強していることをファブの現実問題を結び付けることができるようになるでしょう。」

ファブの外では、James Moyne博士がインターンシップで大きな成功を収めています。博士は、シンシナティ大学と共同で、ユニークな学生インターンシップ制度を運営しています。学生が開発したプログラムをApplied Materialsのソフトウェアに直接統合するというものです。この制度は学生と企業の双方にメリットがあり、学生は自分の仕事が産業界でどう役立つかを見ることができ、産業界は学生が最先端の装置やプロセスの知識を学んでもらえる利益があります。産業界はインターンとの交流を通じて、履歴書に書かれた内容ではなく実際の経験に基づいた適切な人材を採用することができます。

Moyne博士は、容易に学問分野を超えて全体像を把握できる学生に出会うと、スマート・マニュファクチャリングのキャリアに向いている思い嬉しくなります。産業界に理解のある大学教授は、学生をその強みや興味に合ったタイプの仕事、企業、産業分野と結び付けるという重要な役割を果たすことが可能です。

Smart Manufacturingまた、訓練プロバイダーと産業界の結びつきを強める方法として、アプレンティスシップ制度が全米で進められています。SEMIは15社以上の会員企業、労働力開発委員会、経済協議会、コミュニティカレッジ、大学、サポートサービスプロバイダー、州政府、連邦政府と協力して、SEMI Career & Apprenticeship Network (SCAN) を展開しています。学生と業界で成功するために必要な技能訓練を結び付けることにより、優秀で多様な人材の開発を支援することが狙いです。この訓練は、ベテランの作業者が、半導体西欧装置およびプロセスのソフトウェアの設計および構築を指導する形で提供される予定です。

 

製造業を取り戻す

米国では自国の半導体製造が国家の優先課題となっています。この原稿を書いている時点で議会が資金調達の法制化として検討しているCHIPS法案は、520億ドルの助成金と補助金によって、米国の半導体産業の復活を支援しようとしています。

CHIPS法案には人材育成が大きく盛り込まれており、理数系学生の奨学金に52億2000万ドル、理数系人材計画に84億3000万ドル、大学の技術センターとイノベーション研究所に95億7000万ドルが割り振られる予定です。こうした資金は、米国半導体産業が国際的な競争力を維持するために不可欠なものです。

SEMI Foundation


SEMIは、次世代の人材開発に焦点を当てた計画や新しいカリキュラム、そして米国で先進的製造を継続するために必要な人材の開発、雇用、維持に資金提供するすべての取り組みを強く支持しています。SEMIならびにSEMI Foundationは、従業員の幅広いレベルに対してプログラムを提供する総合的アプローチをとっています。

SEMI FoundationとSEMIのスマート・マニュファクチャリング活動は、複雑なプロセスを改善することで得られる大きな達成感を体験できるように、今後共同して最新のデータサイエンス/エンジニアリング技術の技能の正式かつ体験的なトレーニングを提案してまいります。

 

国の政策で製造業を復活できるか

大学レベルでは、米国政府が人材育成に必要な設備の近代化やシミュレーション・モデル開発のための補助金を提供する必要があります。政府がインターンシップやアプレンティスシップにマッチング・グラントを提供して産学双方を支援すれば、ROIを重視するファブにおいても実験によるイノベーション促進が可能になります。

半導体産業の人材不足は、半導体製造のあらゆる側面で産学官が献身的に協力しなければ解決できません。大学のカリキュラム改革、産業界がスポンサーとなった研究、政府の投資のどれもが、人材不足を解消するに時間を必要とします。米国の半導体製造業の衰退は、数十年かけて進行してきました。半導体産業の再編と活性化も数十年単を要することになるでしょう。

 

Heidi HoffmanはSEMIのコーポレートマーケティングのシニアディレクターです。