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2024-03-21

SEMI半導体気候関連コンソーシアムのワーキンググループ進捗状況とCDPの最新報告

半導体業界がネット・ゼロに向けて前進を続ける中、SEMI半導体気候関連コンソーシアム(SCC)の活動は、半導体のグローバルバリューチェーン全域にわたる温室効果ガス排出削減というミッションに向け業界を導く上で欠かせない存在となっています。

だからこそ、2月下旬に開催された2024年最初のSCC総会で、私は以下にあげた方々を運営評議会に迎えることができたことを光栄に思い、胸が高鳴っているのです。

  • JSR Missy Bindsell氏(Director of Sustainability and Communications)
  • Lam Research Shawn Covell氏(Managing Director, Global Environmental, Society and Governance Strategy)
  • Siemens AG Katharina Westrich氏(Global Head of Vertical Management Semiconductor Digital Industries)
  • 東京エレクトロン 荻野 裕史氏(サステナビリティ統括部部長)

SCCでは、国際的な環境非営利団体であるCDPのアカウント・マネージャー Alaina Passavant氏を招き、排出量開示のトレンドについてお話いただきました。以下は、Passavant氏の講演の要旨です。

温室効果ガス排出量開示のメリット

半導体サプライチェーン企業の調達部門にとって、温室効果ガスの排出量報告は、リスク管理、業務効率の改善、無駄やコストの削減の促進につながります。Passavant氏は、企業が環境目標を設定し、その目標に向けた進捗状況を確認する上で、この報告が重要な手段となることを指摘しました。

図1

 

排出量データの報告は、同業他社とのベンチマークにもなり、環境面でのリーダーシップを示すことが可能です。これは、企業パフォーマンスの指標としてESG(環境・社会・ガバナンス)を重視する投資家が増える中、上場企業にとっては重要なステップとなります。

CDPは、世界中の投資家、購買担当者、政策立案者にデータを提供し、気候変動への影響について情報に基づいたより正しい意思決定を支援しており、SCC会員企業の多くも、こうしたメリットを活用しています。Boston Consulting GroupとSCCのベースライン・アンビション設定・ロードマップ (BAR)ワーキンググループが昨年発表した業界のフットプリントに関する報告書の分析にも、CDPのデータが利用されています。

Passavant氏は、SCC総会に出席した100名以上のメンバーに対し、サステナブルな調達を可能にするためのデータ活用の以下のベストプラクティスを強調しました。また総会では、SCCの5つのワーキンググループすべてから、2024年の計画が報告されました:

  • 公開されている開示データをサプライヤ選定に役立てる
  • サステナビリティに取り組むサプライヤを公に評価する
  • サプライヤと開示報告を求める契約を交わす
  • サプライヤのリスク評価データを分析し、高リスクのサプライヤを特定する
  • サプライヤの報告プロファイルに基づくスコアカードを作成する
図2


 Passavant氏によると、CDPの顧客の330社以上の大企業が、CDPにサプライヤへの調査票送付を依頼し、その結果をCDPに戻しています。調査票を受け取った44,000社のサプライヤのうち、気候変動関連のデータを提供しているのは約半数に過ぎませんでした。水使用量や森林など自然データに関連する質問への回答率はさらに低くなります。

しかしながら、半導体のサプライチェーンはマトリックス状であり、1つの企業のサプライヤが少なくとも他の数社のサプライヤでもある可能性が高いため、調査票は効果的な報告には不可欠です。CDPによると、企業の事業活動からの直接排出量とサプライチェーン全体からの排出量の平均比率は1:11.4になります。これこそが、エコシステム全体を考慮にいれることが排出量を調べるうえで重要である理由です。

 

SEMI半導体気候関連コンソーシアム新メンバー

GORE KIOXIA Qualcomm

 

SCCの各ワーキンググループの2024年計画

ベースライン・アンビション設定・ロードマップ(BAR)ワーキンググループは、SCCの全体的なアンビション(野心的目標)を評価し、精緻化するために活動しています。また、カーボンハンドプリント(SCCメンバーが製造する製品によって回避される排出量)についても研究しています。さらにチームは、マサチューセッツ工科大学(MIT)やSCCメンバー企業と協力して、情報通信技術や産業のデジタル化が環境に与える影響についての理解を深めています。

同じく重要な活動として、このワーキンググループでは、チップ産業におけるカーボンプライシング(石炭、石油、ガスの使用量削減を企業に促すために、温室効果ガス排出量に適用されるコスト)の調査も行っています。現時点で、削減されたCO2排出量の価値について、業界のコンセンサスはありません。リスクとして、削減された炭素1トンあたりの価格によっては、排出削減プロジェクトの魅力を低下させる恐れがあります。

スコープ1排出量ワーキンググループは、プロセスと削減(abatement)の2つのサブグループで構成され、BAR ワーキンググループが提案するアンビション、プロセス排出量計測法の推奨、スタック排出量とプロセス排出量のギャップの算定方法などを深く掘り下げて検討しています。チームは2024年のプロジェクトに対し、積極的なスケジュールを立てています。

スコープ2排出量ワーキンググループは、3つの取り組みに焦点を当てています:

  • スコープ2排出量の測定、報告、モニタリングを改善し、報告標準の合意をとる。
  • 主要ステークホルダーと協力し、低炭素エネルギー(LCE)の入手と利用を促進する。
  • ベストプラクティスの共有、解決策、戦略の結果をSCCメンバーに発表する。これには専門家を講師として招聘することも含む。
     

スコープ3排出量ワーキングループは、1月にカテゴリー1排出量算定ガイドラインを発表しており、今後はガイドラインの有効性の理解を深め、改良を加えるための会合をメンバーと開催する予定です。その一方で、SCCメンバー企業全体の排出量のホットスポットを特定し、削減を推進するための優先順位付けを目指しています。また、外部コンサルタントを雇用する準備を進めており、メンバーと協力してカテゴリー11の排出量の定義と、業界全体でバリューチェーンの一次データ交換の仕組みづくりを促進するため現行メンバーのデータ交換慣習の検討にあたる予定です。

排出量報告プロトコル(ERP)ワーキンググループは、他のワーキンググループとの連携を図りながら、BARワーキンググループと協力してアンビション設定を完了しつつあります。このチームでは、外部コンサルタントを雇用して、サプライチェーンによる排出量報告の障壁を取り除くための戦略作りを進めており、これは悩みの種への対応のためのベストプラクティスと情報源のガイドづくりにつながる活動といえるでしょう。

SCC総会にライブで参加できないSCCメンバー、またConnect@SEMIプラットフォーム上で後日情報を確認したいSCCメンバーのために、SCC総会の様子は録画され、SCCのページ(SCCメンバーのみアクセス可能)にアップロードされています。SCCメンバー企業でこのページにアクセスできない方は、SCC@semi.orgにお問い合わせください。

 

著者について

John Golightly氏John Golightly氏はASMのサステナビリティ、気候、グローバルEH&S担当副社長です。2012年にASMに入社して以来、サステナビリティと安全性の向上に同社の中心となって尽力しています。2021年にSEMI Sustainability Advisory Council(SAC)にGolightly氏が半導体業界気候協定のコンセプトを提示したことが、彼が現在委員長を務めるSemiconductor Climate Consortium(SCC)の設立につながりました。協力の大切さを力説するGolightly氏は、将来の世代を保護するためにステークホルダーを結集し、目標を設定して、気候変動対策の進展を加速する共通基盤を見出すことこそが重要だと考えています。