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2022-03-09

大量辞職時代到来とマイクロエレクトロニクス業界の高技能者確保

大量辞職時代(Great Resignation)が続き、オミクロン株の感染拡大に減速がみられるなかで、新型コロナウイルスの目印は、マスクや消毒液のボトルから、求人看板に取って代わりました。ファーストフード店から一流ハイテク企業まで、いたるところで求人募集をしており、なかには面接を受けるだけで現金を支払う企業や、10万ドルの入社ボーナスを出す企業まであります。新しいコンピュータの購入、医者の診療、昼食の配膳に長い時間がかかるようになり、あらゆる業界のカスタマーが我慢を強いられています。これが新しい新型コロナウイルスの現実です。どの業界も人手不足であり、人材の取り合いになっています。

大量辞職時代とは、2021年の春以降、米国で約3300万人が仕事を辞めたことを指します。世界がこれほどまでに不確実で危ういときに、これほど多くの人が重要な人生の転機を選んでいるのは、ある意味驚きです。さらに驚くべきなのは、誰が仕事を離れているのかということです。辞職するのは責任が軽く転地しやすい若手社員ばかりでなく、より良い労働条件を見つける絶好のチャンスと考える年長の社員も含まれているのです。米国公共ラジオネットワークNPRのGreg Rosalsky氏は、これは「大量辞職時代」ではなく、「大量再交渉時代」であると主張しています。「仕事を辞めたアメリカ人は、より良い仕事に就くことを目的としているように見える」と彼は書いています。「今のように条件が整っていれば、労働者はより良い給料、特典、柔軟性、待遇を追い求める。交渉は彼らにとって有利な状況だ。」

SEMI Foundation

 

実際に、ハーバード・ビジネス・レビューの調査によると、20歳~25歳の若手社員よりも、30歳~45歳の中堅社員の辞職率が高いことが判明しています。2020年と2021年に、年上のグループは退職率が平均20%増加したのに対し、年下のグループの同期間の辞職率は実は減少しているのです。年上のグループは退職に際して、組織の知識、人間関係、専門知識を持ち去るので、それまで勤めていた会社の生産性、モラル、収益性に大打撃を与える恐れがあります。

テクノロジー業界では、さらに問題が大きくなります。辞職率の増加が最も高かったのは、3.6%増のヘルスケア業界と4.5%増のテクノロジー業界の2つでした。ハーバード大学の研究では、こうした辞職率の上昇は、「パンデミックによって需要が極端に増加した分野で働く従業員で高く、おそらく仕事の負荷の増大や燃え尽き症候群につながった」と推測しています。

大量辞職時代のマイクロエレクトロニクス業界に対する影響については、信頼できる研究成果がありません。しかし、何年も前から深刻な人材不足を抱えてきた業界にとって、パンデミックとこの退職者の波が、すでに問題となっていた状況を悪化させたことは確実です。半導体デバイス業界は、求人、トレーニング、採用など、人材開発戦略に並々ならぬ力を注いでいますが、時に人材定着に関する仕事がうまくいっていない場合が見受けられます。半導体デバイス業界の人材問題の解決は、まず今いる優秀な人材の定着から着手するべきでしょう。

Workforceまた、自社の職場はこのような動きとは無縁だと思っている人は、Joblistが2021年に行った調査で、調査対象となった2万6000人の従業員の73%が「仕事を辞めようと積極的に考えている」と回答していることを思い出してください。社内を見渡し、どれだけの社員が積極的に転職を考えているのか、そして、もしそうなったらどんな影響があるのかを考えてみる価値はあるでしょう。

では、従業員の定着率を高めるために、企業は何をすればよいのでしょうか。この問題に取り組む方法については、人事の世界では多くの基準が存在します。定着率や離職率を計算することで問題を定量化する、あるいは給与、昇進、昇給などの根本原因を特定し、それに対処する定着率改善計画を作る等です。

マイクロエレクトロニクスのような専門性の高い分野では、他のハイテク業界と比較して潜在労働力の特定が困難であり、また多様性の問題も大きいため、多様な経歴の優秀な人材を惹きつけ、定着させる方策を根本的に検討する価値があります。定着率向上戦略では、多様性、公平性、受容性(DEI)へのリソース投入が以前にも増して重要になっています。

きわめて重要になる点のひとつに、従業員の幸福があります。高い給与、手厚い福利厚生、職場で歓迎され、評価され、安全と感じること、これらはすべてDEIの要素であり、従業員が仕事に満足し定着することに貢献するのです。しかし、従業員に歓迎され、評価され、安全であると感じさせているのは誰なのでしょう。それを理解することが重要です。多くの場合このような役割は、通常の業務範囲の外で女性が担っています。その仕事が評価され報酬が支払われていることはまれです。

Women in WorkplaceMcKinsey & CompanyLeanIn.orgが行った「2021 Women in the Workplace」調査によると、企業は従業員の幸福を優先し、DEIを重点分野に位置づけています。しかし、この取り組みが均等に広がっているわけではありません。「女性管理職は、同じ地位の男性と比べて、チームをサポートするための活動量が多くなっています...シニアレベルの女性は、シニアレベルの男性と比較して、低代表グループからの従業員採用など、正式な職務責任外のDEI業務に費やす時間が多い人が倍以上になる...リーダーシップの男性に比べて、女性は有色人種の女性が職場で直面する困難について勉強し、差別に対して声を上げ、有色人種の女性の力になる傾向が高い」ことが指摘されています。

このような活動は、労働時間という点でも精神面でも負担を増やします。企業はその活動を評価し、従業員の定着に貢献していることを理解しています。実際に、87%の企業が従業員の幸福を生み出すための活動は重要であると回答しています。しかし、従業員の幸福のための活動を評価していると回答した企業はわずか25%でした。女性のDEIの仕事は、正式な仕事の一部とは認められていないのです。

McKinsey & Companyの調査の回答者の一人は、「当社では、勤務時間外の夕方や週末、休暇を利用してDEIに取り組んでいます」と述べています。「その努力が正式に評価されることはありません。」

つまり、企業は従業員の幸福やDEIがいかに価値のある仕事しており、その仕事の大部分を女性が担っているが、それは認識されず、報酬も得られないまま進んでいるということです。これでは、女性が企業に定着する正しい道筋とは言えません。こうした女性が退職すれば、職場の幸福を支援する人が減り、性別を問わず辞職者が増えていくことになるでしょう。
 

Resign chart

 

定着率向上戦略を検討・再構築する際には、この点に着目することが重要です。自社でこの課題に取り組むには、次の実施を検討してください。

  • 従業員(特に管理職やリーダー層)の年間目標に、従業員の幸福やDEIの支援を含める。
  • 業績評価時に上記目標の進捗を確認し、奨励する。
  • 従業員のこれまでのジョブ・ディスクリプションにDEI戦略を加え、それ以外の責任を減らして、通常の業務時間内でDEIに専念する時間を作れるようにする。
  • 新しいジョブ・ディスクリプションにDEIの責任を記載する。
  • DEIにおいて優れた活動をした従業員を定期的に公に表彰し褒賞する制度をつくる。

これらを実践することが、従業員を定着するために重要な役割を担っている人々を支援する出発点となります。このシリーズ記事では、これからも従業員の定着に関わる職場文化の強化に焦点を当てたリソースや推奨事項を取り上げていきます。SEMIファウンデーション(semifoundation@semi.org)では、皆様からのご意見・ご感想をお待ちしています。

 

Michelle Willianms-Vadenは、SEMIファウンデーションの副マネージャーです。