downloadGroupGroupnoun_press release_995423_000000 copyGroupnoun_Feed_96767_000000Group 19noun_pictures_1817522_000000Member company iconResource item iconStore item iconGroup 19Group 19noun_Photo_2085192_000000 Copynoun_presentation_2096081_000000Group 19Group Copy 7noun_webinar_692730_000000Path
メインコンテンツに移動
2021-02-09

材料科学へ投資するTDK Ventures: ミッションを持って基本に立ち返る

材料科学は、応用物理学、化学、そして、磁気、冶金、セラミックス、ポリマー、シリコンの多分野にわたる工学を包含する技術基盤として、過去 50 年間のハイテク分野の経済成長を牽引してきました。デバイスの小型化、高速化、スマート化が進む一方で、高性能化とエネルギー効率の向上も求められていますが、これらの基礎技術で実現できることは限界に達しつつあります。テクノロジー部門は、急速に変化する世界にあって私たちが直面する課題に対処するために、新素材への新たな研究と投資を必要としています。

TDK株式会社の投資部門であるTDK Venturesを率いる私は、21世紀に向けて材料科学の革新に挑戦する若い企業が続々と登場していることを嬉しく思います。過去1年半にわたり、材料科学の基本的な構成要素を再定義し、技術を前進させるための新しい方法を見出すことを目指す複数のスタートアップ企業に当社は投資を行ってきました。実際、この1年でこの内3社が株式公開に成功あるいは企業買収の対象となりました。

このことは、材料科学研究への関心が再燃していることを示すだけでなく、材料科学への投資が健全なリターンをもたらす傾向があることを示しています。材料科学の投資リターンがリターン(再来)したとのです。

 

原子レベルの材料科学

ハイテク投資家にとって、材料科学は過去10年から15年の間に魅力を失いました。なぜなら、ソフトウェア開発企業への投資が、場合によっては2~3年という比較的短い期間で非常に健全なリターンをもたらすようになったからです。材料科学分野の製品開発は伝統的に、ソフトウェアの新興企業よりもはるかに多くの資本を必要とし、リターンを生み出すまでにはかなりの時間がかかります。

TDK今日のハードウェアのイノベーターたちが明らかにしたのは、私たちはまだ、材料科学の可能性の上っ面をなでているにすぎないということです。20年前とは異なり、炭素原子の単層からなるグラフェンのような製品を開発することができます。グラフェンは鋼鉄よりも200倍強く、熱や電気の優れた導体です。このようなナノメートルスケールの材料により、多機能を集積した超小型、超低消費電力な高性能部品の設計が可能になり、数年前には考えられなかったチャンスをもたらします。このような進歩により、材料科学の未来は輝きを取り戻しているのです。

 

投資家は材料科学のスタートアップを歓迎

成功を収めた材料科学スタートアップ3社をご紹介します。

  • 2020年に株式を公開したGenCellは、商業、製造業、ヘルスケア事業向けのクリーンなバックアップ電源を提供する燃料電池ソリューションを開発しています。この燃料電池は、オフグリッド電力や農村部の電化にも、幅広い温度・湿度条件下で使用が可能です。GenCellのプロセスは、無水アンモニア(NH3)からオンデマンドで水素を生成する革新的なもので、他の方式の10倍の効率を実現し、また外部の電力を必要としません。GenCellの燃料電池は、水素と酸素を排出物ゼロの化学プロセスで反応させて、電力と熱を発生します。唯一の副生成物は水です。
  • Stratasysが2020年に買収したOriginが開発する3Dプリンター・プラットフォームは、材料の自由度が高く、大量生産に向けのアディティブ・マニュファクチャリングのアプローチを提供します。Originの3Dプリンターを使用することで、顧客は独自の材料も含め様々な材料で、独自のデザインの製品を印刷製造することができます。Originは、世界最大の材料科学企業と戦略的パートナーシップを結び、歯科、医科、製造業の大手企業向けに製品を印刷製造しています。
  • 2020年に京セラが買収したSLD Laserは、世界初の高輝度・完全一体型の白色レーザー発光器を生産しました。この発光器は、窒化ガリウム固体レーザーをを高性能蛍光体素子を介して投射することで、青色レーザーを広スペクトルの非干渉性白色光に変換し、目への危険性もありません。その結果、LEDの100倍の輝度、10倍の距離の投射が可能となり、特殊照明、ディスプレイ照明、自動車用照明など、さまざまな用途に採用されています。
     

材料で違いが生まれる

半導体、バイオテクノロジー、サーバー技術など、前世紀の基盤技術のイノベーションは、多くが材料科学のブレークスルーに基づくものでした。TDK Venturesでは、未来の進歩をもたらす唯一の道は、材料研究に立ち返り、科学技術の地平を広げるための新たな方法を見出すことだと考えています。一部の老舗企業にとっては、従来のやり方で物事を進めるのではなく、新しい考え方を取り入れていく必要があるかもしれません。これは、スタートアップのように考え、変化と新しい機会への挑戦を歓迎することを意味しています。

また、これらのイノベーションは、既存の分野の限界を押し広げるだけでなく、環境の保全と人々の生活の向上に貢献するものであるべきだと考えています。これがTDKベンチャーズの創業理念の一つです。当社の投資は、デジタルとエネルギーの変革に貢献し、より持続的な世界を導くものでなければなりません。当社の目標は、投資するすべてのスタートアップ企業が、世界にポジティブなインパクトを与えるために、その潜在能力を最大限に発揮できるよう支援することです。

例えば、GenCellの燃料電池は、従来の電力網から遠く離れた農村地域に無公害の電力を供給し、大気汚染の原因となるディーゼル発電機に頼らない生活水準を向上に寄与します。SLD Laserのレーザーライトは、従来のLEDランプよりも電力効率が高く、同等のHID(高密度放電)ランプよりも10,000時間以上長持ちします。Originの3Dプリンター・プラットフォームは、安全でローカライズされた製造を実現し、サプライチェーンにおけるエネルギーの無駄を最小限に抑えることを目指しています。

私たちはまだ、材料科学が可能にすることのほんの上っ面をなぜているに過ぎません。TDK Venturesでは、社会と環境にポジティブな変化をもたらす新しい変革的な技術の可能性を探求しながら、有意義な業績を上げることに専念しています。

 

TDK NicholasNicolas Sauvage氏は、TDK株式会社のベンチャーキャピタル(CVC)部門であるTDK Venturesの社長です。TDK Venturesはテクノロジーに特化したベンチャーファンドとして、基礎材料科学を活用してデジタルトランスフォーメーション(DX)、エネルギー&環境トランスフォーメーション(EX)のイノベーションを強化し、世界の魅力的で持続可能な未来を切り開くアーリーステージのスタートアップ企業に投資しています。

 

 

原文はこちら:https://www.semi.org/en/technology-trends/tdk-ventures-invests-in-materials-science-back-to-the-basics-but-with-a-mission