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2021-11-09

tinyMLが常時オンスマートシステムの電池寿命を延ばす

小型で低消費電力の機械学習(ML)チップ(一般にtinyMLと呼ばれる)の普及により、環境を連続感知してデータを収集するバッテリー駆動型デバイスに、強力なデータ分析処理機能を組み込む道が開かれました。例えば、犬の鳴き声とガラスの割れる音を識別できるスマートホームセキュリティシステム、音声コマンドに正確に応答するスマートイヤホン、機械の故障が迫っていることを示す振動の変化を検知できるスマートセンサーといったアプリケーションです。

TinyMLチップの設計者は様々な新アーキテクチャ、新技術を開発してきましたが、その目的はただ1つ、パワフルで高効率なエッジプロセッシングを、バッテリーで維持できる低消費電力で提供することです。一般的に、アナログはある種の計算タスクではデジタルよりも電力効率が高いため、最近では消費電力を低減するひとつのアプローチとして、チップ内にアナログ回路を組み込むことも行われています。実装されています。「アナログコンピューティング」としばしば呼ばれるソリューションです。しかし、アナログ回路をどの程度使用するかは、TinyMLチップによって大きく異なり、その結果、チップの機能やチップを使用する常時オンのシステムアーキテクチャのどこにフィットするかも変わってしまいます。このため、市場では混乱が生じており、設計者は特定のアプリケーションに最適なアナログコンピューティングソリューションを選択することが困難になっています。

Aspinity logoアナログコンピューティングとは何なのでしょうか。またエンジニアはこれについて何を知っておけば、バッテリー駆動の常時接続機器の製品開発において、差別化のための適切な判断を下せるようになるのでしょうか。

 

デジタル領域での推論のためのアナログコンピューティング

tinyMLチップのセグメントのひとつに、アナログ回路を利用して、MAC(積和演算)のようなニューラルネットワーク機能を実現するものがあります。これも広義のアナログコンピューティングには入りますが、このチップのアナログコンピューティングはメモリ素子内でのみ行われているため、「アナログインメモリコンピューティング」と呼ぶ方がより実際的です。このようなTinyMLチップは、ほとんどがクロックに同期したデジタルプロセッサであるため、デジタルのセンサー入力に加えて、アナログ回路での演算実行のためにオンチップでデジタルからアナログにデータを変換し、さらにデジタルへ再変換する必要があります。これにより、システムの消費電力を段階的に低減するチップレベルのソリューションが実現されます。

しかし、このソリューションは従来のデジタイズファーストのアーキテクチャでもあり、デジタル領域で実際の解析を行う前に、関連性の有無にかかわらずすべてのデータを直ちにデジタル化するため、システムが大量の電力を浪費します。バッテリー寿命を大幅に向上したいのであれば、ひとつのチップの効率だけでなく、常時オンのシステム全体の効率を考慮した、より完成度の高いアナログコンピューティングに目を向けなければなりません。

 

アナログ領域での推論のためのアナログコンピューティング

現在では、ある種のチップ機能を実行するために少量のアナログ回路を統合するだけでなく、analogMLと呼ばれるアナログコンピューティングのより完全な実装も行われています。

analogMLコアは、高度な知能と推論をアナログ領域に導入した完全なアナログ処理チップです。analogMLコアを使用することで、設計者はアナライズファーストのシステムアーキテクチャに移行できるので、データがまだアナログであるうちに関連性の有無を判断し、データに関連性がなければ、下流の消費電力の大きいデジタルプロセッサをオフにすることができます。この機械学習のカスケードアプローチにより、無関係なデータの無駄なデジタル処理を排除し、システムレベルの電力効率を改善することで、数ヶ月のバッテリー寿命を数年に延ばすことができます。

 

analogMLコアの構成

analogMLコアの蓋をあけて見ると、ニューラルネットワークのためだけにアナログコンピューティングが使われている「アナログインメモリコンピューティング」と違い、それぞれ独立した電源を持ち、ソフトウェアで再構成可能で、アナライズファーストのアプリケーション用にプログラムされた複数のアナログプロセッシングブロックで構成されていることが分かります(図1)。

 

Aspinity Figure 1

 
図1:analogMLコアのソフトウェア-プログラマブルブロック

 

これらの低消費電力アナログブロックは、センサーインターフェース、アナログ特徴抽出、アナログニューラルネットワーク、アナログデータ圧縮などの幅広い機能を備えており、音声アクティビティ検出、ガラスが割れるなどの音響イベント検出、振動異常検知、バイオメトリックモニタリングなどのアプリケーションをサポートします。

 

アナログ音声アクティビティ検出

現在、一般的な音声認識システムでは、デジタイズファーストのアーキテクチャを採用しており、アナログシステムとデジタルシステムの両方を100%稼働し、2000〜5000μAの電流を常時流して、すべての音声データを解析し、キーワードを聞き出しています。これに対し、ボイスファーストデバイスのanalogMLコアでは、解析ファーストのアーキテクチャを実現します。このアーキテクチャでは、アナログマイクとanalogMLコアだけが常時オンになり、キーワードを含む音声の有無を確認します。デジタルプロセッサがオンになるのは、アナログ領域で検出されたキーワードの分析のためにanalogMLコアによって起動された場合に限られ、常時オンの消費電力は100µA未満に抑えられます(図2)。

analogMLコアは、消費電力の大きいデジタルシステムを80%〜90%の時間オフにすることで、バッテリー寿命を最大10倍延長します。スマートイヤホンの場合は数時間ではなく数日バッテリーが持ち、音声認識機能付きテレビリモコンの場合は1回の充電で数ヶ月ではなく数年使用できるようになります。

 

Aspinity Figure 2

 
図2:デジタイズファーストアーキテクチャの常時オンシステムは、デジタル領域での推論用にアナログ回路を統合しているため、2-5mAを消費する(上段図)。一方、アナライズファーストのシステムアーキテクチャでは、アナログ領域の推論用にアナログ回路を統合しているため、常時オン時の消費電力が100μA以下となり、バッテリー寿命が10倍以上になる(下段図)。

 

AnalogML:アナログコンピューティングのパラダイムシフト

AnalogMLは、MLチップのデジタルプロセッサに少しばかりのアナログコンピューティングを加え、全体の計算のごく一部に使用して電力を節約するというものではありません。これは、シグナルチェーンの最も初期の段階(データがまだアナログの状態)でデータの関連性を判断し、システムを流れるデータの量とデジタルシステム(ADコンバーター/MCU/DSP)のオン時間を最小限に抑えることができる、完全なアナログプロセッシングソリューションです。ガラスが割れる音の検知のように、10年に一度、あるいは一度も起こらないようなイベントに対しても、analogMLコアは99%以上の時間、デジタルシステムをオフにして、バッテリーの寿命を延ばします。これにより、関連性のあるなしにかかわらず、すべてのデータが処理前にデジタル化されていた場合には不可能だった、新たな段階の長期的リモートアプリケーションを実現します。

結論としては、アナログ回路を搭載したTinyMLチップは、「アナログコンピューティング」と呼ばれていますが、どれも同じではありません。いくら消費電力を抑えるためにアナログ処理を施したとしても、そのチップが完全にアナログ領域においてアナログデータで動作しなければ、システムで最も電力を節約できるとわかっていること、つまりデータのデジタル処理を減らすことができないということです。

さらに詳しくはビデオをご覧になるか、AnalogML Core Technology Briefをダウンロードしてください。

 

Marcia Weinstein氏について

Aspinity headshotMarcie Weinstein 博士は、MEMS および半導体製品・技術における 20 年以上の技術および戦略的マーケティングの専門知識をAspinityで発揮しています。それ以前は、Akusticaにおいて、技術および戦略的マーケティング、IP戦略の上級管理職を歴任し、後にBosch Groupの子会社となった同社のマーケティング戦略を管理しました。彼女のキャリアは、マサチューセッツ州ケンブリッジにあるCharles Stark Draper LaboratoryのMEMSグループ技術スタッフとして始まりました。リーハイ大学で固体物理学の博士号を、フランクリン・アンド・マーシャル・カレッジで学士号を取得しています。彼女とはLinkedInでつながることができます。

 

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