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なぜ大気汚染センサーは必要なのか

現在わたしたちは、室内外の空気がきれいで安全であることを確認するために、これまでにもまして大気汚染センサーを必要としています。米国では過去数十年間に連邦規則により大気汚染が改善されてきましたが、いぜんとして1億1000万人以上のアメリカ人が国家基準を上回る大気汚染のある地域で暮らしています。毎年10万人のアメリカ人が、大気汚染によって発生または悪化した病気のために早死にしているのです。

 

「車やトラックは前よりもずっときれいですし、発電所や工場もきれいになっています。しかし、前よりきれいな空気が、本当にきれいな空気だとはいえないのです」と、アメリカ肺協会のアドボカシー担当上級副社長のPaul Billings氏は述べています。

 

大気汚染により喘息などの呼吸器疾患が悪化する場合があることは昔から知られていますが、新しいデータでは、汚染された空気によってCOVID-19感染症の死亡率が高まることや、認知症や自閉症の一因ともなる脳の炎症を引き起こすことが示唆されています。

 

空気の品質の重要性と、既存のセンサーをどのように応用できるか、どんな新しいセンサーを開発すればよいかを理解するには、屋内と屋外の両方に目をむける必要があります(図1)。屋外空気の品質はガス状および粒子状の汚染物質に関連しており、これは空気質指数(AQI)として定義されています。AQIは、重要な屋外汚染物質の地域別のしきい値に基づいた基準となっています。重要汚染物質とは、4種のガス状汚染物質(二酸化硫黄、二酸化窒素、一酸化炭素、オゾン)と10ミクロン未満(PM10)や2.5ミクロン未満(PM2.5)といった粒径別の粒子状汚染物質です。現在は、AQIの計測には従来型の分析器が使用されています。こうした分析器は高価で保守費用もかかりますが、変動する環境バックグランドの存在下で汚染物質を正確に測定する唯一の方法となります。

 

Air figure 3.1

1:屋内外の汚染物質の例

 

屋内のAQIに対する関心も高まっています。ホルムアルデヒド、ベンゼン、一酸化炭素、二酸化炭素などが、住宅、オフィス、工業用建築物で濃度レベルが制限されている汚染物質です。これらおよびその他の汚染物質のガス状汚染物質の発生源には、建築材料や機器、作業場の洗浄剤、屋内にいる人などがあります。規制機関と建築物の使用者は、ガス状および粒子状汚染物質の分析器を使用して、様々な方法でAQIを推定しています。推定にあたっては、屋内空気の品質に影響する湿度や温度も考慮されます。

 

環境センサーの現在の状況

最新のガス・センサーに求められる条件のトップ3は次のものです:

  • 多様な環境条件下で、予定の使用期間にわたって正確な測定値を提供する信頼性
  • 電池の寿命を延ばす、あるいは不要にする低消費電力
  • ユビキタス展開を容易にする低コスト

 

エレクトロニクス、微細加工、パッケージングの進歩によって、消費電力の削減と小型パッケージという重要な発展がもたらされました。また新しい研究開発の結果、屋内外で空気の品質をモニタリングするためにガス・センサーを配置した成功事例も増えています。図2に、様々なカスタマの要件を満たしたガス・センサーの3つの開発例を紹介します。

 

  • シカゴ市のArray of Thingsプロジェクト(市街地環境モニタリング実験)において、SPEC Sensors社の電気化学センサーが、NO2およびO3計測用の米国環境保護庁(EPA)認証測定器と一緒に設置されました。図2Aに示したように、新しいコスト効率のよいセンサーは、EPA認証器の計測値によく追随しています。回路品質、サンプリング、筐体設計、初期校正/補正のすべてが進歩することでこの結果が得られました。本例で、センサーがこの特定の用途において有用であることは明らかですが、コストが50倍~100倍のEPA認証システムに匹敵する性能を低コストの既製品センサーにそのまま求めることはできません。

 

  • Bosch Sensortec社のマクロパッケージ・センサー・スイートには、総揮発性有機化合物(TVOC)、温度、湿度、圧力のセンサーが含まれています。TVOC計測はドイツ連邦環境庁のガイドラインが要求するものです。TVOC濃度を測るために、センサーのアルゴリズムは金属酸化物センサーが検知するTVOC関連の抵抗値をトラッキングし、周囲の温度と湿度に対してセンサーの抵抗値を補正し、図2Bに示すように0(清浄な空気)から500(重度の汚染された空気)の間でTVOCAQIを出力します。

 

  • 最近GEが開発した金属酸化物センシング材料の誘電体励起測定方式によって、長年熱望されていた全天候条件でのメタンガス漏洩放出モニタリング用センサーの校正安定性がもたらされました。この方式を採用したセンサーは、オクラホマ州、ノースダコタ州、アーカンソー州、ブリティッシュコロンビア州で行われたフィールド検証キャンペーンで使用され、初期校正値と比較して 400 日以上経過しても安定した性能を示しました(図 2C )。このような安定したセンサーの性能は、従来の金属酸化物センサー素子の抵抗値測定方式から誘電体励起測定方式に切り替えることで可能となったのです。

 

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図2:異なる検出原理に基づく最新のガス・センサーの応用例

 

  • NO2およびO3電気化学センサーの王凱性能とEPA認証測定器との比較
  • BME680金属酸化物ケミレジスタのTVOC曝露時の校正結果(青い階段状のプロファイル)とそのAQIとしての±15%の信頼区間バンド
  • 革新的な誘電体励起スキームを採用したメタンガス漏洩排出センサーを多様なフィールド検証キャンペーンで繰り返し使用した後の構成安定性

 

新たなアプリケーション実現への課題とソリューション

現在のデータ・オン・デマンド時代には、環境センサーが実現できる新たなアプリケーションが無数にあります。スマートフォンや腕時計に便利に組み込まれたガス・センサーを創造してみてください。通勤中に地下鉄の駅の空気が汚染されていると、センサーは警告を発します。こんな警告が出たらあなたはどうされますか? マスクを着用したり、通勤ルートを遠回りに変更したり、市に陳情したりしますか? 喘息の子供と一緒にダウンタウンのパレードに参加していて、デバイスが空気がきれいであることを知らせてくれたらどうでしょうか?センサーの精度が10%しかないことを知っていたら、パレードを抜け出しますか? 喘息の子供が病院に入院してしまうリスクをどのようにして回避しますか?

 

最新のセンサーの設計原理の源は、20世紀の漏洩による高濃度ガス検出を目的としたものであり、現在提案されているような用途を想定していませんでした。既存のセンサーは、設計上、単一の出力(抵抗、電圧、電流、光強度など)しか持たないため、複雑な化学的背景や温度や湿度の変化に起因するセンサーの不安定性を数学的に補正することができません。汚染レベルが高いときや、関心のある化合物濃度が他を圧倒しているときには、これらの単純なセンサーが最適な性能を発揮することがよくあります。実際には、周囲の空気中には、毒性が1,00010,000倍も異なる数十種類のガス状汚染物質が存在しています。多くの場合、既存のセンサーでは、現場の状況における信頼性と精度が不足していることが、ガス・センサーの普及の大きなボトルネックとなっています。

 

Air PMEPAによると、低価格センサーと基準測定器の間の測定値の相関関係は、1%から80%の大きな幅があります。また、EPAは、規制モニタリングの要件を満たす低価格センサーはないとしており、世界気象機関は、「低価格センサーでは、現在のところ、特に法的義務の履行では基準計器を直接的に代替することはできない」と強調しています。しかし、現在では、最新のセンサーが低消費電力化と小型化という重要な進歩を遂げ、さらに、複雑な環境下での信頼性の高い使用実績も増えています(図2)。それでも、新しいアプリケーションを実現するための重要な課題は、多くの場合、新たに想定されるアプリケーションに要求される精度と信頼性が、利用可能なセンサーでは不足していることにあります。

 

少なくとも一部のアプリケーションや一部のガスに対して、高価な専用機器に近い精度で低コストのセンサーを提供することができないでしょうか? 私たちSEMI-MSIG Device Working Groupは「できる」と考えます。この大胆な宣言を実現するために、私たちのSEMIコミュニティは、100年の歴史を持つガス・センサーに新しい技術的なソリューションを提供します。

 

次回の寄稿では、コントロールされていない環境条件による影響を低減し、環境センサーの安定性、検出限界、ダイナミックレンジを向上させるための規格や、新しい測定スキームを確立するためのSEMI-MSIG Device Working Groupの活動について詳しくご紹介します。また、MSIGに新たに参画いただくことで、この重要なワーキンググループにどのような影響を与えることができるかについてもご紹介します。

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MEMS & Sensors Industry Group (MSIG)は、MEMSおよびセンサー業界が共通の課題に取り組み、イノベーションを起こし、ビジネス成果を加速させることを目指すSEMI技術コミュニティです。