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2024-03-21

半導体製造へのデジタルツイン統合 - SEMIワークショップレポート

半導体の世界市場規模は2030年にも1兆ドルに達すると予想されており、半導体メーカー各社はこのような前例のない成長に対応するため、デジタルツインを含む変革技術の採用に迫られています。デジタルツインは、予測モデリングなどの効率を高めるイノベーションを活用して、半導体の設計から、製造プロセス、装置メンテナンスまでを最適化し、オペレーション全体の効率改善をもたらすことが期待されます。

デジタルツインが業界の成長に欠かせない実現技術として注目を集める中、カリフォルニア州ミルピタスのSEMI本部で開催された「Semiconductor Digital Twin Workshop」に、装置メーカー、デバイスメーカー、エンドユーザーを含む半導体エコシステム全域から主要プレーヤーが参加し、最新のデジタルツインの発展を討議し、技術進歩への道筋を探りました。

SEMIスマート・マニュファクチャリング・イニシアチブが主催したこのイベントのハイライトは以下の通りです。

 

ワークショップの要点

  • デジタルツインの定義と分類の業界内すり合わせ
    • 半導体業界は、製造事業におけるデジタルツインの定義と分類についてすり合わせをする必要がある。
    • デジタルツインの進歩には業界の協力が不可欠であり、そのためにも業界は団結してデジタルツインの共通理解を深めるべきである。
  • サステナビリティ向上にむけたデータ共有
    • 半導体エコシステムのさまざまな関係者でデータを共有することが、業界のサステナビリティを向上して行くためには不可欠である。
    • サステナビリティを念頭に置き、装置とその運用のデジタルツインにフォーカスすることが、業界関係者間の協力関係を促進する上で有効である。
  • デジタルツインのアーキテクチャとフレームワークの標準化の提唱
    • デジタルツインの標準化されたアーキテクチャとフレームワークを確立することが、相互運用性、信頼性、同期性、セキュリティの強化には不可欠である。
    • デジタルツインの技術標準の採用はまだ始まったところだが、技術の進化とともにその重要性は増大している。
    • SEMI 等の標準化団体が今後、開発を検討するであろうデジタルツイン技術標準の提供と採用を加速するためには、協力が不可欠である。

 

重要課題

  • ワークショップの様子デジタルツインの堅牢なフレームワークとたこつぼ型開発からの脱却
    • デジタルツインの堅牢なフレームワークの確立と、マイクロエレクトロニクス業界にみられる孤立したタコツボ式開発からの脱却は、業界が克服すべき課題である。
  • 未クリーニング工場データの管理
    • クリーニングされていない工場データの管理、ばらばらなデータ粒度、データモデルのライフサイクル全体への対応などが課題となる。
    • 装置とプロセスステップ間のデータ共有
    • 各種装置とプロセスステップのデータがシームレスに共有されなければならない。データがどこに由来するかが、デジタルツインの正確性と検証には重要である。
    • レガシー工場と中小企業
    • 使用する装置とプロセスが旧世代の工場は、現状の製品に対するプロセスレベルのデータツイン開発という、ユニークな課題を抱えている。

 

ワークショップのセッション構成

ワークショップは、装置メーカー、ソリューションプロバイダー、デバイスメーカー、ファクトリー・インテグレーションプロバイダーそれぞれによるデジタルツインへの取り組みに焦点を当てる4つのセッションで構成されました。

 

装置レベルのデジタルツイン・セッション

このセッションでは、装置レベルのデジタルツインを開発する装置メーカーの取り組みを取り上げ、それによる効率、性能、サステナビリティ改善の可能性が討議されました。また、装置レベルのデータ共有、標準化、インターオペラビリティの課題も議論されました。IRDS共同議長の真白すぴか氏(東京エレクトロン)、Ala Moradian氏(Applied Materials)、Joseph Ervin氏(Lam Research)、Sean Glazier氏(Onto Innovation)、Basil Milton氏およびChan-Pin Chong氏(Kulicke & Soffa)、Mark Huntington氏(McKinsey & Company)が登壇しました。

セッション登壇者:東京エレクトロン 真白すぴか氏(左)とAMAT Ala Moradien氏(右)

セッション登壇者:東京エレクトロン 真白すぴか氏(左)とAMAT Ala Moradien氏(右)
 

登壇者は、Run-to-Run(R2R)制御、仮想計測、予知保全(PdM)など、すでに製造業が導入済みのデジタルツインについて、また標準化された相互通信が可能なデジタルツインの必要性について議論しました。Applied MaterialsのAppliedTwin™プラットフォーム上のEcoTwin™など装置レベルのデジタルツイン・ソリューションは、チップレベルのプロセスの開発・改良のために、製造装置の仮想レプリカを提供します。このプラットフォームにおける重要な発展として、サステナビリティ分析へも拡張できることが実証されています。

その他の重要点として、別のレベル(装置から工場)にまたがるデジタルツインの接続性と、AIによる製造プロセスの自動調整があります。デジタルツインのインフラの重要性と課題として、クリーンで容易に利用できるデータの確保、データフロー、デジタルツインの同期を保つためのコミュニケーションなどが挙げられました。後工程でも、装置メーカーはワイヤーボンディング装置など各種装置の仮想化を着実に進めています。また、デジタルツインは様々な業界で大きな投資となっていますが、チップ製造における可能性は巨大であることが強調されました。強力なデータ共有基盤の構築が成功のカギとなります。

 

チャンバープロセス/オペレーション/プランニングレベルのデジタルツイン・セッション

このセッションでは、半導体エコシステムの全域から参加した、さまざまな階層レベルでデジタルツインのツールを開発するソリューションプロバイダーが登壇しました。プロバイダー各社は企業のデジタルツインの実装と管理を支援するために、物理ベースプロセスモデル、チャンバープロセス、オペレーション、プランニング・モデリング・アプローチなど、さまざま領域に向けた製品やサービスを提供します。このセッションでは、デジタルツインモデルの詳細な技術と、製造プロセス全体への潜在的影響について説明がされました。

イメージセッションの講演では、デジタルツインが半導体産業にどんな革命をもたらすかが明らかになる一方で、デジタルツインを日常のオペレーションに統合するためには、技術開発において克服すべき大きな課題があることも示されました。Sarbajit Ghosal氏(SC Solutions)、Norman Chang氏(Ansys)、Holland Smith氏(INFICON)、Chandra Reddy氏(IBM Research)、Jon Herlocker氏(TIGNIS)、Ken Smerz氏(ZELUS)、John Behnke氏(INFICON)が登壇しました。

登壇者は、リアルタイム制御およびモニタリングと、現実の装置と同様の変化に対する即応性を実現するには、高速でマルチフィジックスベースの(データによってアシストされた)正確なデジタルツインが必要であることを強調しました。これは、プロセスを変えるとどのような影響があるかが予測できるバーチャル・プロセス・ラインを持つことと同じことです。デジタルツインの上には、AIを搭載した(物理学および/またはデータ駆動型の)モデルが位置し、これにより製造プロセスの最適化や歩留まり予測が可能となります。

また、オペレーションレベルのデジタルツインの必要性、そして、効率と生産性を高め無駄を削減するための、工場の全オペレーションデータのセントラルハブの必要性が議論されました。これらはいずれも、今後ファブ数が増加するにつれて重要性が高まります。新規半導体ファブ建設や旧工場の拡張工事の事前計画で、建設デジタルツインが提供する仮想青写真は、潜在的な問題の早期発見や、生産開始までの期間短縮を支援します。最終的には、これらの様々なレベルのデジタルツインをいかに工場内で垂直統合できるかが、ファブの自律制御の意思決定において重要な役割を果たします。

 

デジタルツインの導入と実装セッション

このセッションは、歩留まり、品質、効率を予測し、生産性を向上するためにデジタルツインを必要とするデバイスメーカーとファブオーナーが登壇しました。プロセスレベルのデジタルツインによって、ファブにおける製品のプロセスフローを仮想的に表現することが可能となり、インテグレーション作業のスピードアップ、具体的な結果のシミュレーション、オペレーションの最適化に活用することができます。半導体工場がAIエージェントによって運営され、仮想モデルが問題を事前に予測し、その場でプロセスを最適化する未来を想像してみてください。これこそ、このセッションに登壇したエキスパートたちが共有するビジョンです。その洞察により半導体産業の次なる展開が魅力的に描き出されました。H.-S. Philip Wong教授(スタンフォード大学)、Steven J Meyer氏(Intel)、Jae Yong Park氏(Samsung)、Rosa Javadi氏(JABIL)、Amit Lal教授/Peter Doerschuk氏(コーネル大学)、Ben Davaji氏(ノースイースタン大学)、Pushkar Apte(SEMI)、Bobby Mitra氏(Deloitte)が登壇しました。

セッション登壇者:Intel Steven J Meyer(左)、Samsung Jae Yong Park(右)

セッション登壇者:Intel Steven J Meyer(左)、Samsung Jae Yong Park(右)

キーとなる開発目標は、プロセス、装置、ファブ全体の3つのレイヤーの仮想モデルからなる高度なAI支援製造であり、それぞれの仮想モデルがシームレスに連携することが重要となります。この野心的なビジョンは、データの生成、共有、効果的利用に重点を置く国立半導体技術センター(NSTC)のデジタルツイン・グランドチャレンジと一致するものです。現在、実際にファブで使用されているデジタルツインの例が、IntelのAFS Software Suite©で、高速シミュレータとグラフィカルモデルによって、複数のファブサイトのプランニングと意思決定を支援します。

イメージ自動マテリアルハンドリングシステム(AMHS)にAIを導入して、資産利用率を30%向上させたユースケースも、実際のファブにおいて実証されています。このセッションで強調されたのは、AIを備えたデジタルツインによるスケジューリングと、データ利用に関する業界標準化の重要性です。このほかにも、COVID-19検査システムの迅速な開発やグローバル・サプライチェーンのデジタルツインなど、印象的なユースケースが紹介されました。

業界全体でのデジタルツイン採用が、インフラ整備、人材不足、プライバシーへの懸念といった課題によりいかに遅延しているかが登壇者から説明されました。また、リソグラフィとエッチングプロセスのデジタルツインモデル開発およびテストに特化したオープンアクセスの大学クリーンルームの開発や、データのプライバシーと共有の懸念に対処するための連合学習(訳注:複数のエンティティが協力する機械学習の手法)による調査についても議論がされました。登壇者は、プロセス開発から生産に至るまで、様々なレベルにまたがるデジタルツイン間のシームレスなコミュニケーションとコラボレーションを実現するために、デジタルツインの階層構造をISA-95規格に基づくフレームワークに割り当てました。この相互接続アプローチは、企業内に広がるデジタルツインの例が示すように、チップ製造の革命を企業全体で起こす可能性があります。

 

デジタルツインの接続とプラットフォーム統合セッション

イメージこのセッションでは、クラウドサービス/設備/サプライチェーンのソリューションプロバイダーが提供する、企業のデジタルツイン実装および管理を支援するさまざまな製品やサービスが取り上げられました。これらのソリューションには、サプライチェーン全体にわたる統合、接続、セキュリティ、水平統合が含まれます。登壇者のほぼ全員が、今後の発展には標準化への取り組みが欠かせないと指摘しました。Rad Desiraju氏(Microsoft)、Gautham Unni氏(AWS)、David Gross氏とSrividya Jayaram氏(Siemens)、Slava Libman氏(FTD Solutions)、Becky Kelderman氏(Rockwell Automation)、Ram Walvekar氏(HCL Technologies)、Paul Trio(SEMIスタンダード部門)が登壇しました。

登壇者は、デジタルツインの定義や(種類や用途の)分類、開発をサポートする専用インフラの構築に言及しました。データソースや実証性、可視化などの分野におけるデジタルツイン開発の課題も取り上げられ、企業内の垂直方向と水平方向の両面でデジタルツインを構築、接続、維持するためのソリューションが紹介されました。

さらに、デジタルツインを設計と製造の橋渡しとして、シミュレーションと迅速な生産を可能にする事例や、さまざまな資産、プロセス、製品のデジタルツインを接続することで全体的なビューを作成する事例などのユースケースが共有されました。また、サプライチェーン全域のプレーヤーが進捗状況をモニターし、改善分野を特定できるようにするデジタルツイン成熟度スコアカードについても議論されました。また、サステナビリティを促進するためのファブ設備レベルでの水管理デジタルツインのユースケースも論じられました。

 

半導体業界のデジタルツインへの取り組み

Semiconductor Digital Twin Workshopは、デジタルツイン技術の導入と発展に対する半導体業界のコミットメントを示しました。半導体製造におけるデジタルツイン技術の可能性を最大限に引き出すためには、継続的な協力と標準化されたサステナブルな慣行を遵守することが重要になります。

SEMIは、ワークショップで発表された資料を提供してくれた講演者に感謝します。Semiconductor Digital Twin Workshop OnDemand | SEMIから入手いただけます。

また、このような教育機会の開催を可能にしていただいた、会員またスポンサーであるINFICONZelusPlato Systemsの支援に心より感謝いたします。

 

SEMIスマート・マニュファクチャリング・イニシアチブについて

スマート・マニュファクチャリング・イニシアチブ(Smart Manufacturing Initiative)は、電子機器メーカーによる環境にやさしい製造慣行と将来の労働力育成に焦点を当てた次世代の自律型スマート工場構築を支援します。詳しくは、ウェブサイトをご覧ください。また、ご参加については、smartmfg@semi.org までお問い合わせください。

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Mark da SilvaはSEMIスマート・マニュファクチャリング・イニシアチブのシニア・ディレクタです。Nishita Raoは同シニア・プロダクト・マーケティング・マネージャー、Karim SomaniはSEMIのプログラム・マネージャーです。