downloadGroupGroupnoun_press release_995423_000000 copyGroupnoun_Feed_96767_000000Group 19noun_pictures_1817522_000000Member company iconResource item iconStore item iconGroup 19Group 19noun_Photo_2085192_000000 Copynoun_presentation_2096081_000000Group 19Group Copy 7noun_webinar_692730_000000Path
メインコンテンツに移動
2022-02-03

EDAトップアナリストが語ったチップ設計の最新トレンドとは

電子システム設計分野を担当するトップアナリストであるLaurie Balch氏は、技術動向の把握と分析、新たな市場機会の予測に精通しています。また、企業の戦略やM&A、さらには市場の状況や発展についての素晴らしい情報源でもあります。だからこそ、今回のディスカッションの機会を楽しみにしていました。

業界の古参の方々なら、Balch氏をDataquest在籍時代から、あるいは故Gary Smith 氏が設立したマーケットインテリジェンスとアドバイザリーサービスを提供するGary Smith EDAに参画したころから覚えていらっしゃるでしょう。彼女は現在、設計・エンジニアリング業界向けの市場調査会社であるPedestal Researchの社長兼調査部長を務めています。ESD Allianceのメンバーである同社は、2018年にGary Smith EDAの事業を引き継いで設立されました。

 

Smith:EDAや半導体IPの市場において、大きなニュートレンドはありますか?

Balch氏:システムレベル設計へのシフトが必要であると広く認識がされるようになったのは素晴らしいことです。主要なEDAベンダーの間で、戦略的方向性は異なるにしても、このような考え方が定着しつつあると見ています。Cadence、Siemens、Synopsys、Ansysは、いずれもEDA企業であることから重心をずらすことはありませんが、将来の方向性についてはそれぞれ異なる見通しを示しています。全社が同意しているのは、EDAは関連する他の設計領域へ進出する必要があるという点であり、私も同感です。

しかし、各社の将来の成長に向けた方向性の選択は、半導体IP、機械・システム設計、ソフトウェア開発ツールなどさまざまです。純粋なエレクトロニクス設計以外への拡大は、エンジニアリングチームが従来の専門分野にとどまったアプローチではなく、システムレベルの包括的視点を持つことが重要になることを物語っています。

 

Laurie Balch headshotSmith:オープンソースEDA、そして米国政府のDARPAをはじめとするこの分野で活躍する企業が話題となっています。この動き、そして今後の市場への潜在的影響について、どのようにお考えですか?

Balch氏:オープンソースEDAは、特定のタイプのユースケースやユーザーグループに対してソリューションを提供できる可能性があるという点では、テクノロジー業界の他のオープンソースの取り組みと変わりません。小規模な組織による設計予備調査では、オープンソースツールの登場が設計能力を拡大する大きなチャンスを生み出しました。また、設計上の問題に対する独自のアプローチを試そうとする一流研究者やEDAイノベーターたちの広範なコラボレーションや創造的探求の枠組みとしても機能します。

しかし、EDA市場の大部分で、オープンソースツールは脅威とはなりません。ほとんどの設計チームが、市販のEDAツールが提供する厳密なテストと手厚い技術サポートに依存しているのが実情です。オープンソースツールへ移行するユーザーは、設計の最終的な製品化成功までに追加される新たな不確実性を受け入れ、EDAベンダーからのバグサポートや技術的不具合への対応をあきらめる必要があります。

多くのユーザーは、開発に費用と時間がかかる複雑な設計のためにツールを選択する際、設計の製品化を実現する高いレベルの保証を求めます。オープンソースEDAは、ツールの革新をもたらす興味深い新しい道を提示し、EDA業界はそれを常に大いに歓迎し、熱心に奨励しているものの、商用EDA市場を直ちに危険にさらすことはないでしょう。

 

Smith:クラウドベースの設計は、いずれ主流になるのでしょうか。その場合、既存のビジネスモデルにはどのような影響が考えられますか。ペイパーユーズの価格設定により、設計ツールをより安価に提供することで、さらなるイノベーションが促進される可能性はありませんか?

Balch氏:クラウドベースの設計については、何十年も前から繰り返し話題に上っていますが、まだ捉えどころのないファンタジーといったところです。しかし、根本的な変化が進行している今こそ、クラウドベースデザインに弾みがつく時期だと思います。世界的なパンデミックによって私たちの仕事環境のパラダイムが塗り替えられることを望んだ人はいなかったでしょうが、それが現実となりました。エンジニアリングチームを含む多くの従業員が自宅など遠隔地で仕事をすることが普通になったことを無視できません。

セントラルオフィスに設置されたハードウェアとソフトウェアで仕事をするという考えは、もはや当たり前のことではなくなりました。幅広いエンジニアリング機能を網羅する多様性を持った設計チームが相互接続したツールにアクセスする方が、より一般的になりつつあります。設計チームは、固定的なツールライセンスの代わりに、設計フェーズごとに異なるツール間を移動できるアダプティブソフトウェアライセンスを購入することに興味を寄せています。

おそらく最も重要なことは、こうした設計環境のプラットフォームとなるサードパーティのクラウドインフラが十分に整備されたことです。クラウドプロバイダーは、長い間大きな障害となっていた設計データのセキュリティと機密性に関する懸念に対処しています。

設計作業をクラウドに移行することで、EDAベンダーにはより柔軟なライセンスが要求されますが、これまで新しいツールを試すのにコストがかかったり技術的に困難だったりしたと感じていた顧客により多くの機会を与えることができるのは間違いないでしょう。設計チームが問題に直面するまで使うのをためらいがちな多くのポイントツール(解析ソフトウェアなど)にとって、特に大きなインパクトとなる可能性があります。クラウドベースのツールへのアクセスによって、IT統合や価格面での障壁を取り除くことになれば、これまで利用してこなかった様々なEDAツールを採用する新しいユーザーが現れるかもしれません。

 

Smith:今、半導体の設計と製造のサプライチェーンを地理的に分散させる必要性が盛んに議論されています。EDAは歴史的に北米に拠点を置く企業が中心となってきました。この状況は変わると思いますか? (明らかに、中国がこれに対する1つの答えですが、EUのような他の地域でも、国内サプライチェーンに資金を提供する噂が多々あり、私はこれがEDAとIPを含むと推測しています)。

Balch氏:世界は国際化しています。EDAベンダーは長い間、米国に本社を置く企業が主流でしたが、アジア太平洋地域では何年にもわたってユーザー数とEDA支出額が急増しています。また、ヨーロッパにも過去から非常に大きなユーザーコミュニティがあります。中南米や中東でも、EDAユーザー数は大幅に増加しています。これは、エレクトロニクスメーカーが各地域に進出し、世界的にエンジニアの教育訓練が強化されたことが一因だと考えられます。

エレクトロニクスのエコシステムは、もはやシリコンバレーだけが中心というわけではありません。世界中のエンジニアが米国の外でキャリアアップする機会を求めることは必然であり、その中には新しいEDA技術の立ち上げも含まれます。多くの国や地域もまた、単なる製造業にとどまらない自国のエレクトロニクス産業構築による大きな経済的可能性を認識しています。中国がこの戦略を積極的に推進していることはよく知られていますが、中国だけに限られたことではありません。

一方、ソフトウェア製品、特に EDA は、一般的に有形製品のようなサプライチェーンの圧力にさらされることはありません。購入したEDAツールがどこかの港の貨物コンテナに眠っていて入手できないという理由で、EDAサプライヤーを変えようとする人はいないでしょう。EDAツールの価格は、輸送コストの一時的高騰によって値上げされることはありません。ユーザーは、EDAツールが技術的なニーズを満たしていない場合にはじめて、EDAサプライヤーの変更を検討します。

そのツールの性能はクラス最高レベルか?そのツールは使いやすく、完全なEDAフローにうまく統合されているか?これらは、EDAツールがどこで作られたかとは関係のない質問です。今日の主要なEDAベンダーは、自社のツールに最高の技術を搭載し、世界の学術研究機関と密接に協力してエレクトロニクス設計の進歩を製品化することによって、競争力を維持することができますし、これからもそうであると確信しています。

Cybersecurity全体的に見て、米国外のEDAベンダーの台頭は、業界にとってプラスになると思います。より多くの投資資金が、幅広い設計上の問題に対応できる新しいEDAベンダーの誕生につながるのです。EDAベンダーの地理的な多様性は、既存のEDA企業にとって脅威である以上に、各社にとってEDA市場を拡大する可能性を秘めていると思います。世界中でEDAのスタートアップが盛んになることは、何よりもユーザーの利益につながります。

しかし、国際的なEDAとIPサプライヤーの主たる懸念はセキュリティの分野であり、特にセキュリティの点で疑わしい慣行で知られている国で開発されたIPにあることは認識する必要があります。検出不可能なセキュリティの脆弱性を恐れて、設計チームはセキュリティの保証を得ることができない地域で開発されたIPに頼ることをためらいます。このような不安は、多くの地域に拠点を置くIPベンダーや、それほどではありませんがEDAベンダーにとって、ビジネスを制限する要因になる可能性があります。

 

Smith:ムーアの法則の延長について、どのようにお考えですか。ムーアの法則を(方法は違えど)前進させ続ける理由は何だとお考えですか?

Balch氏:私は常に、科学者の創造性と手腕を固く信じています。新型コロナウイルス感染の新しい治療法の開発であれ、半導体技術の革新であれ、私たちは障害を克服する能力をもっていると確信しています。「ムーアの法則」と呼ぶことはやめた方がいいかもしれませんが、エレクトロニクスの利用を増やし続けるために、新しい方法を考案するのは必然だと思います。設計チームは、設計内容を最適化するために、高度な材料、パッケージング、プロセス技術を組み合わせて取り入れる必要があります。

EDAツールは、エンジニアが様々な技術のトレードオフ評価を早期に行う重要な機会を提供します。3次元積層IC、MCM、チップレット、窒化ガリウム、先進のインターコネクト・インターフェイススキームなど、設計と製造の両面で業界の限界に挑戦し続けているのは素晴らしいことです。エレクトロニクス設計者の決意と粘り強さは、今日の技術的限界の境界を飛び越える方法を発明し続けるに違いないと確信しています。

 

Laurie Balch氏について

Laurie Balch氏は、Pedestal Researchのリサーチディレクターです。設計・エンジニアリング業界を対象とした幅広い技術をカバーする一流のアナリストとして、20年以上の経験があります。Gary Smith EDAのチーフアナリスト、Gartnerのリサーチディレクターを経て、EDA、半導体IP、組み込みソフトウェア、半導体自動テスト装置(ATE)、テスト用設計(DFT)、機械CAx(CAD/CAM/CAE)アプリケーション、製品ライフサイクル管理(PLM)の市場トレンドを調査しています。Balch氏は、システムレベル設計とESL、DFTとテスト手法、IPとエンタープライズツール、回路解析ツール、予測と統計に重点を置いて研究を行っています。

 

Robert(Bob)Smithは、SEMI技術コミュニティのESD Allianceの事務局長です。