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2021-09-01

3D半導体設計の新潮流、「マルチフィジックス解析」とは何か

AnsysのJohn Lee、Rich Goldman、Marc Swinnenの3人に会うと、設計上の課題が山積しているにもかかわらず、いつも半導体業界に対する楽観的な見方を聞かされます。彼らは、ハイテク、航空宇宙・防衛、自動車、IoT、5Gなどの分野では、信頼性の高い効率的な電子システムへのニーズが高く、その共通項は通信であると強調します。

特に最近では、システム企業による独自のカスタムチップ製造がもたらした市場ダイナミクスの変化について、3人は強気の姿勢を見せています。このようなシステム企業は、従来のセグメントに特化したチップではなく、異なる視点から設計を見直してチップを製造しています。これは複雑性が大きく増大したためです。

SEMI の技術コミュニティESD AllianceのメンバーであるAnsysは、従業員数 4,100 名の企業であり、製品設計、テスト、運用のための包括的なマルチフィジックスシミュレーションソフトウェアの製品・サービスを提供しています。Lee氏、Goldman氏、Swinnen氏から、Ansysの半導体・エレクトロニクス部門についてお聞きしました。

 

Smith:システム企業が自社独自のチップ製造に乗り出すことに気づいたのはいつ頃ですか。このトレンドを推進しているのは何でしょうか。

Ansys logoLee氏:転換点となったのは、大規模データセンターやシステム企業がシステム設計用エンタープライズプラットフォームの必要性を認識したときで、3年ほど前になります。こうした企業は、コスト効率を向上し、また外部サプライヤーへの依存を防ぐために、カスタムメイドのシリコンを設計しています。さらに、各社固有のプラットフォームに基づく差別化を図ることで、各社それぞれのニーズに合わせて演算能力を最適化したいと考えています。

 

Smith:効果的で信頼性の高い電子システムを実現するためにマルチフィジックスが求められているのはなぜでしょうか。

Lee氏:マルチフィジックス解析に対するニーズは急速に高まっています。例えば、3D ICの物理解析では、ICとシステムが交差する部分で3D化が発生することから、力学的要素と電気的要素を融合した機械工学が導入されています。その結果、パッケージ内のチップの安定性を解析するために、マルチフィジックスが必要になるのです。

Goldman氏:また、積層チップ、3D IC、WOW(wafer on wafer)への動きに伴い、従来の機能、性能、電力の解析に加えて、熱、電磁気、力学解析が必要になります。各解析は、順次ではなく、一緒に行う必要があります。これが、マルチプルフィジックスとは違う、マルチフィジックスとなるのです。

 

Smith:半導体設計には、マルチプルフィジックスとマルチフィジックスという2つのまったく異なる領域が必要とされます。その違いは何でしょうか。

Swinnen氏:マルチプルフィジックスは、ICから巨大システムに至るまでを解析するのに必要な様々な物理学の広さを意味します。一方、マルチフィジックスは、複数の物理的効果を同時に解析する機能を意味し、それが設計に与える影響と、異なる物理的効果の相互作用を説明します。マルチフィジックスは、システム環境の全コンテキストを解析するために不可欠であり、その範囲は、ナノメートルからキロメートルに及び、マルチチップパッケージング、チップtoパッケージtoシリコン、マルチドメインガイダンスを備えたシステムなどが含まれます。

Goldman氏:例えば、自動運転車には、AIシステムオンチップ、半導体センサー、インフォテインメントシステム、レーダー・ライダー探知機などが搭載されていますが、これらはすべて雨や暑さ、極寒の中で動作しなければなりません。

 

Smith:設計グループに物理学や電磁気学の専門家が加わるようになった理由はなんでしょうか。

Swinnen氏:膨大な数の技術的要求と、おそらくは誤認識によって、複雑さが爆発してしまったのです。

Goldman氏:半導体業界が誤って認識している「システムオンチップ」について考えてみましょう。チップそれ自体は決してシステムではありません。むしろ、大きなシステムの中の複雑なコンポーネントであり、そのコンテキストにおいて解析されなければなりません。3D ICではこれが一つになり、従来のSoC設計の範囲外である物理学的認識が求められることになります。3D ICの複数のチップは基板上で極めて接近した位置にあり、それらが確実かつ効率的に動作するためには、半導体設計、パッケージング、システム設計、3D IC設計のワークフローにマルチフィジックスを組み込む必要があります。

 

Smith:解決策は何ですか?

Goldman氏:システム、物理学、シリコンの専門知識を持った異種グループを一つにして動かすためには、特殊なデジタルスレッドが必要であることは明らかです。現時点では、これらのグループや分野が同じ会社に揃っていないかもしれません。ファウンドリ、ファブレス、OSATのどれであってもです。

Lee氏: システム設計環境全体を統一するためには、クラウドベースでオープンかつ拡張可能な異種混在型のエンタープライズ計算プラットフォームが必要です。これは、SaaSベースのビジネス・モデルに似ており、Simulation-as-a-Service(SaaS)として知られています。

大手システムデザインハウスでは、設計グループの垂直統合がすでに進んでいますが、電子設計ツールにも進歩が見られます。これらツールは、熱、流体力学(CFD)、機械的応力および信頼性解析を含む、包括的なマルチフィジックス機能を単一の解析コックピットから提供することを始めています。

今日のシステム設計者は、2つのプラットフォームの課題に直面しています。1つ目は、複数のソースからの解析結果を受け入れ、それらを重ね合わせて相互に分析できるようなオープンな環境の必要性です。2つ目は、最新の3nmチップや3D ICシステムで生成される膨大な量のデータを処理する能力がある設計プラットフォームの必要性であり、これには、伸縮性のあるクラウドコンピューティングとの密接な連携が求められます。技術者がPerlスクリプトを書いて誰かに渡すという時代は終わりました。業界はこの課題に、クラウドネイティブで、異種混合の企業設計を可能にするオープンかつ拡張性のある新世代の設計プラットフォームをもって応えていると考えます。

今日、私たちは電子設計の変曲点にいることは間違いありませんが、電子業界は以前にもこのような状況に直面したことがあり、これらの課題も克服できると確信しています。

 

Rich Goldman氏について

Rich GoldmanRich Goldman氏は、Ansysのエレクトロニクス・半導体ビジネスユニットのマーケティングディレクターです。Goldman氏は、シラキュース大学で理学士号を取得し、エンジニアリングマネジメントのMBAと理学修士号を取得しています。また、アルメニアのハイテク教育と経済エコシステムの発展に貢献したとして、ロシア・アルメニア(スラブノイチ)大学とアルメニア国立工科大学から名誉博士号を授与されています。EDACの理事も務めていました。

 

John Lee氏について

John LeeJohn Lee氏は、Ansysのエレクトロニクス・半導体ビジネスユニットのジェネラルマネージャー兼バイスプレジデントです。Lee氏は、集積回路設計のための初の専用ビッグデータプラットフォームを開発したGear Design Solutions(現アンシス)の共同設立者であり、CEOを務めました。他にも2つのスタートアップ企業(Mojave Design社、Performance Signal Integrity社)を共同設立し、これらの企業は現在シノプシスの傘下に入っています。 カーネギーメロン大学で学士号と修士号を取得しています。

 

Mark Swinnen氏について

Mark SwinnenMarc Swinnenは、Ansysのエレクトロニクス・半導体部門の製品マーケティング担当ディレクターです。ベルギーのKUルーベンで電子工学と産業経営の修士号を取得し、サンノゼ州立大学でMBAを取得しています。

 

 

Bob Smithについて

Robert (Bob) Smithは、SEMIの技術コミュニティであるESD Allianceのエグゼクティブ・ディレクターです。半導体設計のエコシステム全体に製品やサービスを提供する企業の国際的な組織であるESD Allianceの管理・運営を担当しています。