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米ISS 2012報告:収益性のロードマップを脅かす、コスト、複雑性、不確実性の増大

 

ISS 2012

今年1月、第35回目となったSEMI産業戦略会議(ISS)に集結した業界リーダーは、28nmを切るノードの複雑なプロセス技術、はっきりしないEUV導入スケジュール、三次元ICへの挑戦、そして450mmウェーハ移行計画に悪戦苦闘している半導体産業が、コスト、複雑性、不確実性の悪条件が重った最悪の状況にあると述べました。業界のエグゼクティブたちにとって、これまでの競争モデルや協調モデルが今後も通用するのか、これほど戦略的に不確実で、疑念を生じたことは、かつてありません。投資判断と前例のないほどの開発課題を複雑化しているのが、2011~2012年にかけての材料消費および設備投資の各社予測に一致がみられないこと、そして世界全体の市場を脅かす欧州債務危機です。肯定的な面としては、半導体産業の強さの基盤となる長期的な需要拡大が、クラウドコンピューティング、ライフサイエンス、スマートグリッド、そして新たなアプリケーションを生むクリーンテクノロジーによって、世界規模で加速していることがあげられました。

Intelの上級副社長兼ジェネラルマネージャであるウィリアム・ホルト氏、そしてIBMのフェロー兼副社長であるバーナード・S・マイヤーソン氏は、半導体の最先端技術の障壁を乗り越えてきた事例を語りました。現在の微細化は、先進のテクノロジーによって達成されており、それにはストレインドシリコン、High-Kメタルゲート、新しい材料の組み合わせ、トライゲートトランジスタ等がありますが、いずれもムーアの法則と歩調を合わせるために、複雑性とコストを上昇させる結果となりました。リソグラフィの分野では、光近接補正、位相シフトマスク、ダブルパターニング、液浸等の技術が、従来の微細化技術に加えて利用されるようになりました。配線分野における、銅、Low-K、鉛フリー、自己整合型ビア、ウルトラLow-Kへの複雑でコストのかかる移行もまた、最先端チップ技術をより困難なものとしています。ホルト氏は、微細化が進むにつれて「乗り越えるか、迂回するか、さもなければトンネルを掘る」必要のある技術障壁の数も増していると総括しました。マイヤーソン氏は、新たな微細化への挑戦に必要となるのは、これらを「軽減するイノベーション」であり、「小さなノブが壊れたときは、次に回す新しいノブ」を用意することだと述べました。

幸いなことに、ホルト氏とマイヤーソン氏はそろって、これから先の微細化チャレンジも、創意と深い技術的資源、そして強い意志によって、これまで同様に乗り越えられるとの明るい見通しを示しました。しかし、技術障壁は微細化が進むにつれて高さを増しており、参加者の中からは、これまでムーアの法則の指し示す微細化に成功してきたが、今後もそれが正しい指標となるのか疑問視する声もありました。疑いもなく、カーボンナノチューブ、グラフェン、フォトニクスなどの分野で、少なからぬ先行研究開発が10nmをきる微細化を視野に進められています。「技術革新のパイプラインはこの先10年間にむけて満杯です」とホルト氏は述べましたが、参加者は困難を「軽減するイノベーション」の必要性を知り、また18~24ヶ月ごとに、今まで考えてもいなかった新しいノブを回さなければならないことも知ったのです。

こうしたノブの中で業界最大のものは、当然ながらリソグラフィです。ISS参加者は、EUVロードマップの詳細を、ASML上級副社長、Brionジェネラルマネージャのジェームズ・クーンメン氏から聞くことができました。この10年間のリソグラフィの進歩はめざましく、EUVもその例外ではありません。ASMLは現在、研究、テスト、開発用に6台の試作装置を現場に提供していますが、これは、EUVの工業化には欠くことのできないステップです。光源の高出力化には2社のサプライヤが取り組んでいますが、EUVの生産性は、まだ「当社の望むところの5から10分の1」とのことです。ASMLは、安定した解像度とオーバーレイ精度のもとで「2年以内に毎時125ウェーハに到達」したいと述べました。

こうした微細化に関する不確実性を(また、同時進行する3D積層チップ開発も言うまでもなく)背景にして、ISSの2日目の中心議題となったのは450mmウェーハへの移行問題です。VLSI ResearchのCEO ダン・ハッチソン氏が司会をつとめたパネル討論には、Nvidiaの技術担当副社長 ジョン・チェン氏、Intelの技術戦略担当ディレクタで、ITRSチェアマンも務めるパオロ・ガルジーニ氏、Applied Materials Silicon Systems Group上級副社長兼ジェネラルマネージャのランディール・タクール氏、ニコン精機カンパニープレジデント 牛田一雄氏、SUMCO取締役 阿部隆司氏のキープレイヤー各氏が登壇しました。

Nvidiaのチェン氏が討論の口火を切って、最近では微細化とトランジスタのコストダウンが対応していないことを表すデータを示しました。この点はIBS社長のハンデル・ジョーンズ氏も同調しています。ムーアの法則からの利益は減少し、高度な製品へのプレミア価格もつけられないという状況の中で、チェン氏は450mmを切望しています。

デバイスの垂直構造、新しい材料の組み合わせ、課題の残るEUV、そして三次元ICは、技術チャレンジの大きさとしても、またサプライヤとデバイスメーカー両者の開発コストという点でも、前例がないものですが、450mmウェーハへの移行の複合作用については、その研究開発の効率化と業界協働の仕組みについて、様々な意見が発言されました。Applied Materialsのタクール氏は300mmへの移行時の好景気と技術環境を、現在の経済見通し、研究開発コスト構造と比較して論じました。タクール氏は、450mmの山のような開発を、3種類のノードの開発に加えて行う困難を説明し、同社のサプライヤ各社の状況に言及して「インフラ全体が整う必要があります」と述べました。ガルジーニ氏は業界の450mmへの対応について「それを私たちが望むなら、達成できる」と確信しています。ガルジーニ氏は、450mm装置開発が2012年~2014年にかけて行われ、生産への導入は2015年にはじまると確信してはいますが、「その転換点は、リソグラフィ装置が販売されたときになる」と述べました。

ISS 2012事実上すべての講演者とパネリストが、450mmの展開を一斉に進めることの重要性を強調しました。10年前の300mmウェーハへの移行で犯した過ちを繰り返さないためです。最先端チップのメーカー数は、300mm移行が開始直後に停滞したときよりも少数なのですが、EUVなどの技術障壁の不確実性、そして非常に競争の激しいコンソーシアムメンバー間の調整に対する懸念をかんがみると、導入次期の決定は難しくリスクをともなう判断となるでしょう。

ハッチソン氏は、450mmへの移行は、業界にとって幸いなことに、300mmへの移行のときほどにはコストがかからないと考えています。その見積によると、450mmの開発にはこれまで5億ドルが投じられており、うまく開発が進んだ場合、これから2020年までに発生する費用は76億ドルです。しかし、こんどは業界にとって残念なことですが、この金額だけでも、ウェーハプロセス装置メーカー各社の総開発費を圧倒することになります。他の観測筋が450mm開発に必要と考える資金量は、その2倍から3倍もの金額です。10年以上前の300mm開発費は120億ドルでした。

ISSのいくつかの講演で、開発資金を調達する業界連携の仕組みを新たにつくる必要が言及されました。Lam Research副会長のスティーブン・G・ニューベリー氏は、機能アップや性能アップによる値上げに成功してきた価値ある模範として自動車業界を提示し、また大手サプライヤ数社は、重要な開発に対し協同資金調達に乗り出していると述べました。Applied Mateiralsの会長兼CEO マイケル・R・スプリンター氏も、業界が直面する技術的かつ経済的課題の連鎖を解決するには「協力と協調と連結」が必要だと強調しました。Intelフェローのパオロ・ガルジーニ氏でさえ、「これは協調した活動になるでしょう。コミュニケーションのレベルを高めていく必要があります」と認めています。

協力や協調について語られてはいますが、本当に必要されるレベルと形態については、あきらかに意見が分かれています。業界が岐路にたち、経済の影響が収益性を圧迫し、整理統合を加速しているのは間違いありません。これまで同様に業界が進歩していくためには、新しい開発資金調達方法を生み出さなければならないでしょう。

(初出 SEMI Global Update 2012年2月号)